老犬の夏対策 (どこでもクーラーの設置)2019年07月27日

納戸と言うか倉庫と言うか、自宅にそんな小部屋がある。
もともと家を建てる時、趣味の畑道具を置こうと作った部屋だ。
家の中からも外からも出入りでき、広さは2畳強。
床はベタ基礎のコンクリで、壁は構造用合板のまま。

畑道具用の物置を裏に建ててたから、今そこはワンコの部屋として使っている。
彼女はそこが大の気に入りで、散歩から帰ると走ってその部屋に入る。
静かだし、きっと落ち着くんだろう。

先日の「特発性前庭疾患」の症状もほぼ収まり、すっかり元気になったワンコ。
外で過ごす事が多かった柴犬ゆえ、今まで暑さ対策をしていなかった。
しかし15歳の病み上がりに、この暑さは辛かろう。
夏を乗り切ってもらうため、何が出来るか考えよう。
獣医師と相談の上、夏の暑さ対策をしようという事になった。

まず、エアコンの有る他の部屋に入れて一日様子を見てみた。
しかし、落ち着かずオロオロするばかり。
やっぱり適度に狭い自分の部屋が良いのかな、と思う。

でもあの納戸には、エアコンの専用コンセントが無い。
エアコン配線はヒューズボックスから直曳きする必要があり、大工事になりそう。
壁のコンセントを使える窓用エアコンも有るけれど、納戸に扉はあるけれど窓が無い。
スポットエアコンという手も有るが、大きすぎるし使い勝手が良くなさそう。

さてどうするか、と思った時に見つけたのがこれ。

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「どこでもクーラー」というこの製品は、水の気化熱を使う冷風扇とは異なり、
コンプレッサと冷媒を使った一体式エアコンのような除湿器だ。

買ったものは仕事量の大きな方で、24時間に最大14リットルの除湿が可能だとの事。
そして前面からは乾いた冷風を、背面からはこれも乾いた温風を吐き出す。
その冷風をスポットクーラー的に、温風を衣類や押し入れの乾燥用として使うことが出来る。
冷房能力としては1Kw程度のコレで、2畳のワンコ部屋を冷やせるだろうか。

様々な理由からエアコン設置のできない部屋で、
この製品を使った冷房を試みている人達がその苦闘ぶりをネットに上げている。
そのほとんどは、コイツで部屋を冷やすのは無理、という結論になっていた。
1Kwという能力の低さと排熱により、むしろ室温が上がってしまうというのだ。

でも、ウチのワンコ部屋はたったの2畳。
壁の中には断熱材がたくさん入っているし、家の北側で直射日光もささない。
何より重要な排熱は、ワンコ部屋の隣室へ出すことにした。
そこは脱衣所で、その先は風呂。
そこが多少暑くなっても、乾燥した温風は浴室のカビ防止に役立つかもしれないし。


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で、こんな感じにしてみた。

ここは脱衣所で、扉の向こうが2畳のワンコ部屋。
「どこでもクーラー」はワンコ部屋内にむこう向きに置いた。
背面の排熱ダクト部に合わせて穴をあけた断熱ボードを設置。
使用するときだけ、こうして少し扉を開ける。

排熱ダクトからは35度、湿度30%ほどの風が出てくる。
反対にワンコ部屋には謳い文句では室温より11度低い冷風が出る。
運転を始めると、ワンコ部屋の湿度がみるみる下がってゆく。
そして徐々に温度も下がり始めた。

ワンコ部屋にはネットワークカメラが置いてあって、温湿度計と共にワンコを映す。
今日、昼間の気温は33度。 高温多湿でクラクラするほどだ。
そんな時、外出先からワンコ部屋の映像を見ると温度25度湿度50パーセント。
涼しい部屋でスヤスヤ眠るワンコを見て、コレを買って良かったと思った。
この気温で弱運転でこれだけの温湿度を保てるのなら、酷暑も乗り切れるだろう。

あとは出先から機器の操作が出来れば更に良い。
Amazonアレクサとスマートコンセントで出先からオンオフが出来るか試してみようか。
スマホからそれが出来れば、何だかやっぱり安心だし。



