2006/92006年09月30日


 

06/9/30 (土)  ニガウリおしまい

曇り時々晴れ。
東京の最高気温は26度。

早い時間に起きて近所を散歩する。
こんな所にも、あんな所にも、彼岸花の赤が揺れる。
さかりの短いこの花を、掌に触れながら犬と歩いた。

畑に植え付けた余りのサツマイモを庭の隅に植えておいたのだけれど、手入れもしないというのに葉を盛大に広げ地面を覆っている。
あと一月もしたら、収穫できるだろう。
あんなヒョロっとした茎を植えただけで、やがて地面の下に立派な芋をつけるのだから作物とは偉いものだ。

夏の間、充分に楽しませてもらったニガウリを抜く。
家のフェンスで毎年作っているニガウリは、病虫害に強く殆ど手入れも要らず、放任していても面白いように実を付ける。
涼しげな葉、可憐な花、繊細なツル。
ニガウリは誰にでも薦められる家庭菜園の優等生だと思う。




車で出勤。
忙しい筈の土曜日なのに、いざ出勤して見るといくつかの予約がキャンセルされポカリと時間が空く。
緩急の差が激しくそれを自分の力で左右できないのがこの職場の欠点だ。
それでも空いた時間が嬉しくない訳ではなく、またいつもの大勝軒でゆっくりと文庫を読みつつラーメンをすする事が出来た。
午後は黙々と真面目な作業に没頭した。

定時に職場を出る。
ジムへ寄り、今夜呑む酒の事を考えながら1時間ほど汗を流した。

   


夕飯には、今年最後のニガウリ炒め。
豚肉とエノキと豆腐。
味付けは塩だ。
豆腐は電子レンジでチンしておくと水分が出て硬く締まり美味くなる。
ニガウリを炒めすぎると台無しになるから、ササッとフライパンを振る。

他には昨夜漬けておいたキャベツの糠漬け、秋刀魚塩焼き、豆腐と春菊の小鍋。
酒はまずエビスで、その後腰をすえて「くどき上手」を味わおう。

夜気に金木犀の甘い匂い。
そして9月が往き、菊と紅葉と寒露の季節がやってくる。

 

 

 


 

06/9/29 (金)  走る

曇りの一日。

秋雨前線は南へ下がっているけれど、東日本には低い雲が停滞している。
週末、また前線が北上し雨の予報。
これは夏の名残りの太平洋高気圧と、冬のはしりの大陸性高気圧のせめぎ合いによるものだ。
負けることが解っていても、栄光の太平洋高気圧は意地でも大陸性高気圧などには背中を見せないのだ。

東日本における秋の長雨と言われるこの時期の降水量は、むしろ雨季である梅雨の時期より多い事も有ると言う。
そしてこの時期、一雨降るごとに秋が加速してゆく。

   

早朝から埼玉に借りている畑へ立つ。
この時期の畑には夏の盛りのような華やかさは無いけれど、穏やかな優しさがある。
芋もゴボウも大根もカブも、柔らかな土の下で静かに肥えているはずだ。
平日早朝の畑には僕の他に誰も居らず、草むしりを終えた僕は折りたたみ椅子に座って放心する。
誰にも邪魔をされない、静かで豊饒な地。
これほど居心地の良い場所が他にあるだろうか。

耕した土の匂いと積み上げた草の匂い。
朝霧でも降ったのか、大きく育った里芋の葉には水滴がコロコロと転がっている。
とうに盛りを過ぎた向日葵の黄と、完熟した鷹の爪の赤。


   


アキアカネが乱舞する。
このトンボは秋になると山から里へ下りてくると言う。
そして、秋が深まるほどにその体も赤く染まっていくんだ。
トンボの舞う姿は美しい。
それを見るだけで、なんだか浮き立った気持ちになってくる。

今朝はどれだけ畑に居たろうか。
これは小さな世界だけれど、この大切な世界を何としても守りたいと思う。




昼、練馬の「United cinemaとしまえん」にて、Mと映画を見る。
そしてこれは、最近見た中で最もショッキングで僕にダメージを与えた映画となった。
僕らは事実として、この旅客機がどういう最後を遂げたかを知っている。
それを知っていても尚、こんな結末を見たくなかった。
掌にジットリと汗をかき、エンドロールが終わっても中々席を立つ事が出来ない。
危うく、自分が映画館に居る事すら忘れてしまうところだった。

遅い昼食は手軽に「サイゼリア」で食べた。
この店は何を食べても安い。
だから当然、学生達の溜まり場となるんだ。
そして今日も大騒ぎする学生の集団に辟易とし、そそくさと店を後にした。
あの、重い映画の後に見る女子高生達のお祭り騒ぎにはまた格別のものがあった。
今日はそれを許容できる気分ではなかった。

その後買い物へ行くも、どうにも不調となり帰宅することにした。
映画の最中は手に汗を握り、心臓もドキドキとしていたのだけれど、映画館を出てからもその状況が変わらない。
どうやら、あの映画を切っ掛けに不調になってしまったようだ。
その軟弱さには笑ってしまうけれど、この持病とは上手く付き合う必要がある。
今日は無理せず、早々にMを送り自宅へ向かった。

それでも、直帰せずスポーツジムへ行くのだからおかしなものだ。
ダルイ体を引き摺って、有無を言わさず走る。
やがて1時間、10キロ程も走るうちに、自分の体調に対する興味など失せてくる。
何も考えず、周りのことも気にならず、自分の呼吸だけしか聞こえなくなってくる。
ただ、マシンの上で走る自分が居るだけだ。

帰宅してエビスビール。
久しぶりに運動したせいか、今夜はよく眠れそうな予感がする。
今夜の運動療法は著効を見せたな。
まあ、本当に体調の悪いときは運動など到底出来ないけれど。

明日は早朝出勤。
天気は下り坂だ。






 


 

06/9/28 (木)  好天


昨日のまるで嵐のような雨が去って、抜けるような青空。
東京の最高気温は昨日より大幅に上がり29度。
それでも空気の気配は秋そのもので、深呼吸したくなるような気分。

金木犀の木の下にはオレンジの、萩の木の下には紫の絨毯が広がる。
散り際が美しい花と言うのがあるものだ。
桜や椿同様に、金木犀や萩もやはり散り花が美しい。

   

