もう9月2014年09月01日

あっという間に夏は往ってしまい、そして9月がやってきた。
卓上カレンダーを捲ると、15日に丸が付いている。
あれから6年。 親父の命日だ。

父も母も、つい先日までそこに居たように感じる。
犬を連れ近所を歩く親父や自宅前の道を掃く母の気配まで感じるときがある。
スーパーで買い物をしていて、母に似た後姿に思わず後を追う事がある。
同じ銀色のあの車の運転席に、親父の顔を捜す事がある。

8月の最後の土曜日は、地元で小さな花火大会がある。
去年の夏、僕は確かに母とそれを見た。
青い花火が好きだ、と母は言った。
一昨日、自宅からその花火を見上げながら、あれから一年が経った事が信じられない。
青い花火が上がっても歓声を上げる母が居ない。
ただ独り、ビールを呑みながら花火を見る。

それでも少しずつ、日頃の雑事に取り組む気持ちは湧いてきている。
昨日はずっと放置していた埼玉の畑まで行ってきた。
今までは、せいぜい自宅の畑くらいしか手入れする気力が無かったんだ。
4時間掛けて雑草に覆われた畑の草をむしり、石灰をまき、耕運機をかけ、畝を立てる。
来週にはそこに大根の種を蒔こう。
1年半も走っていないけれど、そろそろ夜のジョギングも再開する。
積み上げたままの本も読む。
職場の呑み会もたまには出てみよう。
あれから3ヶ月経って、ようやく新しい生活を始める気になってきたのかもしれない。


朝顔もおわり2014年09月03日




母が作った煮物で酒を呑む夢から醒めた朝。
寝室の窓の外に張ったネットで、名残りの朝顔が二つ三つ。

秋の終わりも春の終わりも、冬の終わりだって寂しくはない。
でもなぜ、夏の終わりはいつも物悲しいのか。
そして祭りの後のような日々を暮らし、来年の夏を思うのだ。




申告終了2014年09月06日

毎朝同じ時間に犬と散歩をしていると、日の出が着実に遅くなっている事が解る。
昼間、職場の自室に差し込む陽の位置で、太陽高度がどんどん下がっている事も解る。
毎年の秋のこの時期は、特に季節の移ろいを早く感じる。
それは夏が終わった事を受け入れる作業でもある。

この一週間、仕事などそっちのけで相続税の申告に打ち込んだ。
そしてようやくそれは出来上がり、月曜日に税理士さんが税務署へ行ってくれるようだ。
父が逝った時と違い、もう誰かのために頑張る必要なんて無い。
残された実家などどうでも良いと思ってしまえば相続など簡単なものだ。
もう、僕には関係のない事なのだから。

残るは銀行での作業と登記。
母の件の事後処理は、いよいよ終盤に差し掛かってきた。
それが終わってしまえば、また僕の日常を淡々と生きるだけ。
あの年の2月の終わりに突然始まった容易ならぬ事態は終わり、全ては思い出になるんだ。
母の残した闘病ノートは昨夜、床下収納へ仕舞った。

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仕事は特記事項なし。
帰り道にホームセンターに寄り、白菜とキャベツ、ブロッコリーの苗を買う。
それらは明日、自宅の畑に植え付ける。
余った場所には一面に菜の花の種を蒔いてしまおう。
来年の春、母が好きだった黄色の花で埋まるだろう。




白露2014年09月08日

朝5時に犬と散歩に出たときの気温は18度。
昼のそれは22度。
低い雲の陰鬱な月曜日。

車で出勤し、午後は遺産分割協議書を持って銀行へ行き、司法書士事務所にも連絡。
帰宅後書類整理。
一階の、普段使っていない部屋の机の引き出しに相続税申告書を仕舞う。
そこには僕が係わった祖母の、父の、そして今回母の相続資料が並んだ。
明日は6年前に父が倒れた日。
思う事多し。


急ぐ季節に取り残されないように、急いで秋野菜を植える。
今までは母と、そして今に思えば母を通してあの一家へと野菜が渡っていたのだ。
でも、今回からはその量を減らし、僕とMが食べきれる程度に抑えよう。
自宅にはブロッコリーを4株、玉ねぎを20個、キャベツとレタスと白菜。
借りている畑には大根を一畝、ネギも一畝。
戦線縮小し、隠遁者のようにひっそりと生きる。



この頃の雨2014年09月11日

出勤前に庭の畑を見回ると、案の定昨日の豪雨の被害が出ていた。
発芽を始めたばかりだった水菜は流れ、まだ数枚の葉を伸ばしただけのレタスが折れている。
M宅周辺もたいへんな降りだったようだ。
きっと種蒔きしたばかりの大根も大きな被害を出しているだろう。
北海道では数十年に一度の雨が降っているという。
この数十年に一度と言われる現象も、ここ数年の間に何度見聞きした事か。
とても短い間に気候が暴走を始めている気がする。
家の保険を風水害に手厚いものに乗り換えようか、など思いながら車で出勤。

職場入りすると部屋の前に数人の職員が居て、僕の出勤を待っていた。
なんと僕の部屋から水漏れしていると言うじゃないか。
調べてみると測定機器に接続してある30リットルのタンクから漏水。
次亜塩素酸入りだったもので臭気がこもってしまい、対処に午前いっぱいを要した。
疲れ果て、昼食は「かつや」で豚汁定食。
午後は別室で事務仕事ばかりしていた。

今週は相続作業はなし。
銀行も税理事務所も寄らずにまっすぐ帰り、かと言って家事をする気力なく弁当で夕食。
自宅至近に持ち帰り弁当屋が出来て、それが便利でたまに使ってしまう。
Mや娘でも来るなら別だけど、独りの夜に自分の為の自炊が面倒な時があるんだ。