ワンコの記録 発病三日目以降ー22019年07月22日

7月21日(日)
眼振および首振りはほぼ収まったようだ。
ケージの掃除をしているあいだ庭に出すと、自発排尿、排便。
排便は5日ぶり。
鶏ささみとチュールを混ぜたものをピンポン玉二つ分ほど摂取。
往診は無し。
先日購入した薬剤類は三日分。
その最後の一セットを注射および輸液。

夜、ささみとチュールを少量摂取。
水はまだ飲まない。




7月22日(月)
眼振、首振りに加え斜頸も収まりつつある。
朝、庭で排尿、排便。
試しにリードを付けてみると歩きたそうな素振り。
家から200メートルほどの気に入りの公園まで往復。
酔っぱらいのようにフラフラしながら、でも尻尾を振って楽しそう。
(写真はその時の様子)
しかし約一週間ぶりの散歩なので無理はせず、早々に帰宅。

体重7.1キロ。 発症前は7.6キロ。
まだ元気はないが、目の焦点も合い表情も出てきた。
昨日からの回復、かなり大きい。

ささみとチュールを混ぜたもの、手のひら一杯ほど摂取。
水、少量だが器から摂取。
このまま、治癒に向かうか?
水、餌共に量はまだ少ないが、それでも摂取は可能な様子。
夜は4日ぶりの往診予定。
治療を終了し体力の回復を図るか、もうしばらく投薬を続けるか相談のつもり。

19時追記。
往診終わり。
かなり順調に回復している。
抗生剤終了。 
吐き気止めとステロイドは注射から服薬へ変更。
8日分出すが、土曜日辺りに電話で状態説明。
場合によっては、その日で服薬終了とのこと。

体力、食欲ともに回復までは時間がかかるが焦らないこと。
補水量が少ないので、粥等食物からの水分摂取を考えること。
どうしても脱水しそうなら、輸液すること。

夜、ホッとしながらささみとキャベツ入りの粥を炊く。
まだ油断はできないけれど、何とか乗り切れそう。
またきっと、以前のように元気になれる。
そう信じて、粥を炊く。


ワンコの記録 発病三日目以降2019年07月22日

7月18日(木)
相変わらずの斜頸、流涎、眼振。
しかし嘔吐は無く、傾眠状態も脱したようだ。
起きているときは頭を起こしているが、左右に振れるため気分が悪そう。
ケージ内のトイレシート上に排尿あり。

13時半、往診。
昨日の採血結果で低アルブミン血症を問題視される。
それは今回の件とは別で、アルブミン生合成経路に障害が有る可能性ありと。
しかし、それを検索することに意味はない。
たとえ肝臓に何かが有るとしても、この年齢で手術は出来ないから。
今回の検査はエコー。
治療はステロイド、抗生剤、吐き気止めの注射。
そして脱水対策の輸液を200ミリリットル。

飲食しなくなって48時間。
補水は輸液でしているが、出来れば少し食べてもらいたい。
体重7.3キロ。 健康時より0.3キロ減。


7月19日(金)
目覚めている時間が増えた。 が、起き上がることはせずただ目を開けているだけ。
その体勢で排尿するので、体が汚れてしまう。
清拭するために抱き上げると、悶える仕草。
やはりまだ眩暈の症状が強いようだ。
しかし、眼振は弱くなってきている。

シリンジで口中に水を入れるも、飲まず。
往診は無く、代わりに僕が処置をする。
ステロイド、抗生剤、吐き気止めの注射。 そして輸液を200ミリリットル。


7月20日(土)
眼振更に軽減。
しかし斜頸、首振りは相変わらず。
ケージの掃除中、庭に出すと自力で排尿。
ふら付きながらも10メートルほど歩く。
鶏ささみとチュールを混ぜたものを差し出してみるも、飲食拒否。
往診は無し。 代わりに僕が処置。
ステロイド、抗生剤、吐き気止めの注射。
輸液を200ミリリットル。

夜で発症後4日。
早ければ三日ほどで改善すると言われていたが、まだそれは感じず。
飲水拒否が気になる。
輸液を200ミリリットルしているが、それでは水分量が足りない。
しかし、あまり輸液をしても低アルブミンが進行し腹水となってしまう。
どうするか。