しかし、花の絨毯に見とれてばかりはいられない。
落葉や落花を綺麗と思わない人も居るだろう。
ウチの敷地内へ落ちている分はそのままにするけれど、歩道へ落ちているものは掃き集めた。
早朝からホウキとチリトリ持って、犬がじゃれ付くのを笑いながらせっせと掃除した。

短かったけれど暑かった夏が往って、秋らしい秋がやってきた。
季節の変化は嬉しいものだけれど、夏から秋への移ろいは格段に美しい気がする。
いくら夏が好きだと言ったって、この時期の青空の爽やかさは認めないわけに行かない。




色々な事が重なって、忙しくなってしまった月末。
それもどうやら峠を越えたようだ。
ここ数日、照明の消された廊下を部屋から部屋へ渡り歩き、夜遅くまで1人で仕事をしていた。
そんな時、僕は弱気になり自信を無くし職場内での自分の存在価値にすら懐疑的になる。
それでも、何とかなる。
少しだけ頑張れば、何とかなるんだ。


今日、上層部は揃ってゴルフとか。
どうりで職場の空気が良い訳だ。
こんな日に限って久々の好天なのだから、まったく悪運の強い人たちだ。

午前中は他部署との会合で潰れる。
久しぶりに食べる昼食は、これまた久しぶりの大勝軒。
職場を抜け出して、濃いカツオ出汁の醤油ラーメンをすする。
カウンターにはネギチャーシューをツマミに生ビールを呑んでいるオジサン。
この人、この店でよく見るな。
いつも、とても美味そうにビールを呑んでいる人だ。
昼間のラーメン屋で飲むビールはさぞ美味かろうな。

午後は来週の会議用に資料作り。
案件が多くて難航するだろう会議の準備は捗らない。
そして、満腹状態でのエクセル打ち込みほど眠くなる行為は無い。
気付けばキーボードに涎を垂らして眠り込んでいた。

今日はもういいや。
早い時間に職場を出、スポーツジムへ行こう。
体が運動を求めているのが良く解る。
汗をかきたくて、走りたくて、筋トレをしたくてウズウズとする。
もう、今日の仕事はおしまいだ。



と、意気込んで職場を出たものの、いつもの地酒屋さんへ寄ったのが間違いだった。
試飲した「くどき上手」純米大吟雄町44%精白のあまりの美味さに早速買い込み、その足で急ぎスーパーへ向かう。
鮪の中落ち、鶏ササミ、焼き海苔にちりめん山椒と厚揚げなどを買い込む。
もう、頭の中は酒一色だ。

明日は休み。
スポーツジムで走るはずが、自宅で一人宴会となったけれど、それもまた良し。
今夜はDVDで映画「リービング・ラスベガス」を見ながら1人で酔おうと思う。

 

 

 


 

 

06/9/27 (水)

今、23時40分。
仕事が終わらねえっ!

今週はずっとこんな感じ。
日曜以来ロクにメシも喰ってないし、なんか打ちのめされた気分。

パトラッシュ。
なんだかとっても眠いんだ。

 


 

 

06/9/24 (日)  葡萄収穫

気持ちの良い秋の日が続く。
こんな日に庭仕事をするのは楽しい。
蚊は相変わらず居るけれど、夏の炎天下のように生命の危機を感じる事も無い。

犬が集中的に掘り返してしまいハゲてしまった芝生の部分に手を入れる。
目土、バーミキュライト、バーク堆肥等100キロほどを買い、チョロQに積んで帰る。
固まった表土を掘り返し、新土を入れてから芝の種を蒔く。
水遣りを忘れず、生え揃うまで犬に進入を遠慮願えば一ヶ月ほどでまた緑の芝が再生するだろう。

   

それにしてもチョロQ号は良く働いてくれる。
荷台に改造した後部スペースは大抵の物を飲み込むし、足腰丈夫な車体は文句も言わずどこへでも入って行く。
エアコンは良く利き、燃費はもう1台の車の三倍近く走り、静かで、邪魔にならず、小回りが利き、運転もしやすい。
いまや、僕のファーストカーになりつつ有る。




   

葡萄農家への道は険しく遠い。
ほど良く色付いた数房を収穫してみたのだけれど、これ、品種は巨峰なんだ。
なんすかね? この粒の小ささは。

聞くところによると、もっと摘果・摘粒しなくてはならないとか。
農家で作る巨峰の数倍もの実をならせてしまったので、粒が小さくなってしまったらしい。
これでも随分たくさん摘果したつもりなのだけど。

でも、味は文句無しに美味い。
甘みも強いし、香りは市販の巨峰より数段上だと思う。
棚にはまだこの数倍の実がなっているから、暫くは楽しめそうだ。




午後、M、Mの娘との3人で出掛ける。
最近チーズに凝っている娘の為に、イタリア料理屋へ行ったんだ。
色々なチーズを使った料理をたくさんテーブルに並べ、満悦の娘と話しながらゆっくり食事をした。

ヒネクレた自分の高校時代を思うと、この娘の素直さは奇跡に思える。
もちろん、この子なりに色々有るはずだけれど、
こうして僕らと一緒の席につき友達や学校の事を話しながら食事をしている子が可愛い。
良い子に育ったと思う。
初めてあった時、この子はまだ3歳だった。
血は繋がっていないけれど、ずっと成長を見てきた僕はついつい目尻が下がってしまう。
心の奥底に、そんもの無いと思っていたこの子に対する父性の様なものを感じる。

夕方、ホームセンターとスーパーで買い物。
日曜の混雑にすっかり人酔いし、また具合の悪くなった僕は早々に家へ帰りベッドに転がる。
平日休みに慣れた僕には、日曜のスーパーは難易度高し。
食事をする気力なく就寝した。



 

 


 

06/9/23 (土)  ラッキョウとカレー

遥か南を大型の台風が移動中。
その影響の風。
空には妖しい雲が千切れて飛んで行く。
秋彼岸の中日。 
そこここで、彼岸花が風に揺れる。

Mと畑仕事をする。
もともと土いじりが好きでなかったMだけれど、長年のスパルタ教育の甲斐有ってだんだんと仕事を覚えてきたようだ。
雑草抜き、大根の土寄せ、カブの施肥、ブロッコリの消毒、モロヘイヤの収穫。
たまに飛び出てくるコオロギやミミズにウギャアと悲鳴を上げながら、それでも充分戦力になるようになった。
いつもは1人の畑だけれど、たまには2人で来るのも良いものだ。
ウギャア、ウギャアと悲鳴を聞きながら、楽しい時間をおくった。

