犬のこと2017年10月02日

夜中に何度か犬に起こされ、眠たい朝。
悲鳴のような声に驚きケージを見に行くと、遊ぼう遊ぼうと跳ねている。
すこしの間、抱いてやる。
以前と違い朝までグッスリ眠ることなく、ゴソゴソと何かをしている事が多い。
夜鳴きをすることも多い。

しばらく前から、日常の行動に変化が出て来た。
自宅のインターフォンがなっても鳴かない。
誰も居ないのに鳴く。
呼んでもすぐに反応しない。
散歩中に転ぶ。
そしていつも腹を壊している。

獣医さんの意見では、それは老化の影響だという。
痴呆と言っても間違いではない、という。
優しくしてあげて下さい、と。

僕の犬と言っても、僕一人で育ててきたんじゃない。
僕が仕事に行っている間は実家の母に預け、昼中二人で遊んでいたんだ。
もっと以前はそこに父も居た。
庭を自由に走り、ボールを投げてもらい、オヤツを出してもらい楽しく暮らしていた。
犬好きの両親と人好きな犬とは、とても仲が良かった。
僕の犬は家族みんなで育ててきたんだ。

やがて父が居なくなり、母も居なくなった。
僕は兄の住む実家には行かなくなった。
そして僕の犬は昼間を一人、ケージの中で過ごす様になった。
あれから3年。
犬の時間では12年以上、その暮らしをしている。
休みに日には庭に出し、平日も朝夜二回の散歩を欠かさない。
でも、犬の生活は以前と大きく変わってしまった。

僕の生活だって変ってしまったんだ。 
だから我慢しろよ、と思っていた。
でも、彼女にとって晩年期のこの3年は幸せだったか。
精一杯世話をしているけれど、夜鳴きをしながら昔を思い出しているんじゃないか。
そんな気がしてならない。

衰えてきた僕の犬。
いつまで一緒に居てくれるだろう。
昼間、職場からネットワークカメラで犬を見る。
一人で留守番する犬の仕草が愛しい。
そしてやっぱり歳取ったなあ、と思う。
いつの間にか僕を追い越し、人の歳でもう80歳ちかいんだから。



暦を見て一日をはじめる2017年10月04日



東京の日の出は5時38分。 
日没は17時21分。 
あと数日で「寒露」がやって来る。
そんな暦を見て一日をはじめる。

今夜は中秋の名月か。
どこかにススキが穂でも出していないだろうか。
など思いながら犬との散歩。
そしてススキの代わりにホトトギスの花を見つけた。
あの地味な花が祖母は好きだったな、と思い出す。

出勤は6時半。
12時間働いて19時帰宅。
また犬と散歩。
夕飯にカレーを仕込み冷凍ナンを出しサラダを作る。

幼馴染から着電。
奥さんがお店をはじめる事になったとのこと。
各種ローンを抱え、子供はまだ幼稚園で、本人だって決して健康じゃない。
そして奥さんが起業か。
何だか不安しかない。
僕が言う事じゃないけれど。
だいたい、セレクトショップって何なんだ。

Mの帰宅は21時半。
風呂、晩飯、少しの酒。
寝たきりになった母が、体を清拭してくれるMに言ったことを良く覚えている。
貴女が私の娘だったら、私が元気だったら、
ご飯を作りお風呂の準備をし、洗濯して掃除して貴方の帰りをいつも待つのに。
仕事で疲れて帰ったら、もう何もしなくて良いようにするのに。
母の代わりに、今はそれを僕がしている。
出来ることはそれほどないけれど。










奥多摩のこと2017年10月05日

Mと奥多摩へ遊びに行く。
東京のバイク乗りだったら、きっと奥多摩に特別な思いが有るだろう。
キツイ高低差とカーブの連続で、そこは聖地を言われたからだ。

僕らも共にバイク乗りだった。
だから奥多摩は今でも大好きな場所だ。
もうバイクに乗らなくなった僕らは、車で流す。
車で来たって、もちろんここは面白い。


そして僕にとっては、もう一つ思い出の地でもある。
ここで大きな事故を起こし、腕に障害を残したからだ。
看板に「けがをすると病院収容まで2時間かかる」とある。
いや、僕の場合は4時間くらい掛かったな。

あの峠道は、今ではとても静かになっていた。
見かけたバイクも数台でツーリングするハーレーと単騎のオフ車のみ。
2stのレプリカで溢れていたあの頃とは違う場所のように思える。