ワンコの記録 発病二日目2019年07月22日

7月17日(水)
本当にこのまま看取りで良いのか。
看取るとしても、せめて専門家の意見を聞くべきでは、と迷う。
ネットで検索すると、往診専門の獣医さんを見つけた。
朝、電話をすると来てくれると言う。
どうしても仕事は休めぬ。 でも昼で帰ってこよう。
14時に往診予約。

そしてMと決めたのは以下のこと。
年齢を考え外科手術を含め過度の治療はしない。
自分の部屋とケージを愛してやまない犬を入院はさせない。
他人に触られることの嫌いな犬をなるべくなら自分たちで診る。
治療の効果が無い場合、延命はしない。

14時、車に機材を満載して獣医さん到着。
飼い主への問診、犬の触診、外耳視診、採血、エコーその他。
犬はほとんど反応も無く、ただされるがまま。

最も考えられる病名は「特発性前庭疾患」
老犬、特に柴犬に多いとのことで、それはまさにこの犬の事だ。
原因不明で平衡感覚を司る部分に障害が起き、強い眩暈を起こすもの。
この時はじめて、犬が激しく眼振していることに気づく。

斜頸、流涎、嘔吐、失禁あり。
つまり目が回って酔っている状態だけれど、症状はとても強いという。
本来ならMRIなど脳の検査が必要だが、それはしなかった。
だってもし脳に何かが見つかっても、この歳では手術に耐えられると思えないもの。

昨日より飲食していない。
食物は数日採らなくても良いけれど、脱水は命を奪う。
当面、補水のための輸液が必要。
そして大量のステロイド、抗生剤、吐き気止めの注射。

また明日の往診を予約。
犬の様子は昨日より変化なし。
起き上がるどころか、ほとんど動くことも出来ない。
しかし、このまま逝ってしまうと思っていた昨日とは違い希望が見えた。
特発性前庭疾患なら、数日で良くなることも有ると言う。

症状が治まるのが早いか、衰弱して死んでしまうのが早いか。
何とか乗り切ってもらいたい。




ワンコの記録 発病初日2019年07月22日

ここ数日の間に、僕のワンコに起きたことを書き留めておく。

7月16日(火) 
いつもより早い時間に帰宅。 
散歩をせがむ犬の声から、オシッコを我慢している事を察する。
庭で用足し。 その後、リードを付けいつものコースを歩く。
老犬ゆえに走ることは珍しくなったが、今日はやけにハイで走り回る。
こちらもそれが嬉しく、一緒になって遊んだ。

自宅から数百メートルの辺りで、犬が急にふらつきはじめる。
やがて植え込みにへたり込み、歩行不可に。
抱きあげると力なく、だらりと首を下げている。
自宅まで抱いて帰りケージに入れて落ち着かせるも、流涎、嘔吐、失禁。
全く起き上がれずもがくのみ。

人の歳で90歳近い柴犬。
ずっと見て頂いていた獣医さんの急逝により、主治医を持たないままこの日まできた。
いつの間にか傾眠状態となった犬を、Mと二人で見守る。
この時点でお別れを覚悟していた。
そして、老犬と一緒になって走りまわった1時間前の自分を激しく責めた。
僕が無理をさせたから、きっと脳か心臓に負担を掛けたのだ、と。

夜、ケージの横で過ごした。
涙が止まらない。
そのまま朝になる。

新しいPCのこと2019年07月11日

テレビで、関東地方の記録的な日照不足を伝えていた。
東京では6月下旬からの日照時間は平年の僅か一割。
ここ10日間では4時間弱しか陽が射していないという。
その影響で夏野菜が高騰し、キュウリに至っては2倍近くの値上がりだとのこと。

僕の畑を見てもそれを実感する。
陽射しが無く雨ばかり降るものだから、野菜苗はどれもヒョロヒョロ。
その上、この低温続きだ。
トマトには病気が出たし、キュウリもナスも陽射しが無ければ育たない。
カビ系の病気の蔓延と、細く曲がった実と。