遅い昼に、今一番気に入りのラーメン屋である東伏見の○麺堂で秋限定メニューの「秋鮭塩麺」を食べた。
透明感のある極めて旨みの濃い塩の汁、モチモチの平打ち麺、上を飾るのは七輪で焼いた鮭とイクラ、えびしんじょう、茎若布。
別に小鉢で柚子コショウが添えられ、それを溶くとまた違う味が楽しめる。
洋食出身の若いご主人の作るラーメンはどれも美味しいのだけれど、今日の一杯もまた素晴らしいものだった。

夕方、いつもの高台に車を停めて2人で綺麗な雲を眺めた。





   


初夏に収穫し、塩漬けにしておいた島ラッキョウが美味しくなってきた。
清涼感のあるサッパリとした辛味は島ラッキョウの持ち味か。
一つ二つとつまみ食いしているうちに、どうしてもカレーを作らなければと言う気になってくる。
ラッキョウと言えば、やはりカレーだ。

ラッキョウが主役なので、カレーは手抜き。
飴色になるまでタマネギを炒めもせず、小麦粉からルーを作る事もしない。
冷凍のシーフードミックスと市販のルーで作るお手軽カレーだ。
でも、仕上げにホットガラムマサラ、レッドペッパー、ブラックペッパー、ジンジャー、沖縄の「ヒバーチの実」で激辛カレーにしてみた。
僕はカレーライスのご飯は冷えたものが好きで、炊くのが面倒で買ってきた一人前のご飯を冷蔵庫で冷やしておく。
そこに、熱々大辛のカレーをなみなみと注ぐのだ。
冷えたエビスビールと共に食べる辛いカレーの美味さは、途中でスプーンを置く事も出来ず大皿一杯の量を一気にかき込む程のものだ。
そこに、シャリシャリと歯応えの良いラッキョウの刺激がとてもよくあう。
島ラッキョウ、生でよし、漬けて尚よしだ。





あっ、21時だ。
電車男スペシャル見なくちゃ。
某掲示板の実況スレに、キターっ、とか書きながら1人で見る電車男の楽しさよ。
きっと回線の向こうには、僕のように1人でビールかなんか呑みながらテレビを見ている奴らが沢山居るんだ。
1人だけど1人じゃない楽しい時間がはじまる。

 

 

 


 

06/9/22 (金)

   



夜、不調にて呑みの誘いを断り自宅で過ごす。
開けた窓から気持ちの良い風。


 


 

06/9/21 (木)  夜間飛行

気持ちの良い秋の日。
久しぶりに会う女性と食事をする。

あの頃と少しも違わない表情。
話し方も、声も、仕草も何も変わらない。
すこし照れて赤くなりながら笑うその顔も、昔のままだ。
ただ違うのは、今や彼女は二児の母だと言う事だ。

中華料理店の奥のテーブルで、積もる話しが尽きない。
料理が冷めるのも気にせず、限られた時間を惜しむように話しこむ。
下の子が幼稚園から帰るまで、もうあまり時間が無いんだ。

彼女と僕は20年前のあの頃、とても仲の良い関係だった。
友達より少しだけ近い関係。
でも、恋人では無かったと思う。
僅かなタイミングと運命のようなものの作用で、それ以上続く事は無く、かと言って疎遠になるでもなく。
アパートで1人暮らす彼女の所に僕が料理を作りに行ったり、一緒に旅行に行った事も有ったっけ。
彼女の結婚式に出席した僕は、その席で彼女の叔父さんに結婚相手はキミだと思っていたと言われたり。

でも、当時から自分の相手は違う所に居るんだと、僕も彼女も解っていたと思う。
深い所にある一線は越えなかったと思う。
彼女があの頃の事をどう思っているのか、聞いた事は無い。
たぶん、互いにとても大変だったある一時期を共に乗り越えた戦友と言うのが一番的確かもしれない。

豪邸と言ってもいい大きな家の勝手口まで彼女を送り、奥多摩街道を東へ帰る。
彼女はまた、義父の介護と子供達の世話の日常へ、僕も僕の日常へ。
時間の流れと堆積の事を考えながら車を走らせた。
変わるもの、変わらないもの、無くした物と忘れてしまったもの。

そんな事を考えていたら、なんだか腹が減ってしまった。
話に夢中で、注文したものを余り食べなかったからだ。




かつて東京一濃厚な豚骨ラーメン店と言われた店が立川に有った。
その店が移転したと言う噂は聞いていたのだけれど、まだ新しい店を探せていなかった。
近くに居るし、探してみようか。
こんな時、携帯版「ラーメンバンク」とナビゲーションは非常に有効だ。
携帯で住所を検索、ナビに誘導させ10分も掛からず店の前に居た。

新しくなった「パワー軒」。
綺麗で明るい店内からは、ここが「あの」パワー軒だとは信じがたい。
ヘタな手書きの貼り紙メニューも無いし、掃除も行き届いている。
ここは、豚骨で有名なのだけれど、サッパリ系の支那そばも美味い。
違和感を感じつつ、待つこと数分。
ココでしか味わえない芳醇な支那そばに瞠目し、満足して店を出た。
丁寧に作られたラーメンの美味さが身に染み入る。





   

夜は毛深い娘と遊んだ。
書庫として使っている部屋が気に入っているようで、いつもこの椅子でハアハアしている。
これで本を齧らなければ良い子なんだけれど。
でも、やがて眠ってしまうこの子の息遣いを聞きながらこの部屋で本を読む時間は何物にも代えがたい。
まさに、至福のときだ。

今は、もう何度目になるか解らないサンテグジュペリの「夜間飛行」を読んでいる。

 


 

 

06/9/20 (水)  晴れ


   

秋彼岸の入り。

抜けるような青い空。
低い湿度。
職場までの7キロを、自転車で通勤するのが楽しくなるような朝。

こんな気持ちの良い日を、畑で過ごす事が出来たらどんなに良いだろう。
カブの種をまき、大根の間引きをし、サツマイモのツル返しをして疲れたら車の中で一眠り。
そんなふうに過ごす事が出来たら。
しかし現実は、終日窓の無いシールドルームで仕事。
昼に外へ出る時間も無く、仕事を終えてやっと屋外へ出た時には陽が暮れていた。

