カレー作るぞ2016年07月02日

半夏生も過ぎ、もはや7月。
東京は霧の降る朝。

普段は使っていない一階の部屋に、両親の写真を飾っている。
その写真の脇にある小さなラジオを点ける。
母が使っていたものだ。
いつの間にか始めたそれはもう、毎日の習慣となってしまった。
職場から独り暮らしの静かな家に帰るのが嫌だ、と言う事もある。
でもそれだけじゃない。
とにかく朝になると留守宅にラジオを点けて家を出る。

いつもよりずっと遅く、8時をまわってから車で出勤。
8時5分、NHK-AMでラジオ文芸館が始まる。
一話完結の短編小説の朗読で、母がずっと昔から聞いていた番組だ。
今朝のそれは浅田次郎原作の「あなたに会いたい」
車の中でそれを聞きながら、母の姿を思い出す。
右耳を前に出すような仕草で、小さなラジオを聴いていた。
浅田次郎か。
母の好きそうな話しだ。
職場に着いても車の中で、その朗読が終わるまでずっと聴いていた。
誰も居ない留守宅で、同じラジオが鳴っているはずだから。

仕事は特記事項なし。
昼、カレーでも食いに行こうか、なんて話していたけれどイレギュラーが入り頓挫。
昼食を取らず10時間働いて帰宅。
今日はたくさん汗をかいた。


晩飯の買い物をせずに帰ってきた。
アタマの中はカレーになってしまっているけれど、材料が無い。
いや、肉っ気が無いだけで野菜ならあるぞ。
カレールーはパントリに有るし、米も有る。
春に収穫した玉ねぎ。
先日掘り上げたジャガイモ。
それだけじゃ少し寂しいから、庭の畑に出てトマト、ナス、ついでにキュウリも取って来た。
自家製夏野菜のカレー。
それを22時過ぎから作ろうと言うのだから物好きな。

今、それらを煮込み中。
米も炊けたし、シャワーを浴びたらビールをあけよう。
明日は休みだ。






部屋が暑い2016年07月03日

猛暑となった日曜日、リビングのエアコンがダウン。
二階リビングで日当たりの良いその部屋は室温35度に達した。
湿度も高く、到底我慢できる環境ではない。

我慢できないのには、もう一つの理由がある。
そのエアコンは5年前に買って今までに3度の故障。
冬場の暖房には使用しないので4回の夏で3度の故障だ。
そして今回めでたく5度目の夏に4回目の故障となった。
エラーコードによればガス圧の不足で機器保護のために自動停止するというモノ。
その原因も常に同じ。
1回目はガスの補充でその場しのぎをされた。
2回目はフレア加工をやり直した。
3回目ははさすがに抗議をし、室内機の大部分を交換しもう大丈夫と言われたのだ。
それがこのざま。

メーカーと購入店の双方に連絡をし、今までの経緯と共に申し立てた。
たとえば差額の10万円程度なら払うので、他機種に交換できないかと言ったのだ。
しかし当然と言うか、通常の修理での対応とのこと。
そのエアコンはメーカー最上位機種の7kWクラス。
価格だって30万円以上したものだ。
それがシーズンごとにダウンするのでは話しにならない。
第一、修理と言っても日曜希望なら何週間も先。
急ぐのなら平日の昼間のみと言うのでは、こちらだって対応できないじゃないか。

もうアタマに来た。
このヘナチョコを修理したとしても、またいつ壊れるか解ったものじゃない。
いっそ仕事帰りに電気屋に寄り、新しいエアコンを買ってしまおうか。
とにかく暑くてしかたがない。
LDKを一つの大型エアコンで冷やすのが危機管理的に間違っているのかもしれない。
だったら中型機を二台買う?
もう暑すぎて何も考えられない。


アタマを冷やすため、ビールを呑む。
毎日のように取れるキュウリとミョウガで酢の物を作った。
今期初収穫の枝豆も出来が良い。
これで涼しい部屋があれば言う事は無いのだが。

台風一号2016年07月06日

朝5時の気温は20度ちょうど。
柔らかな南風の水曜日。
徹夜明けでやって来て、午後から明朝までまた勤務に入るMを起さぬようコッソリ出勤。
仕事は全く進まぬ。
雑用の特異日とも言えるほど、業務外の作業多し。
昼食は緑のたぬき。
湯を入れたところで呼び出しをくらい、20分後に冷めて膨張した物体を摂取。