峠道を駆け上がって、上は気温8度。
遠望できる山並みではすでに紅葉が始まっている。
買ってきたコーヒーも冷めてしまった。
少し歩いたら、下界に降りよう。


温かいご飯が食べたい。
ここに来るとたまに寄る「奥多摩釜飯」へ行く。
すべて自家製の野菜で作られた料理は滋味そのもの。
釜飯セットには水炊きも付いてくる。
ただし肉っけの殆どない精進料理のようなものだから、
それを望むなら少し離れた「なかい」の方が良い。


蔵元で酒を買い、少し川で遊んでから帰宅。
東へ帰る僕らの目前に、満月をまわったばかりの月が昇った。

秩父の龍勢祭りを見に行った2017年10月08日

秩父・椋神社の「龍勢祭り」
かねてから見たいと思っていたその祭りに行って来た。

龍勢とは、手作りロケットの事。
起源は元寇にあるとか戦国時代の狼煙にあるとか言われ、
神社には400年以上前にこれを打ち上げたとの記録も有るという。
27の流派があり、その完成を競うが龍勢祭りだ。


アニメとかドラマで取り上げられたこともあり、混むと聞いた。
Mを起こしたのが午前4時前。
高速と有料道路を乗り継いで、現地入りしたのが6時半だった。

祭りまでまだ2時間以上ある。
少し近所を散歩した。
椋神社で見つけた狛犬は可愛い狼。
秩父には狼信仰があり、狼を奉る神社もある。


龍勢の飛翔体断面模型。
この飛翔体に竹製の本体と各種飾り(背負い物)を取り付ける。
その背負い物が上空でいかに綺麗に展開するかも見所。

各流派の人たちは10月第二日曜の祭りに向けて、膨大な時間を製作にあてる。
ご老人から子供まで参加するそうで、そういう経験のない僕はとても羨ましく思った。


幟の向こうに山。
秩父は山脈に囲まれた盆地。
だから昔からの文化風俗が残っているのか。
僕の大好きな場所で、今まで何度訪れたか解らないほどだ。


櫓の上で流派の紹介と、口上が述べられる。
これがもうカッコ良くって、惚れ惚れしてしまう。
口上が最後 「椋神社の大前にご奉納ー」 としめれば、いよいよ発射だ。


櫓の高さは20メートルほど。
独特の噴射音と凄い勢いで、龍勢が発射される。
手製ロケットだから失敗することもあり、この場で爆発することもある。
だから、この瞬間は大盛り上がり。

そして高度300メートル以上まで一気に昇ってゆく。
その白煙は龍そのもの。



実はこのお祭り、10年前に事故があったのだ。
発射に失敗した龍勢が客席に飛び込み、怪我人が出た。
それ以来、櫓と客席の間の安全地帯の拡大や防護柵の設置などがされた。
それは仕方がないけれど、防護柵がどうしても邪魔で。

だから写真は櫓から離れた場所から望遠で撮った。
でもやがて、写真なんかより自分の体で感じた方が良いことに気付く。
そしてカメラなんか仕舞ってしまい、なるべく櫓に近づいた。
お祭りだもの。 その渦中に居たい。


青い空に白い煙。
とても美しい光景で、きっといつまでも記憶に残ると思う。


そして背負い物がパッと開き、ゆらゆらと落ちてくる。
あー、これがずっと見たかったんだ。
とても日差しの強い日だったけれど、ずっと見ていた。

10万人が集まると聞いて、渋滞や混雑が苦手な僕は来る事を躊躇した。
でも今日はここに来て、本当に良かった。


秩父名物、ワラジカツ丼を食べて帰宅。
シャワーを浴びたら声を上げるほど湯が滲みた。
僕もMも、すっかり日焼けしていたのだ。

今回は初めてで勝手が解らずウロウロするばかり。
またいつか、今度は有料の席を買ってゆっくり見よう。
そういえば地元の人たちはバーベキューなんかしながら楽しんでいたな。
お祭りはお祭り騒ぎしながら見るのが良いのかもしれない。


色は匂へど散りぬるを2017年10月12日



金木犀の花が散り始め、舗道を染める。
綺麗だから掃かないで、もう少しこのままにしようかなとも思う。
毎年、そんな事を考えながら家の前を掃除する。
そしてまた一年が過ぎたことに気付き、少し寂しい気持ちになる。

この一年間、僕は何をしただろうか。
あるいは、何をしなかっただろうか。
明日からは連日雨の予報。
この花もそれで散り果て、季節がまた一気に進む。

日々、一生懸命に生きなければな、と思う。
それでも流されてゆく時間の早さを怖く感じる。
いったい、季節はいつからこんなに早く往くようになったんだ?




