金木犀を切ること2018年03月01日

東京の日の出は6時11分。
この一カ月間で日の出は30分早くなり、日没は28分遅くなった。
長くなった昼時間を有効に使いたい。
そろそろ地上にも本物の春がやって来そうだし。

犬の散歩も出勤も嵐の中。
しかし午前中には回復し、気温も上がる。
その春の気配が、そろそろジャガイモの植え付けが近いことを感じさせる。
頭の中ではいつも畑のことを考えている。
と言っても実際は、目の前に山積する仕事で手いっぱいなんだけど。

先日、埼玉に借りている畑の地主さんと立ち話。
その時に見せてもらった畑には、少し出来の悪い野菜が残っていた。
今、お店では野菜価格の高騰が続いている。
去年後半からの天候不順の影響がとても大きいからだ。
僕の素人菜園など、秋冬野菜は散々。
近年まれに見るほど出来は良くなかった。

こんな時だもの。
形が悪くたって傷付いていたって、そんな規格外の野菜をどんどん売ればいいのに。
寒さの影響を受けた白菜やキャベツだって、外葉をむしっていけば可食部はたくさんある。
葉の縮れた大根だって、成長の悪いブロッコリだって美味しく食べられる。
工業製品じゃないんだから、条件の悪い年には出来の悪い野菜がたくさん出回る。
そんなこと、普通だと思うんだけどな。
 

所要にて早めに帰宅。
明日、自宅に入る植木職人さんと打ち合わせ。
二階建ての家より高い金木犀の巨木を、半分程度にまで切り詰める。
強剪定により、そのまま枯死してしまう危険はある。
でも樹齢100年のその木には朽ちたウロ穴が沢山でき、もはや風雨に耐えられない。
新しい枝で若返りを図らないと、いずれ倒木してしまう恐れがあるんだ。

大きくなり過ぎた体を持て余すより、根の負担もきっと軽くなるだろう。
今までよりずっと小さな樹として仕立て直す。
そしてまた、あの橙色の花を咲かせてくれる事を願う。
地面にオレンジの絨毯を敷いたように秋を飾る散り花も楽しみだ。
どうか再生してくれ。



深夜のラジオのこと2018年03月03日



二階の部屋のカーテンを開けたら明るくて驚いた。
この電線の上まで伸びていた巨木を半分の高さに切ったからだ。
昨日は帰りが遅くて解らなかったけれど、昼の間に職人さんが良い仕事をしてくれた。

出た剪定枝は2トントラック一杯分。
小さくなった樹は、やがて若返り再生するだろう。
大切にしていた樹を切り詰める事は寂しかったけれど、必要な事だった。
広くなった空がとても青い、土曜の朝。

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昨夜、ラジオを点けたまま眠ってしまった。
夢現の境で懐かしい歌が何曲も流れた。
どうやらグループサウンズの特集のようだ。
タイガースとかスパイダースとか、僕が生まれた頃に流行ったような歌だ。
隣のMの寝息と懐かしい曲を、眼は開けずにベッドの中でずっと聴いていた。
朝になって調べたら、「ラジオ深夜便」の午前3時台のプログラムだったようだ。

母はラジオが好きだった。
若い頃の母は、いつも台所のテーブルでラジオを聴いていたっけ。
黒い革カバーの付いたSONYのTFM-110という3バンドのトランジスタラジオ。
母はそれをとても大切にしていて、どうやら父からのプレゼントだったらしい。

それから何十年もたって、病床に伏した母はまだラジオを聴いていた。
枕元ではずっと小さな音で音楽が鳴っていた。
在宅で介護をしていた頃、実家での夜の日課を終え帰宅する僕がお休み、と言うと
ラジオは消さないで、と言ったっけ。
眠れない夜が嫌だったのか。
幾つになってもラジオが好きだったのか。

あの日もラジオが点いていた。
あの日、僕が出勤した後の一人で過ごした昼、母は何を聴いていたんだろう。
夕方急いで帰って、たった20分で逝ってしまった。
母はラジオを聴きながら僕の帰りを待っていたんだろうか。

夜、ベッドの中でラジオを聴くと母を思い出す。
だから深夜のラジオが好きだ。








菜花咲く2018年03月07日


いつの間にか啓蟄も過ぎた。
夜明けの時刻は間もなく5時台。
日没のそれも月末に18時台となり、昼時間は中旬に12時間を超える。
加速をつけて昼が長くなってゆく。

いつもより厳しく感じた冬を耐え、ようやく菜花が咲き始めた。
海辺の菜の花畑に囲まれて育った母が好きだった花だ。
あれ以来、毎年庭の畑に種をまいている。
今年もこれを花瓶に飾り供えよう。