史上二番目に遅く産まれた台風一号はその後急速に力を強めた。
今朝の中心気圧は925hPa。 最大風速は50メートル。
そしてそれは更に成長し、猛烈な勢力のまま八重山諸島に接近するという。
そこは、先日職場を辞めたOちゃんの嫁ぎ先。
新婚数日目にやって来る嵐の洗礼をどう感じるだろうか。
海や自然が好きな彼女の事だから、それも島の生活の一部として迎えるだろうか。


独りの晩飯は、例のごとくキュウリとミョウガの酢の物。
他に、焼きナス、ポテトサラダ、昨日の残りのモツ煮。
酒はこの頃気に入りの、常陸野ネスト・ホワイトエール
一度気に入ると執着する習性があり、もう毎日コレばっかり呑んでいる。
この小瓶を二本空けて、その後はゆっくり白ワインだ。

富士2016年07月08日

曇り時々小雨。
蒸し暑い金曜日。
僕もMも仕事は休みだ。
いつもより遅く起きて、さあどうしようかと考える。

この頃乗っていなかったロードスターでどこかへ行こう。
とりあえず西へ。
中央道を走りながら目的地を決めよう。
ラジオは78.6MHzのFM-FUJI。
そこから流れた山梨情報で、大石公園のラベンダーが見ごろだと知った。
大石公園は川口湖畔にあり、Mとは何度も行った事がある。
ちょっと見に行ってみようか。


駐車場を降りるともう、ラベンダーの香り。
今日あたりがちょうど満開だという。
Mと昔見た「時をかける少女」の話などしながら散策した。
僕はこの河口湖の向こうに見る富士山が好きだ。
裾野を大きく伸ばした雄大な姿は、何時見ても嬉しくなってしまう。

それにしても蒸し暑い。
気温はそれほど高くは無いけれど、湿度が辛いんだ。
それなら涼しい場所に登るか。
富士スバルラインは今週末からマイカー規制が始まる。
気軽に登るなら、今がチャンスだ。


有料道路を25キロ走れば、そこは別世界。
四つある主だった富士登山ルートの一つ、吉田ルートの五合目基点だ。
標高は2300メートル、気温20度。

はっきりと空気の薄さを感じるそこを、1時間ほど散歩した。
スカイライン側と違い、スバルラインの五合目は遠く山並みを見下ろす事が出来る。
南アルプス、八ヶ岳、北アルプス。
雲海に浮かぶ墨絵のような景色に感嘆する。
その間にも生き物のように雲がうねり、遠くに稲妻が走る。
いつまでも見ていたい光景だ。
でも、また雨が来そうだからそろそろ下りようか。


土砂降りの雷雨の中、いつもの店まで逃げてきた。
ここのホウトウが好きで、富士に遊びに来たら必ず食べるんだ。
カボチャを崩し、汁に溶くようにしてすする。
武田信玄の戦闘食だったというのは本当だろうか。
こんな美味いものを食べたら確かに力が出るかも知れない。

そのまま帰るのが嫌で、山中湖から413号道志みちへ抜けた。
いつ走っても気持ちの良い道。
雨雲から逃れてきたバイクの集団も、楽しそうに流している。
帰りたくないなあ、など言いながら僕らも走る。
でも帰りを待つ老犬を思い、そのまま真っ直ぐ家へ向うのだ。

30年前2016年07月13日

東京の日の出は4時35分。
夏至の頃に比べ、昼時間は12分も短くなった。
サルスベリの咲き始めた夜明けの庭を、ミョウガを探しながら犬と歩く。
やがて霧雨。

仕事は特記事項なし。
昼にカップ麺をすすりながら、大学を出たばかりの新人と話す。
やがて今年新しく出来た8月の祝日、山の日の話しになった。
山の日を作る事が先に決まり、それを何日にするかはいくつかの案が有ったらしい。
最後に残ったのは、8月12日。
盆休みで休暇に入っている会社が多く、子供達も夏休み。
だからその辺りに祝日を作っても大きな影響が無いと思われたそうだ。

しかし8月12日と言えばあの、御巣鷹事故の日だ。
それを祝日にする訳にはいかぬと言う事で、11日に替えたのだ。
そんな話しをしたらその若者、御巣鷹とは何ぞ、と言うではないか。
そうか、そんな世代か。

