酒呑みだった親父は、夏には決まって生姜を肴に冷酒をやった。
谷中生姜という葉生姜で、鉛筆ほどの太さのそれに味噌をぬり齧るのだ。
子供の頃の僕は、そんなもののどこが美味いのか全く理解できなかった。
だって辛いばかりの生姜に味噌をぬって、それを肴に日本酒なんて不味いものを呑むなんて。
長じて僕も大酒呑みになり、夏の時期には生姜を欠かさない。
ここ数年は自分の畑でそれを作り、やはり親父のように自家製の麦味噌を付けて齧るのだ。
そして、酒はやはり日本酒だ。
今の僕は、親父にしか相談できない問題をいくつも抱えている。
親父が生きていてくれたら、などふと思う。
6月16日父の日。
今年もまた、生姜を植えた。