梅雨明けが早いか、野菜が音を上げるのが早いか。
平年の梅雨明けまであと10日ほど。
6月中に梅雨が明けた猛暑の去年も参ったけれど、
今年のこの気候も夏野菜たちには辛かろう。
嗚呼、真夏の太陽が恋しい。

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数年前、展示されていたMicrosoft Surfaceに一目ぼれ。
マグネシウムの筐体、フルHD液晶、取り外せるキーボード。
良く調べもせず衝動買いしたのが真ん中のSurface2だ。

OSはWindowsRTで、その使い勝手の悪さからすぐに姿を消したアレ。
既存のWindowsアプリは使えない。
互換性も無い。
ソフトはWindowsストアから入手しなければならない。
それも欲しいソフトが全くない。

そんな鬼っ子のようなSurface2RT
それでもハードの出来の良さやカッコ良さもあり数年間使って来た。
自宅ではデスクトップを使うけれど、出先にもPCを持ち込みたい。
そんな時に、カッコいいSurface。
そしてSurfaceに出来ない事のため、もう一台大きく重いノートを車に積んでいた。
その日の用途により、どちらを使うか。
そんなバカなことをしていたこの数年間。

ようやくそれを一台にまとめた。
ネットに繋がりofficeが使え、あとはいくつかの専門ソフトが動けばいい。
たったそれだけなら、安物のノートPCで充分なんだ。
何で今まで、二台持ちなんてしていたんだろう。
そして新顔の何と軽く小さなことよ。

僕にはこういう事が多い。
腰痛持ちなのに、前傾姿勢の強いクロスバイクに乗っていたり、
付き合いで専門外の研究会の世話役をやったり、
自宅の畑を鍬で耕し続けたり。
自転車は電動ママチャリに乗り換え、研究会は辞め、
自宅の畑用に電動耕運機を買った。
そうしてみると、なんと楽な事か。
もうとうに50も過ぎたのだ。
楽に生きる事を選んでいこう。



朝顔2019年07月03日

いつの間にか7月がやって来て、今年も後半。
それは日照不足と多湿と雨の毎日。
ただ一点、鮮やかな色を見せる夏の花。
今年も朝顔が咲きはじめた。

西洋朝顔を育てた年も有ったけれど、やはり僕はこんな普通のヤツが良い。
観察日記を書いたり、色水を作ったり、押し花にしたり。
この花に思い出は多い。


明け方、祖母の夢を見た。
17年前に逝った祖母の夢を見るのは本当に久しぶり。

夢の中で祖母は何故か静岡の施設に入所することになっていた。
それを車で送ることになったのだけれど、何かが有って約束の時間に帰れない。
それを祖母に伝えたいのに、携帯電話を壊してしまい連絡のすべがない。
これが最後の別れになるかもしれないから、何としてでも家に帰りたい。
でも、どうやってもそれが出来ずとても苦しんでいる。
そんな場面で目が覚めた。

あの夢は何だったんだろう。
自分が作り出した局面に苦悶して、汗をかいて目が覚めるなんて。
いったいどんな精神状態が、そんな夢を生むのか。
祖母が逝く時、僕は自分の病気で手術を翌日に控え入院していた。
それを今でも申し訳なく思っているのは事実だけれど。

僕は祖母と、祖母の住んでいた家が好きだった。
そう言えば祖母の家でも夏になると朝顔棚が作られていたっけ。



今朝の収穫と犬と2019年06月26日

関東の梅雨入りはほぼ平年並みの6月7日だった。
そして梅雨明け平均は7月21日。
まだ先は長い。
でも去年の梅雨明けは6月29日。
それもまた困るだろう。
ふる時には降って、その時が来たらサッと夏よ来い。

今日は梅雨の晴れ間。
それなのに老犬が朝の散歩を拒む。
体調に波が有るのか、ただ億劫なだけなのか。
以前は朝夕と一回2キロ歩いたものだけど、この頃では歩いても数百メートル。
そして今朝のように散歩を拒むことも有る。

どうせ僕の出勤時間までは庭で自由にさせているんだ。
無理に外に出る事も無いだろう。
庭の隅でオシッコをして、朝日の中で居眠りをはじめたようだ。
僕はそれを見ながら、朝の収穫作業。
リーフレタスやルックラ、プチトマトや春菊、ナスを三本。
この時期、野菜は殆ど買う事が無い。