これからの時期、日々刻々と昼の時間は短くなる。
秋が加速し深まってゆく。




仕事帰りにスポーツジムで少しだけ汗を流す。

どうも本調子で無いここ数日、汗を搾りだして自分を虐める気力は無い。
血圧が不安定なようでフラツキ感が有るし、頭痛とだるさは相変わらず。
しかし、昼間仕事の合間に30項目ほどセルフチェックしてもNaがやや低い程度で他に目立った異常は無い。
肝機能などAST16,ALT20,γ-GTP22と立派なもので、
これに気を良くしてやはり休肝日などいらないじゃないかと自信を付けるのではないかと心配になるくらいだ。

ここ数日の不調はきっと夏が往ってしまったせいだ。
毎年この時期になる憂鬱症のようなものなのだろう。

夕飯には鮪の赤身と湯豆腐を食べた。
酒はエビスビールを一本に、日本酒を2合。
その後、黄桃を一つ。

夜、窓を開けて何となく外を見ていると懐かしい匂いが漂ってくる。
金木犀だ。
今年もこの花の咲く季節がやってきた。
この花の匂いと共に記憶している思い出は、なぜか辛い出来事ばかり。
数年前に仲の良かった従兄弟が逝ったのもこの時期だった。
今年もまた、この匂いの季節がやって来た。

 

 


 

06/9/19 (火)  秋上がり

台風13号が日本海を北上した影響で気温の上がった日。
朝、久しぶりの青空。
しかし、午後は局地的に驟雨降る。

気持ちの良いくらいに仕事が上手くいくも、体調が付いて行かず。
昨夜から続いている頭痛が気力を萎えさせる。
若い頃の愚かな事故の後遺症で肘に大きな障害を残しているのだけれど、その影響による慢性的な上腕の痛みと肩こり。
それから発展した頭痛は僕にとっての日常だ。
しかし、きょうの頭痛は特に酷く、沢山の仕事を明日へ持ち越す事にした。

午後、遅い昼食の買い物にコンビニへ行こうと職場を出ると、職場前の交差点に制服警官と私服警官がウロウロとしている。
やがて、黒塗りの車の列が通過する。
その車の開けた窓から誰かが手を振るので反射的に手を振り返してみる。
よく見ると、それは天皇陛下だった。
去年も同じような事が有ったけれど、この道の先になにか皇室関係の施設でもあったろうか。

定時に職場を出る。
スポーツジムへ行くも、当然頭痛の為運動する気力は無し。
早々に帰宅。
途中、Tシャツ越しに痛いほど大粒の雨が叩き付ける。



   

早春に醸し、搾られてから時を経ると共に旨みの変化するのが日本酒の楽しさだ。
最近は新酒を尊ぶ傾向が有るけれど、昔は夏を越した酒こそ美味いと言われ、それを「冷や下ろし」と呼ぶ。
新酒の荒さが消え、熟成され旨みの乗った「冷や下ろし」の酒は秋上がりの酒とも言われ、じっくり味わうに相応しい。
好みの冷や下ろしを探すのは、夏が往ってしまったこの時期の楽しみでもある。

知り合いに、お前は熟女好みだと揶揄される事のある僕だけれど、それはさておき味の乗った濃厚なモノは確かに好きだ。
蒸留酒はターキー・ライ。
ビールはエビスかギネス。
トムクルーズの爽やかさより、ジョニーデップの毒が好きで、もう遥か昔に止めてしまったけれど、タバコはキャメルかピース。
そして、日本酒は新酒より冷や下ろしだ。
来月早々には冷や下ろしの利き酒会に呼ばれているし、僕自身かなりの数の冷や下ろしを入手し、酒専用冷蔵庫に安置してある。

今夜はそのうちの一本を口開けだ。
さて、今年の秋上がりの酒の出来はどうかな。
肴には丸々肥った秋刀魚を焼いて、大量の大根おろしを添えた。

開けた窓から芝生で鳴くエンマコウロギの声がよく聞こえる。
その向こうで、夜になりしぼんでしまった酔芙蓉が揺れている。
酒に酔ったがごとく、白い花弁がしぼむときには紅に染まるこの花が好きだ。






 

06/9/17 (日)  25日で

間も無く、ある店の取り壊しが始まる。
はじめて、自分の金で酒を呑んだ店。
はじめて、酔っ払った店。
はじめて酒の美味さを知り、はじめて彼女を連れて行き、はじめて1人で呑む事を知った店。
あの年の冬、当時の彼女にふられた僕は、この店のカウンターに突っ伏し泥酔していたっけ。

自転車で乗り付けてはカウンターでちょいとひっかけ、ある時は二階の座敷で腰を据えて呑み、
また、包んでもらった焼き鳥と缶ビールを持ち、井の頭公園のベンチで池を見ながら過ごした時間。
バイトの帰り、学校の帰り、大勢での飲み会がはねて、一人になっての呑みなおし。
いかにも金の無さそうな顔をしていたのだろう。
隣に座ったおじさんに奢ってもらった事も何度かあった。

間違いなく、あの店にはある種の文化があった。
それは、老若男女関係無しの語りの場であり、希薄になりつつある他人との共有感の場であり
流行のおしゃれ居酒屋などでは経験できない、かっこ悪い酔っ払いが吐き出す本音の場である。
吉祥寺で若い学生時代を過ごした酒飲みならきっと解る、あの店特有の連帯感。
そして数々の忘れがたい思い出。
その店を僕らは今、失おうとしている。

同じ味でも、ビルになってしまったらもう行かないだろう。
あの店は、今月25日で消滅する。
長く暮らした自分の家を失うような気分だ。
ああ、なんて寂しいのだろう。




 

06/9/16 (土)  職員旅行

風邪気味の朝。
出勤前にテレビで台風のニュースを見る。
更に勢力を増した台風13号は、現在925hPa。
西表島で瞬間69.9メートルの風。 波頭10メートルの大しけ。
こいつは超大物だ。
弧を描いて日本海沿いに進む可能性が有り、暫くは予報から目が離せないだろう。




出勤後お茶を飲む間も無く、いつもと違う種類の忙しさ。
なぜこんなに問い合わせの電話が多いのかな。
雑多な仕事の他に、隣の部署から飛んだHDDの換装許可の問い合わせやら、
関係ない部署から業者見積もり立会いの要請まで舞い込む。

なんで?
あんたらの部署の責任者はどうしたのよ?
職員旅行で韓国行ってる?  木曜まで帰ってこない?
はあ??

