菊の節句2019年09月09日

台風15号は960hPaの勢力で東京湾を抜け千葉に上陸した。
それは関東に上陸した台風として統計開始以来、最強クラスだという。
風速57メートル、広範の停電、1時間雨量110ミリ。
NHKが伝えるそんなニュースを聞いていたら眠れなくなってしまった。

窓を叩く豪雨。
暴風の恐ろしい音。
オロオロする犬。
巨大な空気の塊が家にぶつかり、二階家が身震いする。
ようやく空が白んできたときの安堵。
長い夜を越えてむかえた夜明けのうれしさ。

出勤を控えなんとなく暦を見たら、今日は9月9日。
菊の節句だ。
この日のことは忘れない。
親父が倒れた日だ。

あの日、出勤する僕に親父が何かを話しかけてきた。
きっと、立ち枯れたユズリハのことだと思った。
親父が子供の頃からそこに在ったユズリハの大木が枯れたのだ。
そのことを、親父はずっと気にしていたんだ。
でも時間の無かった僕は生返事で仕事に行った。
そしてその日の昼過ぎ親父は倒れ、目を覚まさないままに逝ってしまった。

あの日からすべてが変わった。
相続のゴタゴタとか、実家を失くしたこととか。
母の発病、介護、そして看取り。
ようやく少し落ち着いたころに、枯死したユズリハの樹を倒した。

こどもたちよ、これはゆずりはの木です
このゆずりはは新しい葉ができると
入れ代わって古い葉が落ちてしまうのです
こんなに厚い葉こんなに大きい葉でも
新しい葉ができると無造作に落ちる
新しい葉にいのちを譲って

国語の教科書に出ていた「ゆずりは」という詩を思い出す。
譲ってもらったものを大切にしないと、と思う。
親父が倒れた菊の節句のあの日から11年経った。