でもいくら産まれる前の出来事でも、日航機墜落事故を知らないのか。
あの年の8月12日、お盆帰省の満席のジャンボ機が群馬の御巣鷹山に墜落したのだ。
30年前に君と同じ年だったMは当時日赤の新人看護師で、その現場に派遣されたんだぜ。
あの夏の暑い日々に、520ものご遺体を清めたんだ。
まあ、僕だって話しに聞くだけで想像も出来ない事だけれど。

僕はその年の夏、ずっと下北沢で過ごしていた。
高校を出た年で浪人と称して、でも勉強もせず家にも殆ど帰らなかった。
地元に近い吉祥寺と似た雰囲気の下北沢が気に入って、毎日遊び暮らしていた。
知り合ったばかりの女性と一緒に居る事が、何より大切だと勘違いしていたんだ。
お金が無くて、たまに食べるカツ丼がご馳走だった。
それだって彼女の奢りだ。

その、年上の女性から聞く返還前の沖縄の話が好きだった。
セント硬貨を握って駄菓子屋に行ったと話してくれた。
車が右側を走っていたとか、親が本土に渡るのにパスポートを申請したとか。
その年の秋に彼女は学校を辞めて那覇に帰ってしまった。
でも、バイクの事故で入院中だった僕は見送りにも行けなかったんだ。
当時は今と違いすぐに退院させずに長期入院が普通だった。
10月の事故で入院して、退院したのが翌年5月だぜ。

そんな昔話をする昼休み。
こうして思えば30年なんて一瞬の光陰だ。
でもその間にも、なんだかんだと僕だって足掻いてきたのだ。

夏野菜をもりもり食べる2016年07月16日

朝5時に犬と歩いたときの気温は21度。
低い雲と湿気の朝。
梅雨明けはまだか。
もうそろそろ、それを期待しても良い頃だろう。

仕事は特記事項なし。
午後、留守宅のカメラに不審な人物が写った。
何か動きが有ると通知が来るのだ。
スーツの男が僕の家の駐車場に出入りしている。
オープン外構だからそこに人が入ることも有るだろう。
でも、執拗にウロウロする姿を職場で見て驚愕した。

帰宅後、ポストに入っていた手紙で事情を悟る。
先日、つい出来心で試乗した車(300馬力!)の担当者だ。
試乗しながら、ウチのスペースには少し大きいかなとつぶやいたのだ。
そこで早速駐車場を見に来て、充分その車が入る事を確認したと手紙にはあった。

10月に車検が切れる走行8万キロの四駆をどうするか。
まだまだ乗り続けよう。 いや、もう乗り換えよう。
この頃、その二つがぐるぐるとしている。
グリスが漏れてしまったタイロットエンドブーツとワイパーブレードは先日交換した。
でも、夏タイヤも冬タイヤも坊主だ。
ブレーキパッド、そしてオイル漏れしているダンパーは交換が必要。
補充しても減ってしまう冷却水は、どう対策するか。

気に入っている車だけれど、嫌な思い出も染み付いている。
コレを買ったのは親父が突然亡くなり、僕の生活環境が激変したからだ。
複数持っていた車を一台にまとめるため、ある程度妥協して買った車。
可愛がっていた車を泣く泣く手放した。
でもいざコイツにのってみると、これほど万能な車は無かった。
少しも飽きていない。
ただ、今では乗るたびに母を思い出すようになってしまっている。
毎回の通院や、告知や、そして納骨の日の事を思い出す。
あれから2年経ったのに、記憶は薄れない。
それが少し辛い。

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日帰り温泉へ行った時、ふと乗った体重計の数字に驚愕した。
ウソだろっ、とその場で叫んでしまったほどだ。
その贖罪ではないけれど、庭の畑の野菜をせっせと食べる。
月の半分ほどはこの家にMが居て、その日はしっかりと料理を作ってしまう。
だから残りの半分は、夏野菜と少しの食材で質素な夕飯としている。

今、畑からはトマト、ナス、キュウリ、ミョウガ、枝豆が毎日収穫される。
特にトマトは食べきれないほどで、毎日数個は食べている。
コイツは幹の下から順に実を付ける。
ひと房5個ほどのそれが熟す頃、また少し上の房が色を付け始める。
だからそれに遅れないように、今日もまた数個を収穫した。