そうですか、職員旅行ですか。
何か誘われた気もするけど忘れてたよ。
韓国焼肉ツアーと沖縄体験ダイブツアーですか。
何班にも別れるので、今後暫くは職員の数が減ってこちらにシワ寄せが来る訳ね。
ああ、はいはい。
なんだか一生懸命に仕事するのが馬鹿らしくなって、昼は大勝軒へ行ってやった。


   

夜、たまに行く店で幼馴染と呑む。
カウンター6席と小上がり2卓だけの小さな店。
住宅街の中にポツンとあるため馴染みの客が多い雰囲気の良い店だ。

ここに来る度、自分でこんな居酒屋を出来たらどんなだろうという妄想に浸る。
自分で作った季節の野菜を使った料理と、日本酒の小さな店。
ああ、良いだろうな。

深夜、良いキブンに酔い自転車をこいで帰宅する。
しかし、どこをどうしたか道に迷ってMに電話で自宅まで誘導されたのだった。
僕の方向音痴は酔うとますます酷くなる。

   


 

06/9/14 (木) 太陽

明け方霧のような降り方をしていた雨が、二度寝から醒めた7時半には強風を伴った大粒の雨に変わっていた。
長大に伸びた秋雨前線。
石垣島にある台風13号は、相変わらず945hPaで、徐々に進路を北東寄りに変えてきている。

庭の曼珠沙華の蕾が少しづつ膨らんできた。
あと一週間もあれば、またあの濃紅の花を見せてくれるだろう。
この花を幽霊花とか死人花などと呼ぶ地方も有るけれど、秋の季節に風に揺れる曼珠沙華の花が僕は好きだ。

犬との散歩から帰り、車でM宅へ向かう。
途中寄った僕の畑は、先日の強い雨の影響で大根の芽が随分と被害を受けていた。
様子を見て、必要なら種の蒔き直しだ。



M宅にプレゼントした、以前僕が使っていたVAIOの調子が極めて悪い。
頻発するフリーズ。
ADSLなのに、ダイアルアップ並みの回線速度。
何をやっているのかずっとHDDが動いており電源を落とす事が出来なかったり。
Windows XPを入れなおして見ようか。
メモリを増設してみようか。
いろいろ考える。
それがダメなら買い替える必要が有るだろうけれど、この頃出費が嵩んでいるのでVAIOにはもう少し頑張ってもらいたい。

昼、板橋で映画を見る。
天皇制についての意見をここに書く事はしないけれど、他に選択肢の無かった生き方というのは辛いだろうな、と
見ていて胸の苦しくなる映画だった。
自分の感情を表に出せず、自由すらない人生。
あの時代に生きた124代天皇の本音に触れて見たい気がした。

それはさておき、この映画のイッセー尾形は神懸かっている。
顔は全く違うのに、あれはまさしく昭和天皇だ。
まるで憑依したかの様な演技は、イッセー、もうテレビでクダラナイ物真似をしてる場合じゃないよと思わせるものだった。

   

遅い昼に、M宅近くに新しく出来た「五右衛門」で大盛りパスタを食べた。
美味し。


スポーツジムでミッチリと自分を虐めて帰宅。
いつの間にか雨は止んでいた。

HDDレコーダーに撮れていたNHKにんげんドキュメントの「天突く龍を作れ 長野 須坂高校文化祭」と言うのを見ながらビールを飲む。
やがて、ビールが温くなり泡が消えるのも忘れるほどに見入ってしまった。
たった4日間の文化祭の為に半年を掛け、長さ20メートルのも龍を作るのが、この高校40年続いた伝統なんだ。
パート長と呼ばれる、龍それぞれの部分に置かれた責任者の苦悩。
文化祭が終わり、長い時間を掛けた自分達の分身のような龍を引き倒し、火をつける生徒達。

生徒たちは気持ち良い位に泣くのだけれど、それが新鮮で自分まで貰い泣きしてしまう。
そう言えば僕も、かつて文化祭実行委員長をした事があったのを思い出す。
今、報道される高校生の姿は、過度にフィルターがかかっているんじゃないのか。
こんな、素晴らしい高校生達をもっともっと見てみたい。

夜は雲の写真集を見た。
明日は久しぶりの晴れの予報。

 

 


 

06/9/13-2

酔っ払い中。
酔った勢いでこれ、予約発注してみた。

iPodは音楽の聴き方を変えたよなあ。
nanoを買ってからというもの、ジュークボックス的にシャッフルしていつも何かを聞いている。
通勤途中の自転車はもちろん、車にも専用アダプタで繋ぎ、1000曲以上の音楽をいつも携帯している。
今回買ったこれは、ジムで走りながら聞く専用機としよう。
一時間以上も黙々と走りながら、ストーンズ、ドアーズ、クイーン、クラプトン。
ロックが本当に格好良かった頃の音楽に溺れるんだ。

 

 

 


 

06/9/13 (水) 酒器

   

雨。

ほんの数日間温泉で放心してきただけなのに、よくもこれほど元気になるものだ。

昼にカップ麺を流し込む時以外は、ずっと良い調子で仕事をしていた。
まるで躁状態になったかのように。
僕はたしかに気分の浮き沈みが激しい人間だけれど、これほどまでに元気だとなんだか自分でも呆れてしまう。

定時に職場を出、スポーツジムの道具を取りに一旦帰宅すると注文していた酒器が届いていた。
酒飲みなら解るだろうけれど、外筒と内筒の間に湯を入れるようになっていて、自分好みの温度で燗する事が出来る奴だ。
これを見たらもう、ジムへなど行く気は失せた。
菊姫の山廃をぬるい燗につけ、雨を見ながら晩酌だ。
肴には里芋とイカを煮た。

明日は休み。
今夜は1人でゆっくり呑もう。

 

 


06/9/某日  温泉へ


逃避だ。
所沢ICから関越に乗り、時速百数十キロで逃げるんだ。
短い時間だけれど、自分のしたい事だけをし、嫌な事は何も考えない。
2泊3日の我侭だ。

   