老犬介護2017年10月14日



連日の雨。
東京の日の出は5時46分。
日没は17時8分。
夜明けの頃14度だった気温は、昼になってもほとんど上がらず。
秋雨前線は停滞し、この先一週間はこんな天気が続くという。


7時に職場入りした時、もう疲れていた。
昨夜、犬が夜鳴きをして熟睡できなかったからだ。
その上トイレ散歩をねだり、午前2時と4時の二回付き合って歩いた。
それはこの数日続いている。
また少し、老いが進んだのだろうか。

昼間、誰も居ない間は熟睡しているようだ。
職場から見る自宅の映像に、その様子が良く映っている。
夜は僕の気配がするから呼ぶのだろうか。
独りでいることが寂しいのだろうか。
元気な時と、ここ数日のような状態とが交互にやって来る。
老犬介護がはじまったと思った方が良いのかもしれない。


仕事は特記事項なし。
昼食はコンビニのおにぎり。
午後は勉強会の講師を1時間。
同様の講師役が今月は6回。
人前で話すのは苦手だし、だいいち面倒だ。
1時間でいいからと簡単に言うけれど、準備にその何倍も掛かるんだぞ。

夕飯は鶏鍋。
寒くなると鍋が美味しいから嬉しい。
鍋が終わった後の汁でご飯を炊くのも楽しい。
炊き方は以下の通り。

あらかじめ米を研いで浸水しておく。
鍋の後、少し冷めた残り汁に米を投入し水加減する。
カセットコンロは中火。 沸騰したら弱火で13-15分。
お焦げを作りたいなら、最後に中火で30秒。
その後、15分蒸らせば出来上がり。
その辺の炊き込みご飯よりずっと上等な物が簡単に炊けるのだ。




寒い2017年10月16日

こうも寒いと、何度も温度計を見てしまう。
朝5時、自宅の庭に吊るしてある温度計は13度だった。
9時過ぎ、職場百葉箱の温度計は12.5度。
帰宅時に見た自宅庭は12度。
昼間も気温が上がらないどころか、下がっているんだ。

師走並みと言うこの寒さに耐えきれず、早くも灯油ストーブを出した。
いや、暖房器具としてのストーブなどまだ必要は無い。
エアコン暖房だって床暖房だって犬暖房だって有るのだから。
でも、この橙色の炎が恋しくなってしまったんだ。
ゆらりと揺れる火を見ていると、時の経つのを忘れる。


たまらず、オデンを買ってきた。
寒雨の外から帰るMを迎えるのは、この炎とおでんの温かさ。
エアコン暖房じゃ、こうはいかない。





ラン2017年10月18日

朝5時、犬と散歩に出た時の気温は10度。
久しぶりに乾いた路面を歩いた。
しかし明日からはまた雨が降るという。
気象庁からは日照不足に関する情報が発表された。
どうも夏から以後、天気が悪いな。

今年は台風による大きな被害が無かった東京。
このままシーズン終了かと思っていたら、この時期になって凄いのが向かってきた。
一昨日発生した「ラン」と言う名の台風21号は、その後急速に発達すると予報された。
中心気圧はやがて920hPaに、最大瞬間風速は70メートルに。

珍しく、気象庁も米軍も進路予想が一致。
やや東に偏向しながら北上し、関東を目指している。
週明けの東京は間違いなく大荒れだろう。
参ったな。
台風が来ると、いろいろ心配な事が有るんだ。

仕事は特記事項なし。
昼食は自宅から持ってきたメロンパン。
腰痛が再発して、事務仕事すらままならぬ。
温泉にでも行ってゆっくり温めたいところ。

昨夜、自宅でスマホにWiFiマークが出ていない事に気付いた。
WiFiアナライザと言うアプリで見たら電波が出ていない。
自宅はフレッツ光。
機器はNTTからリースしているんだったかな。
問い合わせないといけないな。
そう言えばデスクトップPCの前に座ることが最近殆ど無かったな。
自宅ではいつもスマホかタブレットだもの。
WiFiが使えないと、こんなに不便なのか。
だいいち、留守中の犬の様子をカメラで覗き見る事も出来ないじゃないか。