夕飯は、冷やしトマト、叩きキュウリのピリ辛漬け、冷奴にミョウガをのせたやつ。
ナスを少しの油で焼き、酢を利かせたタレに浸したもの。
まずは常陸野ネスト・ホワイトエールを一気飲み。
その後、栃木の「開夏 純米吟醸生詰」
夏らしいきりっとした日本酒だ。


エアコン交換2016年07月18日



5年の間に4度の故障をしたエアコンに見切りをつけた。
新しいのは富士通の7.1kW。
そしてそれが今、幸せな風を吐き出している。
こんな当然な安らぎが、今までのエアコンでは望めなかった。
暑いときに限って稼動が止まり送風になってしまうなんて、ちょっとした悪夢だ。
涼しい部屋って素敵。

その部屋で少し休んだら、埼玉に借りている畑へ行こう。
今日は延びてしまった雑草を抜く作業に時間が掛かりそう。
落花生と里芋に土寄せをし、スイカに施肥もしよう。
この時期、自宅では毎日手入れが必要な夏野菜を。
埼玉では広い面積が必要で手入れの手間が掛からない野菜を作る。
我ながら、好きだなあと思う。
土いじりをしている時が一番楽しいかもしれない。



桃狩り2016年07月19日



じっとりと暑い東京から、更に猛暑の勝沼へ行く。
炎天下での桃狩りをするためだ。
山に囲まれた盆地の底の熱気と湿気。
僕にとって暑い盛りの桃狩りは欠かせない。
なぜって、暑さも桃も大好物だからだ。

中央道を勝沼まで行かず、上野原ICで降りる。
そこから暫く続く川沿いのカントリーロードが好きだからだ。
車はロードスター。 
屋根を開け、日焼け止めを塗ったMを隣に乗せて。
猿橋、初狩、笹子。 長いトンネルを抜けたら勝沼だ。

いつもの農園は1000円で食べ放題。
僕は完熟前の少し硬い桃が好きで、そんなのばかり探して食べる。
Mは小さなスモモが気に入りで、酸っぱいそれをいくつも食べていた。
暑さと熟した桃の匂いとセミの声と山から湧く入道雲。
そんなものが混沌として夏を感じさせる。
ああ、今年も夏が来たな。

腹ごなしに少し散歩してから温泉へ行った。
標高700メートル弱のそこは、風が抜けて露天風呂が心地よい。
遠くの山並みと眼下の街を見ながら1時間ほど湯に浮いた。

そしてまたホウトウを食べた。
暑いときに熱いホウトウ。 
しかも入ったその店はエアコンが入っていなかった。
室温34度(!)
でもなぜか、その暑さが嫌ではない。
汗をかきながら熱い麺をすするのが快感ですらある。
これがきっと、ハレの日の作用なんだろう。
日常でそんな経験をしたら、店が暑いと言って不機嫌になってしまうだろう。
また明日からの日常に備え、今の非日常を楽しんだ。





塩蔵ワラビ2016年07月21日


4月に作った塩蔵ワラビを食べるのだ。
塩蔵ワラビの作り方は簡単だ。
根元の硬いところと穂先と産毛を取って、生のままで塩に埋めるだけ。
冷蔵庫で保存すれば一年くらいは持つ。
これを一晩塩抜きして、サッと茹でて生姜醤油で食べるのが好きだ。

今夜は仕事を終えたらMが来る。
何時になるか解らないので、冷えた吟醸酒をやりながら待つ事にする。
ツマミはこのワラビ、もずく三杯酢、鶏ササミ梅和え。
Mが来たら冷やし中華でも作ろうか。
明日は仕事休み。
何も予定を入れていない、怠惰で貴重な休日だ。

うなぎ2016年07月24日



都立霊園へ墓参の帰り、大きな魚屋さんで鰻の蒲焼を買った。
国産を一本、中国産を一本。
Mと二人で、ちょっとした贅沢。

国産の方が身に弾力があり、ややサッパリとした味。
中国産は柔らかすぎて、それが少し物足りない。
でも僕レベルじゃどっちも美味い、となる。
冷えた吟醸酒をやりながら鰻を食らう。
梅雨はまだ明けない。
穏やかな北風に、風鈴がりんと鳴る夜。