予報は外れ、カンカン照りの夏日。
高速を下りて夏らしい景色を探しながらウロウロする。
国定忠治で有名な赤城山が行く手に雄姿を見せる。
かつて有料道路だった赤城道路は今は無料となり、良く整備された路面と適度なカーブの続く道は気持ちが良い。
往ってしまったかと思った夏をまだここは留めており、窓を開けてセミの声に溺れながら車を流す。
気温は30度。
白い雲と心地良い空気。
殆ど対向車の無い道を良いペースで走る。


   

頂上付近にある大沼は、カルデラに出来た火山湖でちょっとした観光地になっている。
水が綺麗で、裸足になって入る。
石を投げたり、小さな生き物を探したり。
そして、気付けば捲り上げたズボンはもちろん、パンツまでもが濡れている。
これは綺麗な水を前にした時の、子供の頃から繰り返されている僕のパターンだ。

雲が綺麗で実に気分が良い。
目的地へ向かうにはまだ時間が早い。
午前の数時間、赤城周辺の夏の名残りを楽しんだ。


   

陽が少し西へ傾き始める頃、また走り始める。
通りかかった「ぼくのなつやすみ」のモデルになった月夜野にはコスモスが揺れていた。








   

古い宿。
波打った板ガラス、歩けばきしむ廊下、時間の堆積が建物全体に他に得がたい雰囲気を纏わせている。
千と千尋的雰囲気の湯屋。
八百万の神様が湯を浴びに来るのは、こんな宿なのではないのか。
この宿に限らず、ここは古い名建築が多い。

この静かな温泉街は、たとえば伊香保や箱根とは趣を異にしている。
夜になれば川の音しか聞こえない。
時折の稲光が山の端を青く浮き上がらせるけれど、音はしない。

   

小鍋を突付きながら酒を呑む。
眠くなればうとうととし、目が覚めれば湯へ行き、また本を読む。
その繰り返し。
テレビなど全くつけなかった。
自分の周囲を流れる時間以外、興味など無い。


   

昼は河原の露天。
体がふやけるまで湯に浸かり、腹が減って寿司屋で握りをつまみビールを煽り、そしてまた湯端でゴロゴロとする。
よく此処まで怠惰になれるものと自分を感心する。
そして怠惰になれる自分が嬉しかったりもする。

1人で居る事が本当に好きなんだな、と思う。
こんな事をしながら放浪出来たらな、なんて非現実的な妄想に浸ったりしているうちに、ただ時間だけ過ぎていく。
良い気分だ。




帰る日、今日はドライブを楽しもう。
そのためにチョロQでは無く、主力の車で来たんだ。

高速は使わず、ナビと地図に気持ち良く走れる道を求めウロウロする。
幾つもの峠道を堪能し、草津へ抜けよう。
湯畑を見たり、温泉饅頭を食べたり、街を歩いたりして1時間ほどを過ごす。
草津は大きな温泉街だ。
街には硫黄の匂いが流れ、遊ぶところにも事欠くまい。
でも、僕は泊まりたくは無いな。
少なくとも1人で考え事をする場所では無さそうだ。

草津から嬬恋、長野原へ抜けて軽井沢へ入る。
高原野菜の畑と白樺の林と、その間を抜ける一本道。
浅間山は霧の向こうだけれど、街道際のコスモスが美しい。

2日半山に篭って居ただけなのに、軽井沢の賑やかな街を歩いていて随分久しぶりに下界へ降りた気がする。
整備された街と、そこを歩く綺麗な女性。
若い人たちばかりが目立つのはこうした場所の特色か。
そこを歩く自分もが、なにか早足になっている事に気付く。


   

ふと肉欲を感じ、ある店で大きな肉にかぶりつく。
普段、ほとんど食べない肉が久しぶりにとても美味しく感じる。
焼きたてのパンと、香りの良いコーヒー。
広く新しい店、清潔なテーブルクロス、デッキから見下ろす東京並みの繁華街。
ふと、僕にとってどちらが現実なのだろうかと思う。
先ほどまで寛いでいた山奥の温泉と、この都会と。
僕が本当に生きたい世界はどちらなのだろう。

また、走りはじめる。
軽井沢から県道43号、国道254号、県道45号と抜け下仁田へ出る。
かなりハードな峠道で、両手両足をフルに使い車を走らせる。
朝、宿泊地を出てからすでに200キロ。
その殆どを峠道で過ごし、車をMTで運転する事の楽しさを堪能する。
まだ帰りたくないと思った。
秩父の温泉にでも足を伸ばして見ようかと。

南牧村から塩ノ沢峠、2年前に出来た湯の沢トンネルを抜けると国道299号。
周囲は急速に暗くなりはじめ、車は陰鬱な濃霧と小雨に包まれる。
さっきまでの明るい気分は消え、心細さに包まれる。
ふと計器を見ればガソリン残量の警告灯がオレンジに点き、それが一層に不安感を煽る。
ここは、あの上野村だ。


   

慰霊の園。
ここへMと線香を灯しに来たのはいつの事だったろう。
520人が亡くなった日航機事故の時、新人看護婦だったMは現場に派遣された。
あの惨事とMが見た地獄を思いながら運転していたら、なんだか泣きそうになった。
雨はますます強くなり、視界の悪い山道を走るのにも疲れて来た。
もう、秩父の温泉なんかいいや。
ナビによると、ここからM宅まで60キロ。
もう帰ろう。
土産を届けにM宅へ行き、彼女の顔を見ればまた元気になるだろう。




帰宅後、風呂でさっぱりしてからビールを飲む。
今回の旅行で走った距離は600キロ強。
何事も無く帰ってきたなあ、と安堵する。
そして、あの飛行機に乗っていて帰れなかった人たちの事を思った。

明日からまた、僕の日常がはじまる。
明日の東京も雨の予報。

 

 


 

06/9/8 (金)  温泉に逃避する

   

仕事から帰って24時間ぶりに食事。

分厚い油揚げである新潟の栃尾揚げを焼く。
ブリのカマを塩焼きし、柚子コショウを添える。
スライスしたナスをフライパンで焼き、生姜とネギをのせる。
惣菜売り場で買ってきたコロッケにジャブジャブとソースをかける。

