犬が逃げて2017年08月21日



朝5時の気温は24度。
湿気を含んだ重い空気。
いつの間にか、秋の虫が鳴き始めている。
処暑も近い。

いつものルートを犬と歩き、もうすぐ自宅という場所で散歩綱を落としてしまった。
それに気付いた犬が何度か振り返りながら、小走りで走ってゆく。
思いがけずリードを放されて、犬も悪戯な気持ちになったんだ。
どうせ自宅玄関前で僕を待つだろう。
ちょっと嬉しげに走ってゆく犬を見守りながら帰宅。

すると、居ない。
焦って探す。
あの気弱な犬が徘徊するだなんて考え難い。
どこかで道に迷ったか。
ふと、隣家を覗いた。
すると、以前僕の実家だったあの家の玄関ポーチに座っているじゃないか。
以前、犬は僕が出勤するとき両親に預けた。
あの家で自由に過ごし、僕の帰りを待っていたんだ。
父も母も、この犬を愛した。

あの頃のように、尻尾を振ってそこに座っている犬を見て辛くなった。
どうして昼間、この家に来られないのかな、と不思議に思っているだろうか。
今にも僕の母が玄関を開け、顎を撫でてくれると思っているだろうか。
もうこの家には君を可愛がってくれる人は居ない。
それを言っても、何だか楽しそうに尻尾を振るばかり。

もう3年経つのに、彼女の中ではここはまだ楽しい場所として映るのだろうか。
そんな素直な感情を表すことが出来る犬が羨ましい。
僕が犬だったら、この家の前で負け犬のように尻尾を巻くだろうか。
今はもう居ない家族を思って遠吠えするだろうか。