ラーメンのこと2017年10月20日

霜降を前に、東京は記録的な寒さ。
昨日の朝の気温は10度を下回り、昼になってもほとんど上がらなかった。
それはこの時期31年ぶりの低温だという。
夏には記録的な長雨と日照不足。
そして週明けに台風21号が上陸すれば、上陸日歴代3位の記録的な遅さだ。

記録的とか、何十年に一度とか、そんな言葉を日常的に聞く。
それはやはり気象変動の影響なのだろうか。
僕の気象に対する記憶なんてせいぜい40数年くらい? 小学生の頃からだけれど、
それでもはやり気候は苛烈になっている。
記憶に残る夏も夕立も台風ももっと穏やかで、四季は美しかったもの。
いや、それは記憶の美化作用によるものなんだろうか。

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記憶の美化作用と言えば、子供の頃に食べたラーメンの美味さが忘れられない。
駅前の屋台で親父とすすったラーメン。
黄色い縮れ麺、硬いチャーシュー、ナルトとネギ。
そんなごく普通の醤油ラーメンだったと思う。
でもあの頃、僕はそれ以上に美味い食べ物を知らなかったと言ってもいい。
家に風呂は有ったけれど、たまに駅前の銭湯へ行きその帰りに食べた。
古い屋台、立ち食い、ワンカップを呑んでる知らない大人たち。
そんな中で食べるラーメンの美味さを、帰宅後母親に興奮気味に語ったっけ。

あんな美味いラーメンをもう一度食べてみたい。
でもそんなラーメンは存在しない。
だって、古い記憶の中にだけある美味いラーメンだから。
同じものを探したって意味がない。
親父はもう居ないし、駅前に屋台も出ていないし、僕は50歳だから。


それはともかく、この頃のラーメンの美味さには参ってしまう。
これは自宅近所に最近出来たお店のラーメン。
大山地鶏とホンビノス貝、アサリ、羅臼昆布・・の出汁に、何とか醤油とどこだか塩、
麺は国産小麦の自家製で、チャーシューは低温仕上げの豚と鶏。
チャーシューの上に乗ってるのはオリーブと香草とキノコをトリュフオイルで合えたペースト。
とにかく美味くて、もうラーメンの範疇を越えている。
うーんうーんと唸りながら、大満足の一杯をすするのだ。

でも、子供の頃に食べたあのラーメン。
もう一度で良いから、あれを食べたい。


犬の夜鳴き2017年10月24日

何だかボケっとしている間に、また季節が移った。
秋土用の入りも過ぎ、24節季で言う「霜降」、72候で言う「霜初めて降る」
台風21号に洗われた大気は澄み、この時期らしい爽やかさ。
柿が熟し、菊が咲き、金木犀は散った。
クロゼットからフリースを出し、犬の座布団も準備する。
そんな季節。

東京の日の出は5時55分。
これは6月頃より1時間半遅い夜明け。
日没は16時55分で、これは一頃より2時間以上も早い日暮れ。
つまり3時間半も夜が長くなったんだ。

そんな長い夜だけれど、睡眠不足が続く。
犬の夜鳴きだ。
始め悲しそうにヒーヒーと咽び、やがてキャンキャンと吠える。
それはまるで慟哭のようで、とても放って置くことが気でない。
昨夜も2時、4時と起こされ散歩する事になった。
散歩すると暫くは鎮まるので、僕が夜鳴きの一因を作ったとも言えるけれど。

獣医によると、我儘になってもいるんだろうと言う。
トイレが近くなってもいるだろうと。
寂しくもあるんだろうと。
つまり、老化なのだ。

散歩した時の犬の嬉しそうな表情を見ると、やはり夜中に起き出してしまう。
殆ど人気のない静かな夜道を犬と歩くのが好きなのかもしれない。
いつまでこうして一緒に歩けるか、と言う気持ちもある。
この老犬は、僕にまだ両親が居た頃の記憶を共有する大切な友達だ。
出来るだけ一緒の時間を作りたい。

と言っても、やはり寝不足だなあ。
それに、夜中に何度も起こされると母の介護をしていた頃を思い出してしまうんだ。