深夜のラジオのこと2018年03月03日



二階の部屋のカーテンを開けたら明るくて驚いた。
この電線の上まで伸びていた巨木を半分の高さに切ったからだ。
昨日は帰りが遅くて解らなかったけれど、昼の間に職人さんが良い仕事をしてくれた。

出た剪定枝は2トントラック一杯分。
小さくなった樹は、やがて若返り再生するだろう。
大切にしていた樹を切り詰める事は寂しかったけれど、必要な事だった。
広くなった空がとても青い、土曜の朝。

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昨夜、ラジオを点けたまま眠ってしまった。
夢現の境で懐かしい歌が何曲も流れた。
どうやらグループサウンズの特集のようだ。
タイガースとかスパイダースとか、僕が生まれた頃に流行ったような歌だ。
隣のMの寝息と懐かしい曲を、眼は開けずにベッドの中でずっと聴いていた。
朝になって調べたら、「ラジオ深夜便」の午前3時台のプログラムだったようだ。

母はラジオが好きだった。
若い頃の母は、いつも台所のテーブルでラジオを聴いていたっけ。
黒い革カバーの付いたSONYのTFM-110という3バンドのトランジスタラジオ。
母はそれをとても大切にしていて、どうやら父からのプレゼントだったらしい。

それから何十年もたって、病床に伏した母はまだラジオを聴いていた。
枕元ではずっと小さな音で音楽が鳴っていた。
在宅で介護をしていた頃、実家での夜の日課を終え帰宅する僕がお休み、と言うと
ラジオは消さないで、と言ったっけ。
眠れない夜が嫌だったのか。
幾つになってもラジオが好きだったのか。

あの日もラジオが点いていた。
あの日、僕が出勤した後の一人で過ごした昼、母は何を聴いていたんだろう。
夕方急いで帰って、たった20分で逝ってしまった。
母はラジオを聴きながら僕の帰りを待っていたんだろうか。

夜、ベッドの中でラジオを聴くと母を思い出す。
だから深夜のラジオが好きだ。








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