24時間営業のスーパー。
子供の頃には考えられなかったそんなモノが、僕の自宅周辺に2件ある。
深夜でも買い物客の絶えないその店で食材を買う。

惣菜売り場で同年代の男性が秋刀魚の塩焼きとポテトサラダを買っている。
僕はコロッケを一つ取り、釣られて明日の朝食用にとポテトサラダも買い物カゴに入れる。
何となく、互いの人生を感じつつ、でも見ぬふりをしてすれ違う。
深夜23時のスーパー。
一週間の疲れが滓の様に体を重くし、自宅まであと僅か緊張を持続させようと最後の努力をする。
あともう少しで、パンツ一枚でエアコンの風に当たりながら冷えたビールをあおる事が出来る。




何がこれほどに僕を疲れさせたのか解らないけれど、気持ちが飽和してしまい余裕が無い。
ちょっとだけで良い。  
ボンヤリと放心したい。

こんな間近になって、まるで奇跡のように予約を入れる事が出来た。
もう、あとの事なんか知るものか。
僕は月曜まで、1人で山奥の温泉に篭る。

群馬と新潟と長野の県境近く。
僕はあの小ぢんまりとした温泉街が好きなんだ。
そしてあの宿は、最高の日本酒を浴びるほどに飲むことが出来る。
温泉と酒と昼寝。
誰にも邪魔されたくない。

ザックには「剣客商売」と「三国志」を入れた。
どちらも再読だ。
1人温泉に篭るときは、読み古しの本と酒が有れば良い。
どうやら天気は下り坂。
でも、雨の温泉街もいいだろう。
雨粒がくだらない雑音を吸収し、しんと静かな街を見せてくれるだろう。

 

 


 

06/9/7 (木)

早朝に出勤。
朝からすでに疲れている。
黙々と仕事を続けるも、気持ちの奥がささくれ立って居るのが良くわかる。
昼食はとる時間無し。
おやつに「かっぱえびせん」を食べた。

遅い時間に帰宅して、豆腐を食べながら日本酒を一合ほど飲む。
行けば沈滞した気持ちに良い効果が有るのは解っていたのに、スポーツジムへ行く余裕が無い。
どうも良くない。
気持ちに余裕が無く、自宅に居ても寛いだ気分になれない。
自分のペースを取り戻すために、きっかけが必要だ。

少しずつ溜まってきたストレスが気持ちを苛立たせる。
何だか、酷く疲れている。
夏が往ったせいだろうか。

 


 

06/9/6 (水)  雨の日

長く伸びた気圧の谷の影響で雨が降る。
肌寒い1日。
時折激しくなる雨を、東風が窓ガラスに叩きつける。
銀杏の木で、ギンナンが少しずつ色付きはじめている。


   

大粒の雨に萎えて車で出勤。
もう随分前に車通勤を止めてから、職場に僕の駐車スペースは無い。
だから本当は車で出勤してはいけないんだ。
警備員さんに見つからないように、非常口の裏にチョロQを停める。
もう1台の車なら目立ってしまい使えない技だ。

しかし、溜まった仕事を少しでも早く始めようと早朝出勤したのは良いが、セコムの解除が上手く行かず
他の職員が来るのを待つハメになったのだった。

昼食を取る時間は無し。
代わりに事務のおねーさんが哀れんで渡してくれた板チョコを齧りながら仕事。
そんな時に限って資産運用の飛び込み営業やら、マンション売り込みの電話やら。
また名簿でも流失したのかしら。

夜まで殆ど部屋から出ず、黙々と生化学系の測定を続ける。
部屋ではずっとAmazonで買ったPirates of the Caribbean (from US) のCDを聞いていた。
やはり国内版のCCCDに比べ音質が素晴らしい。
簡単にコピーできてしまうCCCDの存在意義はもはや無いのではないか。




仕事帰りにスポーツジムへ行く。
疲れていて運動したい気分では無かったし、仕事も持ち帰ってきている。
でも、走る。
昨日、殆ど運動せずに帰ってきた事に対する意地もあるし、何より少し気分を変えたかった。

1時間半後。
全身の汗をシャワーで流す頃には、さっきまでの重い気分が吹き飛んでいた。
やはり、職場と自宅との間にジムを挟む事は最高の気分転換になるんだ。
気持ちの疲弊に比べ、体の疲労の何と気持ちの良い事か。
汗と共に体中に溜まった毒素が抜けた気がする。
せめてあと1時間遅くまで営業してくれたら。
22時45分には「蛍の光」が流れ出すので、遅く入ったときには焦ってしまう。




しかし、上手くリフレッシュしたつもりでも、帰宅後待っているの持ち帰った仕事。
気に入りの自宅PCも、仕事で使うと全く無味乾燥な機械に過ぎない。
またアタマの奥が痛み出す。
夕飯兼夜食に緑のたぬき食べ、頭痛薬を飲んでまたPCの前に座る。
明日も早くに出勤だ。
少しでも早く眠りたい。

天気は西から回復してきている。
明日の東京は雨のち曇りの予報。
気温も今日より上がるだろう。


 

 

 


 

06/9/5 (火)  不調

月曜夕方頃から何となく不調。
体の不調じゃない。 神経の不調だ。
冷や汗をジトッとかき、上手に呼吸が出来ず、動悸がする。
不安焦燥は何とかコントロールできたけれど、久しぶりに出た症状に落ち込む。

初めてこの症状が出たのが2003年の8月28日。(こういう時、日記って便利だ)
どんな病気でもそうだろうけど、まさか自分が罹患するなんて思ってもみなかった。
仕事上よく接するこの病気だけれど、自分が経験してみて初めてその辛さが解った。

あの日以来、僕は性格まで変わってしまった気がする。
今では服薬もしていないし、軽い症状が出ても発作という程じゃない。
でも、電車には乗れないし(乗らないだけだけど)、人混みを避けるのは相変わらず。
人付き合いも最小限になっているし、毎年のように行っていた海外旅行もあの年が最後だ。

この病気は治らないのかな。
うまく共存して行くしかないのかな。
解っていても、忘れた頃にひょっこり顔を出す症状に戸惑う。
もっと強くなりたい。

夜、うまく眠れそうになくてPCを玩ぶ。
こんなページで、その頃の自分は何をしていたか思い出して見たり、
iTunesで70-80年代の音楽を落として見たり。

思い出と妄想の中でなら、幾らでも時間を過ごす事ができる。
そして、そんな行為に浸っていると気持ちが落ち着いていくのが良く解る。
子供時代の記憶に逃げ込むのは甘美な誘惑だ。
僕は、現在の自分を直視する事の出来ない落ちこぼれなのだろうか。