仕事は特記事項なし。
ちょっとした忙しさのピークを越え、ほっと息をつく。
もう今日はこれで良いや、と早めに帰宅。
夕飯はMの好きなカレー。
圧力鍋で鶏胸肉をホロホロに煮て、「CoCo壱のチキン煮込みカレー」を真似てみる。
美味し。

明日はMのお母さんの手伝い。
午前は内科の受診。
午後はお父さんが入院していた病棟への挨拶。
それの付き添いをかって出た。
色々な事が巡り巡って、ようやく始まったMのお母さんとの疑似親子付き合い。
ここまでにずいぶんと時間が必要だった。
本当に、長く掛かってしまった。



ひとり鍋2018年03月09日



Mの居ない夜。
月に10回くらいかな。
夜勤や勤務の予定、僕の都合なんかで独りになる夜。
それもまた嫌いじゃない。

いつもは料理もちゃんと作るし、シッカリしている。
でも、独りの時はそんなじゃない。
風呂に入らなかったり、パンツ一枚でウロウロしたり。
コタツでうたた寝とか、扉開けっ放しでトイレとか。

料理だってきちんと作ったりしない。
今夜は冷凍庫に有った塩鮭とガンモを焼いた。
あとはセリと豆腐の鍋だけ。
さっさと作って、お酒を燗して、どっかり座ったらもう動かない。
部屋の照明だって点けず、机上の灯りだけで酒を呑むのが好きだ。
外は冷たい雨。

雑巾ロボットが暖房を入れること2018年03月10日

はじめて自宅にロボット掃除機を導入したのは何年も前。
実家の母の介護が大変で、自分の家の掃除などとても手が回らなかったからだ。
そして買ったルンバは僕にとって想像以上に良いものだった。
出鱈目に動いているように見える。
掃除が終わってもゴミが残っている。
うるさい。
でも、一度の掃除で綺麗にならなくても、ルンバなら週に何度も稼働させられる。
音だって、留守の時に動かせばいい。
結果として、家はいつも綺麗になった。


それに気を良くし二年前に買い足したのが、雑巾ロボットのブラーバ。
ルンバがゴミを吸い込み、ブラーバが雑巾で仕上げる。
手の届かないベッドやソファの下だって、この組み合わせでピカピカだ。
夜中に鼻炎で目が覚める頻度も減ったし、なにより自分で掃除機を掛ける面倒がない。

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そのブラーバ。
掃除の後、洗面所が暖かくなっていることが何度かあった。
はじめは気のせいだと思っていたんだ。
それが先日、その瞬間に遭遇した。
ブラーバが廊下から洗面所に入る。
そしていつもの前後運動で床を拭いている。
すると洗面所の暖房が起動し、温風を吐き出したのだ。

ブラーバは、本体と別体から構成される。
小さな立方体の別体から天井面へ赤外線が照射され、
ブラーバはその反射を観測し、自分の居場所を測位しているんだ。
その赤外線のやり取りが、洗面所の暖房機器を動かしている。
暖房のスイッチも赤外線リモコンを使っているからだ。

暖房にはタイマーがセットしてあり短時間で停止する。
だから今まで気づかなかったんだな。
改めて読んだブラーバの説明書にも、他機器の誤作動について記載されていた。
これは僕が迂闊だったのだ。
洗面所の暖房、リモコンのコードが変えられるかな。
出来ないなら、受光部に細工するなどして誤作動を防止しなくっちゃ。
それにしても驚いた。
だって、雑巾ロボットと洗面所の室温を関係付けるなんて無理な話だ。

芋を植える2018年03月12日


今年もまた、ジャガイモの植え付けから野菜つくりを始める。

10年間通った畑が使えなくなった年末。
いくつもの偶然から新しい畑を借りる事が出来た年始。
こうして作業を始めると、ああ本当にまた畑で野菜を作れるのだと実感する。
一時は諦めた畑探し。
自宅の庭で細々と続けようと思った野菜つくり。
それを想うと、喜びもひとしお。
沈丁花の香りの中、芋を植え付ける幸せ。




野菜の花芽を食う2018年03月14日



趣味で野菜つくりをしていて良いことの一つに、
店で買えないものが食べられる、と言うのがある。
間引いた人参の幼葉でフリカケ。
サツマイモの茎でキンピラ。
ズッキーニの花の天ぷら。

