小仏2016年06月02日

中央自動車道の東京と神奈川の境はトンネルとなっている。
小仏トンネルと言うその名は、交通情報でおなじみの渋滞の名所だ。
勾配と車線減少により、休日はもちろん平日も常に流れが滞る。

中央自動車道は僕がよく走る高速道路。
だからどこかへ行った帰り道、小仏の渋滞で無為な時間を過ごす事が多い。
それを抜ければ東京へ帰れるのに、ジリジリと動かぬ車列が恨めしい。
小仏の渋滞さえなければ、もっと気軽に出かけられるのに。

そして、その渋滞の中でいつも思う。
このトンネルの上はどうなっているんだろう。
小仏峠、とナビの地図には記載がある。
いつか行ってみたい。

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乾いた北風の、晴天の朝。
仕事は休み。
犬と散歩をしながら、こんな日は山歩きをしたいと思った。
準備をしていないから、近場の山。 
気軽に歩ける山。
そうだ、小仏へ行こう。
急いで帰り、眠りこけているMを起した。

山の装備を車に積み、高速を走る。
八王子第一ICで降り、銀杏並木の甲州街道を走り、高尾の少し先で右へ折れる。
川沿いの細い道をゆき、圏央道のジャンクションを見上げ、いよいよ山が近くなる。
小仏のバス停を過ぎ、道の終点が登山道の入り口だ。
10数台分の駐車スペースがあり、その殆どが埋まっている。
梅雨入り前の好天の日、みんな山歩きを楽しんでいるんだろう。


整備された登山道を登る。
良く手入れされた杉山は陽光を通しとても明るい。
オオルリ、ウグイス、コジュケイ。
鳥の声を聞きながら歩く山はとても楽しい。
ゆっくり歩いて40分。
うっすら汗をかいた頃、木立が開けたそこが小仏峠だった。

大垂水ルートが開通するまで、ここは甲州街道として行き交う人も多かったらしい。
小仏宿には関所もあり、この峠は分岐点として重要だったようだ。
安全を祈願する、ずいぶん古い地蔵様。
景信、相模、高尾への分岐を示す道標。
きっと当時は荷物を背負い山越えする人たちで賑わったんだろう。

現代においては、とても静かなハイキングルート。
この地下を、あの中央道が貫きしかも慢性的に渋滞しているなんて信じ難い。
それほど静かで気持ちの良い場所だ。


さて、ここからどうするか。
景信山も高尾山も有名な山で人が多いかもしれない。
静かに眺めを楽しむなら、城山が良いだろう。
戦国時代、この辺りには幾つもの山城があった。
だから城山と呼ばれる山が多い。
それらと区別する為、小仏城山とも呼ばれる山を目指す。
と言っても、峠からゆっくり歩いても30分ほどで着く。

標高670メートルの城山頂上は広く開けていて眺望が素晴らしい。
横浜、新宿、池袋。 
都会がまるでミニチュアの作り物のように見える。
夜景もきっと素晴らしいだろう。
ここに新月の夜に来て、街灯りと星を一緒に写真に撮ったら。
なんて妄想に浸った。

そして南を見れば丹沢山塊、石老山、相模湖、そして富士。
こんな気軽に登れ、こんなに眺めが良い山も珍しい。
そしてこの山の頂上付近は私有地だという。
すげえな。 
僕もこんな山がいくつか欲しいぞ。


裏高尾と呼ばれるこの辺の山には茶屋が多い。
景信山にも陣馬にも。 確か明王峠にもあったしもちろん高尾山にもある。
こんな茶屋があると必ず寄ってしまう。
この辺の名物はナメコ汁。
持ってきたオニギリとナメコ汁で昼食にしよう。

重い登山靴を脱いで、敷物の上でゴロゴロする。
とても長閑で平和な昼下がり。
低山ハイクの魅力って、やっぱりこれだ。
ヘナチョコ山歩きが好きな僕らには、こんな山が似合っている。
一丁平の方まで歩いてみようかとも思ったけれど、居心地の良さにそれも止め。
ずいぶん長い時間、この山頂で遊んでいた。