レ・ミゼラブル2013年01月10日

もう大昔。
19の時にバイクで大きな事故を起こし、7ヶ月間の入院生活をする事となる。
自分の引き起こしたその事態は進路にも生活にも大きな軌道修正を要するもので、ただ単独事故だった事だけが不幸中の幸いだった。
気持ちの整理がつかないまま突然始まった寝たきりの入院生活。
当初は起き上がる事も寝返りも出来ず、日々の食事すら苦痛だった。

数度の手術を経ても粉砕した関節は元には戻らず、医師は障害が残ると言った。
左肘は動かないだろう。掌は上を向かないだろう。筋力も弱いままだろうと。
勉強以前に自分で自分を壊してしまい、もう希望の職になど就けないだろう。
漠然と技術者になりたいなどと思いながらも勉強もぜず、予備校生と称してフラフラしていた自分の怠惰なそれまでを呪った。

そんな時、幼馴染の妹が何度も見舞いに来てくれていた。
彼女は都心の私立中学へ通っており、皇居近くのその病院は学校の帰り道に有ったんだ。
備え付けのテレビなど煩いだけで、でも誰かと話すのも億劫でいつも呆然としていた。
そんな僕にある時買って来てくれた本が、岩波だったかの「レ・ミゼラブル」。
子供の頃、教会の日曜学校で読んだ事のある本だった。

残酷なほど時間だけは余っており、その長編を入院中に何度も何度も読み返した。
今の自分は世界で一番哀れなのだ、など滑稽な事を思っていた僕はその世界にのめり込んだ。
あの時ほど本を読んで心を動かされた経験は無い。
僕はそれを読んで、神は本当に居るのではないか、とも思ったのだ。

その入院生活で自分の新しい進路を見つける事になるのだから事の良否など解らないものだ。
ただ今でもあの時の事を思い出すと、上手く説明できない感情が湧き上がって来る。
この先もずっと上手く説明できないままだろうと思う。

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昨夜、Mと待ち合わせて映画「レ・ミゼラブル」を見た。
ミュージカル映画だから、それが合わない人にはきっと評価されないと思う。
でも僕にとってこの映画は、いつまでも忘れないものになると思う。
昨夜は隣にMが居たから泣かなかった。
だから、今度は一人で見に行こうと思う。