そして初春の頃は、菜花だ。
菜花と言えばナノハナを指す言葉だけれど、アブラナ科の花の総称でもある。
この時期、冬を越したアブラナ科の野菜はトウ立ちし、花をつける。
白菜、小松菜、チンゲンサイ・・
そんな花芽の美味さったら、ちょっと驚くほどのものだ。
ビタミンやらカロテンやら糖分やら、春への期待とか。
そんなもののギュッと詰まった花芽を食らう喜び。

このために、収穫せずに残しておいた野菜たち。
出勤前に庭を見回り、花芽を探す。
今朝は小松菜の芽を10本ほど収穫。
こいつは油炒めでも最高だけれど、今日は鍋の具にしようか。
それはMの大好物でもあるんだ。



久しぶりに出掛けた2018年03月16日


首都高の渋滞に耐え、長いトンネルを抜け、覆面パトに怯え、またここに来た。
去年の盆以来か。
母の実家の墓に参り、阿弥陀堂に常駐している猫と遊び、伯母の家を偵察する。

気温は22度。
強い南風。
久しぶりにロードスターの幌を開けた。
やっぱりこの車は屋根を開けて走りたい。
閉めたままだと、狭い穴倉に籠っているみたいだもの。
花畑の前を走れば花の香りを、牛舎の横を抜ければ牛糞の匂いを。
まるでバイクに乗っているようだ、とMは言う。


磯遊び。
思ったよりも温かな海に驚いた。
海流の影響もあるだろうが、やっぱり海にも春が来ている。
ヒジキの解禁は4月だったかな。
シッタカは今も採れるだろうか。
子供の頃に遊んだ海が今も変わらずそこに在るのが嬉しい。


花摘みして、鯨料理を食べ、少し昼寝して帰宅。
帰りは山道を走った。
海辺の道も楽しいけれど、山道もまたいい。
緩やかにうねる車の少ない道。
早くも田植え準備の始まった棚田。
あー、やっぱりこの辺好きだなと思う。
そしてまたいつもの、引退したらこっちに住もうか、という妄想がはじまるのだ。

フキの移植に成功2018年03月17日


去年の秋。
夜陰に紛れてひっそこっそり、実家からフキを盗んできた。
それを自宅北側の隅に植えたのをすっかり忘れ、また春が来た。
そしてふと気づくと、フキノトウが出ているじゃない。
ああ、嬉し。

僕はフキノトウの香味が大好きなんだ。
そして、実家のフキの移植に成功したことも喜びを増す。
昔は僕が管理していた実家のフキ。
祖母の代からいつもそこで育っていたフキ。
あの家が兄の棲み処になってからは、ゴミ置き場になってしまったフキの木陰。
タイヤとか机とか水槽とか動かないバイクとか。
そんなモノをかき分け、掘り上げてきた甲斐があった。
これからはここに根付き、春にあの苦みを届けてくれ。

埼玉に借りている畑へのジャガイモ植え付けは終わっている。
でも、自宅の畑は放置したままだ。
雑草を抜き、残っている冬野菜を撤収し、堆肥を入れ耕したい。
そこはGWの頃にはもう、夏野菜を育てる畑になるからだ。

畑遊び、車いじり、日曜大工、庭の手入れ、山歩き。
ちょっと暖かくなっただけで、やりたい事がどんどん出てきた。
それだけ、冬の間家に引きこもっていたという事か。








春なのに2018年03月19日

墓地周辺が渋滞すると思ったら、彼岸入りしたのか。
間もなく春分。
昼時間は12時間を超えた。
自転車通勤も再開した。
スタッドレスタイヤを履き替えた。
桜も咲いた。
冬篭りから覚醒し、活動をはじめる。
歳のせいか春が来たというより、冬を耐え忍んだという気持ちの方が強い。

そんな時期だけれど、125ccのスクータを手放した。
この一年以上、カバーを掛けたまま放置していたのだ。
昨日、車のタイヤ交換の邪魔になるからと移動しようとし、
試しにセルを押したら一発でエンジンが掛ったんだ。
そんなに調子が良いのなら、ここで燻って居るより誰かの手に渡った方が良い。
近所のお店に持ち込んで、あっという間に手続きを終える。

怖くなったら、バイクなんて乗らない方が良い。
10代の頃から何台も乗り継いできたけれど、二輪はもう持つことは無いかもしれない。
それを想うと少し寂しい。
でも大きな事故もやったし、二輪時代を生き延びたことを喜ぶべきかもしれない。