   

深夜、空腹を自覚し、15時間程何も食べていないことに気付く。
Mがくれた梨が机の上に転がっているのを見て、皮も剥かずにかぶりついた。
美味い。
いつもMが傍に居てくれる事の有り難さが身に沁みる。

毎年決まって夏になるとプレーしたくなるゲーム、「ぼくのなつやすみ」を終える。
昭和50年の北関東の里山を舞台に、都会からやってきた小学校3年生の「ぼく」が夏休みを自由に過ごすゲームだ。
昭和50年に小3。 僕と同じ歳じゃないか。
エンディングで泣いたあと、ふと現実に戻ると夜が明けようとしていた。
低い雲がオレンジに光り、僕の気配を察した犬がさぁ散歩に行こうと腰を上げる。
会議に忙殺される火曜日がはじまる。



永遠に続くかと思われる会議。
エライ人へのアピールか、空調が切られた不快な部屋に長時間拘束されるのは苦痛としか言いようが無い。
先日読んだ某人の日記に、会議中「早く終われ!早く終われ!」と気を送ったと書いてあって、それを真似て見たけれど
予定を1時間半オーバー。
殆ど中身の無い会議が4つ重なり、改めてアチコチの委員に名を連ねてしまった自分の軽率を呪う。
仕事を頼まれると断れず、そのしわ寄せがストレスとなる。
解ってはいるのだけれど、社会に出てから14年の間に身についたスタイルは変わらない。

朝は食べずに出勤。
昼は食べる時間無し。 おやつに頂き物の青蜜柑を一つ。

資料整理と溜まった書類処理と議事録作りに飽いて職場をでる。
一日中吐き気がするほど働いたけれど、自分専門分野の仕事は何一つ出来ていない。
砂漠に水を撒くような一日。

仕事帰りにスポーツジムへ寄りマシンに立つもやる気が失せ、サウナとマッサージだけで帰宅。
うな垂れて帰宅。
暑かったのか、晴れていたのか、そんな事も良く解らない一日が往く。

寝る前に少しだけ酒を呑む。
肴は頂き物の上等な焼き海苔。
明日は今日より更に困難な一日になりそうな予感。

 

 

 


 

06/9/3 (日)  芋づるを食べる


気持ちの良い初秋の日曜日。
雲の綺麗な一日。

日本の南東には、8月27日に日付変更線を越えてハリケーンから台風12号へ変わった大きな渦巻。
去年、アメリカ南部に壊滅的な被害をもたらした「カトリーナ」級だとか、
南鳥島に駐在する自衛隊、気象庁、海保の40人が飛行艇で1000キロ離れた硫黄島へ避難したとか、
そんなニュースを目を丸くして読む。
そしてその巨大な渦は一直線に関東へ来るかと思われた。
いくら台風が好きだと言っても「カトリーナ」級はチト困る。
来るな来るなと念を送ったのが良かったか、12号は北へ進路を変えつつあるようだ。

大根の種を蒔く予定だったのだけれど、種蒔き直後に台風のもたらす雨で流されたのでは堪らない。
少し遅くなってしまうけれど、今日の種蒔きは中止。
雑草取りとサツマイモのツル返しをする。
このツル返しという作業をしないと、ツルの途中から出る根に小さな芋が出来てしまい、本来の芋が痩せてしまうんだ。
汗をかきながら畝三本分のツルを返す。

作業後ボンヤリ畑を見ていて、昔、祖母が戦争中に食べるものが無くサツマイモのツルを食べたと言っていたのを思い出す。
食べられるのかな。
どんな味がするのかな。
興味がわいて50本ほどの葉柄を摘んでみた。
帰り際、隣の畑のおじいさんにもらったユウガオの実と共にチョロQに積み込んで帰宅。
早速キッチンに立つ。

   

「トウガンは知っているけれど、ユウガオの実というのは初めて。 ずっしり重い大きな実」




サツマイモのツルの皮剥きは、永遠に続くかとも思われる忍耐の要る作業だ。
フキより薄い皮は剥きにくく、爪がアクで黒く染まる。
根気よく、剥き残しの無いよう一本一本丁寧に。
60数年前、祖母も同じ作業をしていただろうか。
調味料も乏しかったろうその時代、どのような味付けをしたのだろう。
そんな事を思いながら単調な作業に没頭する。

   

やがて、油揚げと共に砂糖と醤油でやや濃い味をつけた芋づるの炒め煮が完成。
思ったよりも美味しいじゃない。
癖の無いフキのような味だ。
早速、昭和9年生まれの父の所へ運ぶと、こんなモノを事の他喜んでくれて懐かしいと言いながら食べていた。
食べ物に興味の無い父が珍しく美味しいと笑っている。
そして、そんな父がとても年老いて見えた。

ユウガオは鶏ひき肉と共にうす味で煮てサッと生姜汁をかけ、片栗であんかけにして冷蔵庫に安置。
夜の肴はこれで完成だ。



午後は幼馴染と近所を徘徊。
2人ともビーサンと半パン、タンクトップの出で立ち。
何がきっかけだったか、以前アメリカのヨセミテでキャンプした時の話しになり盛り上がる。
あの時は(大抵、いつもそうである様に)僕が喘息の発作を起こし大騒ぎになったっけ。
あの時の恐ろしい程綺麗な星空を、今でもよく覚えている。
そんな話を、煙草屋の軒先でする。
道端にペタンと座り飲むサイダーが美味い。

気温は31度。
暑いけれど、暑さの種類が夏のそれとはハッキリと変化している。
風が気持ち良いな。

セミに代わって鳴く虫の主役はエンマコオロギだ
良い夏だったけれど、今年の夏は短かったな。





   

夜は芋づる炒め煮、夕顔冷やし餡かけ(よく冷えていて美味)、厚揚げ焼きと鮪の赤身を少し。
ビールはエールを一杯。
酒は吟醸の「綿屋」

明日はMと昼寝の予定。
良い天気で気温も上がる一日になりそうだ。