いつの間にか寄って来た犬。
僕と収穫篭の間に分け入って、採った野菜の匂いを嗅いでいる。
小さなキュウリを一本折ってあげたら、ポリポリと良い音をさせて食べ始めた。
子犬の頃からキュウリが好物だった。

あれから長い時間が経って、コイツもすっかり老いてしまった。
目も耳も悪くなり眠ってばかりいる。
遠くない将来、僕の元から居なくなってしまうだろう。
でも先のことを考えるのは止そう。
今、この犬とこうして畑で遊べる事が嬉しい。





もう少し雨が欲しい2019年06月19日



雲の多い日。
東京は梅雨入り直後にドカッと降って、でもそれ以降の雨量はどうなんだろう。
庭の畑は乾いてしまい、毎夕の水まきが必要だ。
雨季にはそれなりの恵みが欲しい。
そろそろまた、雨よ降れ。

地上は雨季でも天上の季節は間もなく黄経90度で、夏至。
今、東京の昼時間は14時間35分で年間を通し最も長い。
それは来週末にはまた短くなりはじめ、年末の冬至に向けて一直線に痩せてゆく。
梅雨明けを前に、空の上では冬へ向けて季節が動き始める。
毎年その繰り返しだ。

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ネットバンクの入出金記録を眺めると、大きな支払いが続いている。
2月末に所得税を払ったのに続き、固定資産税、自動車税、住民税。
そして今度は予定納税だ。
いちいちその金額が大きいものだから、こうして記録を眺めるとウンザリしてしまう。

どんなに頑張って働いても生活は決して楽にならない。
今思っても、ずっと昔の学生時代の方がよほど贅沢をしていた気がする。
まああの頃はバブルの絶頂期でお祭り騒ぎだったのだけど。


仕事は小さな山を一つ越した。
今日明日の進捗次第で、金曜は休めるかもしれない。
神経生理関係の研修を止めたので楽になったのだ。
今年になってから研究会、研修会、学会の類を断り続けている。
今までが手を広げ過ぎていたんだ。




濃霧の五合目2019年06月14日

梅雨の晴れ間。
久しぶりに陽射しを浴びたくて、Mとドライブへ出かけた。
こんな日は屋根を開けたロドスタが最高に気持ちいい。
真夏のような雲と緑の濃い山。
湿度は低く爽快だ。


山梨・三国山近く。
ここは山中湖と富士山を見渡す眺望ポイントだ。
今日もカメラを持った人が何人もいて、皆一様に富士山を撮っている。
でも、ちょうどその方向にだけ帯状の雲。
冬場でもない限り、富士に来るといつもこんな風景となる。
湿った海風が雲を作り山体を隠してしまうんだ。

今日、その雲はちょうど富士の五合目辺りを漂っている。
五合目までなら簡単だ。
ちょっと行ってみようか。


急登で有名な富士アザミラインを10キロも登れば、富士須走口五合目。
途中から出てきた霧は、標高2000m近くでは徐行を必要とするほど濃くなった。
ロドスタの周囲に何台もの駐車車両が有るのに、はっきりとは見えない。
まるで雲の中にいるよう、と言うかまさに雲の中に居るのだ。

視界はせいぜい20m。
気温9度。
霧が音を吸収するのか、とても静かで不思議な空間。


須走口から20分ほど歩くと、小富士と呼ばれる側火口がある。
その辺まで行ってみよう、と歩き始めたけれどすぐに断念した。
あまりに霧が濃く、空間識失調でも起こしかねなかったから。
こんな中で迷ったら、違う世界に行ってしまいそうだ。

ふと、斜面の上に何かの気配を感じた。
何か大きな生き物がすぐ近くにいる。
鹿だ。
僕らは勿論、向こうもきっと驚いて体が固まってしまったんだろう。
霧の向こうから、僕らをじっと見つめて動かない。
立派な角の雄と雌。
山歩きをするなら見慣れたはずの鹿だけれど、
今日は何か違う、もっと神秘的な存在に思えた。
それも霧のせいだろうか。