夜はずっと読書。

今朝の玉ねぎ2014年09月13日



出勤前に見た、庭の小さな畑。
植えつけて一週間も経たないというのに、20個の玉ねぎ全てが発芽している。
収穫も嬉しいけれど発芽も同様に大好きな光景だ。
倉庫で長い事眠らせ乾ききっていた玉ねぎが、あっという間に目覚め成長を始める。
野菜作りって楽しいな、とこんな時に思うんだ。

朝6時に犬と散歩に出たときの気温は19度。
今は一階の寝室ではなく、二階の畳コーナーで眠っている。
この位の気温の季節、毛布に包まり窓を開けて寝るのが心地よい。
エアコンのそれとは全く違う、夜風の気配が大好きなんだ。

仕事は特記事項なし。
昼食は職場至近の店でネギ味噌ラーメン。
珍しくカレンダー通りに2連休するため、各所に申し送りをしてから帰宅。

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一ヶ月ほど前にMと受診した人間ドックの結果が帰って来た。
もともと虚弱で元気の無い僕が異常を指摘されるのはいつものこと。
胃の弱さも、家系的な数値の異常もみな想定内だ。

でも意外だったのはMが幾つかの異常を指摘され、要再検となったこと。
健康そのものに見える彼女も、考えてみれば立派な中年なのだ。
気の向いたときだけ受診していた人間ドックだけれど、これからは毎年受ける事にしよう。
もう、勢いで何でも出来てしまう若い頃とは違うんだから。





ミョウガ摘み2014年09月15日



久しぶりに実家へ行く。
置きっぱなしだった耕運機を取りに、家の北側の通路に入った。
そこには2002年に実家を建て替えたとき、僕が植えたミョウガが広がっている。
あの頃は父も母も元気だったし、僕もその二世帯住宅にずっと住むのだと思っていた。
そして、両親の好物であるミョウガの苗をたくさん植えたんだ。

ちょっと屈み込んで見ると、丸々太ったミョウガが沢山育っている。
荒れた家と、粗大ごみ置き場になっている通路と、誰も食べることの無いミョウガ。
今日は墓参りの後にあの魚屋に寄って寿司でも買って来よう。
そして、ミョウガのすまし汁と共に供えよう。

父が逝って今日で6年。
母が逝ってまもなく4ヶ月。


彼岸花咲く2014年09月17日

職場敷地内の雑木林に、何か赤いものがある。
昼休みに近づいて見ると、それは咲き始めた彼岸花だった。
そうか、もう彼岸なんだ。
彼岸花を忌み嫌う人も居るけれど、僕はこの花が大好きだ。
いつかMと行ったあの河川敷も、今頃真っ赤に染まっているだろうか。

外に出たついでに、少し職場内の庭を散歩した。
ふと金木犀が香った気がしたけれど、それにはさすがに早いかな。
僕の家の金木犀は今年、強剪定をしたから咲かないだろう。
でも秋にはどうしてもあの香りが欲しい。
時期になったら小金井公園の金木犀を見に行こうか。

仕事は特記事項なし。
と言ってもサボっていたわけではなく、しっかり今日の労働に励んだ。
実習生の相手もしたし。

夜、10連続勤務明けのMが来た。
その前もたしか10日以上連続勤務をし、その間に数回の夜勤もあったはず。
彼女の労働環境は苛酷に過ぎる。 
その上、来年春までの講習プログラムまで始まっているのだ。

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夕飯はネギ、玉ねぎ、シソ、ミョウガなど自家製薬味を乗せたカツオ。
他に、牛タン塩焼き、モヤシ炒め、スルメイカの刺身。

今年もまたスダチを頂き早速楽しんでいる。
去年、体調を崩し始め食欲を無くした母が唯一喜んだのが、このスダチだった。
うどんにスダチをたっぷり絞り、鰹節と醤油で食べるのが好きだったな。
あれからもう一年も経つのか。


おでん2014年09月20日



母が居なくなって4ヵ月。
その間にいくつかの季節が巡って、今日は秋彼岸の入り。
朝晩すっかり秋めいてきて、もう良かろうとカセットコンロを出してきた。
今期初めてのおでん。 酒はヨナヨナビールと日高見のひやおろし。
母には味のしみた大根を供えた。


咲いた2014年09月23日



長く育ててきた鉢植え。
今年の春頃、母の様態が悪くなってから全く面倒を見る時間が無かった。
ある時気づくと、それは葉を落としカイガラムシに覆われていた。
やがて枯れてしまうだろう。
それでもバルコニーに鉢を出したまま放置し、存在も忘れてしまっていた。

葬儀も終わり一息ついた6月頃。
ふと見ると、それはまだ生きているように見えた。
その放置した鉢植えが酷く可哀想に見えて、何とかしたいと思った。
母が好きだった真っ赤なハイビスカス。
もう一度、元気になってくれるだろうか。

枯れた枝を切り戻し、根詰まりした古土をほぐし、カイガラムシをブラシで落とす。
オンシツコナジラミを掃い、寒冷紗をかけて庭の畑に地植えして様子を見た。
陽を当てすぎず、湿度保ち、害虫を駆除し、そして常に見守る。
一ヶ月ほどで芽を出し、二ヶ月ほどで枝を伸ばし、三ヶ月ほどで見違えるほどの大株に。
鉢に取り上げ出窓に慣らし、少しづつ液肥を与え体力をつける。
そして秋分の日、今期最初の開花。

花の盛りの時期には間に合わなかったけれど、上手く管理すれば12月まで咲くだろう。
それぞれの枝には数え切れないほどのツボミを付けている。
この花は、そこに在るだけで気持ちを明るくしてくれる。
そしてなんだかとても懐かしい気持ちにしてくれるんだ。