2007/102007年10月30日


 

 

07/10/31 (水)  四駆遊び

雲の多い日。
明日からは雨が予想され、不安定な天気が続く。
カーポート脇の柿の実が色を濃くし、そろそろ齧りついても良いかもしれない。
僕は柿が大好きなんだ。

休みの朝。
期待した晴れは無かったけれど、やはり外で遊びたい。
紅葉を見たいけれど、混雑はゴメンだ。
そんな訳でMと2人、埼玉・群馬・長野が県境を接する辺りの林道へ散歩に行った。




かつて日航機が大参事を起こした辺りから山へ分け入り、もちろん舗装なんかされていない険しい道を走る。
車はチョロQ。
この車は軽自動車だけれど、車高の高いフルタイム四駆。
こんな狭い林道を走るのは最適な車だ。

   

国道から1時間も走れば人の気配なんかまったくしない。
山の稜線が遥かに続き、植林されていない自然林は落葉を前に綺麗に色付いている。
厚い雲に覆われ色を失ったかと思えば、また少し後に陽を受け綺麗に映える。
信じ難いほど急峻な峰を見ながら、ゆっくりと林道を走った。

林道とは不思議な道で、もともと林業や山林管理の為に作られた筈なのに、
少なくとも僕が好んで走る林道に関しては人の活動の痕跡を見出せない。
目的があって作られ、その後当初の目的は何処かへ消えてしまい、道だけが残った。
そんな趣の道ばかりだ。

   


写真はナビの軌跡によれば埼玉・群馬県境の両神山近くの林道。
その20数キロの林道区間で車にもバイクにも、まったく出会う事が無かった。
しんしんとした山の中、風の音と沢の水音、そして僕らの立てる音以外何も聞こえない。

素晴らしい紅葉を独り占めしながら、コンビニで買ってきたオニギリを食べた。
観光地へ紅葉を見に行ったらとてもこの開放感は無いだろう。
ああ、なんて良い気分なんだろう。


ただ、楽しいばかりじゃない。
管理され尽くした公道と違い、林道は全てが自己責任。
携帯は圏外だし、車に何か有れば熊の徘徊する山に取り残される事になる。
路面の荒れは凄まじく、巨大な岩はゴロゴロしているし、路肩の崩落もアチコチで起こっている。

今回、泥濘にはまり4輪直結のデフロックで脱出すること1回。
倒木を人力で排除すること数回。
崩落で行き止まり引き返すこと3回。
巨大な落石が道を塞ぎ、軽で無ければ通過できなかったろう場所も数箇所あった。

   覚書:今度タイヤ交換するときはオフロード用のゴツいタイヤにしよう。
         山へ入る時は軍手、ジャッキは必須。


9月の台風9号の災害から未だ復旧せず、結局埼玉側からも群馬側からも林道で長野へ入る事は出来なかった。
長野で温泉に入り、高速で帰ろうと言う計画はご破算だ。
それでも人のいない場所で遊ぶ楽しさに取り憑かれた僕らは、山の中をいつまでも徘徊し続けた。


   

そんな山から下りてきて道が良くなり、Mが電線だよ、と声を上げる。
道の脇に這う、どこにでも有る電線が人の生活が近い事を知らせる。
やがて開けて見えてきた斜面に段々畑を見つけた時、車を停めて見入ってしまった。

どんな苦労をして、あんな急な斜面で野菜を作っているんだろう。
どんな人が耕しているのだろう。
どんな生活だろう。

どんなを連発しながら、人間界に帰った安堵を感じた。


12時間、350キロ走って帰宅。
庭の外灯に照らされた泥だらけの車を見る。
曇りの夜、星明かりも無いあの林道は今、真の闇に沈んでいるんだろうか。
昼間、辛うじて僕らを受け入れてくれた山は今、何に支配されているんだろう。
これから来る長い冬、あの場所は誰も踏み入る事も無く、ただ静かに眠るのだろうか。

そう言えば「山眠る」という冬の季語が有る事を、暖かな部屋で燗酒を飲みながら思い出した。
明日はずっと会議。

 

 


 

07/10/30 (火)  アディダス

5時半起床。
気温は12度。 
自信なさげだった朝の冷え込みも確かなモノになり、犬の散歩に出るにもキチンと服を着るようになった。

今日の日の出は6時ちょうど。 日没は16時50分。
昼の時間はどんどん少なくなってゆき、冬至の頃には今よりも更に1時間短くなる。
萎えてゆく太陽の暖かさが一層に有難く思える季節がやって来る。

朝食にグリコ・りんごヨーグルト。
チョロQで出勤し、早い時間から仕事を始めた。
明日は休むので今日中に片付けておきたい山積の仕事たち。
それらが何一つ上手く行かず、頭を抱える。
人に対する対応まで雑になり、深く反省。
哀れんでくれたのか事務のIちゃんがチョコレートを恵んでくれ、有難く頂いた。

煮詰まったお昼。
外の風が吸いたくて食事に出る。
職場近くの定食屋さん。 毎年この季節に出るカキフライ定食1000円也を頬張っていると後から来たお客さんに相席を求められる。
見るとそれは僕の職場のエライ人達だった。
気分転換に食事に出て、あの人達と食事するハメになるとは。
なんでカキフライを食べながら会議のような会話をしなければならないんだ。
僕は、美味い物を食べている時に小難しい話をされるのが大嫌いなんだ。

午後も苦戦は続く。
あげく、告知されていなかった業者の床清掃が入ってしまい尻尾を巻いて撤退した。


   

気に入っていたスポーツジムが温泉施設に化け、退会を余儀なくされてから2ヵ月。
公営体育館へ行く事はあっても、やはり日常的な運動量は不足している。
摂取する熱量(僕の場合、問題はラーメンとビールだ)とデスクワーク主体の仕事内容が均衡せず、体が緩んでゆく。
太古の記憶が冬に備えて皮下脂肪を蓄積したがっているのかもしれない。

仕事の帰り、基礎代謝の低下とジリジリ上昇する体重計の数字に抵抗しようとジャージとランニングシューズを新調した。
シューズはアディダス、ジャージはアシックス。
これは子供の頃からの拘りで、この二点が揃うと頑張れる気がするんだ。

夜、これらを身に付け近所を走ろう。
キリッと冷えた夜気の中を走るのは、ジムのマシンの上を走るのとはまた違う気持ちの良さがある。
気に入りのコースを走り、公園で休憩し、星でも見上げようか。

夕飯は冷蔵庫に眠っていた期限切れの豆腐と萎れた白菜と出来合いのワンタンで鍋を作った。
酒は初孫純米熟成酒。  燗で飲むと一層旨みが出る味の濃い酒。

明日は朝からMとドライブの予定。
天気しだいでは遠出したいと思う。

 


 

07/10/28 (日)  飛行機をみに

台風一過。
青く高い空。 
最高気温は25度。 風は南風。

M宅に近い事もあり、荒川の「秋ヶ瀬」と言う場所が気に入り、自宅から20キロ離れているのに毎週のように遊びに行く。
そこは車で直接乗り入れることの出来る河川敷。
素晴らしいジョギングコース、広大な耕作地、釣りをする人、パラセイルで飛ぶ人、犬を遊ばせる人、ジェットスキーに興じる人。
広い場所で思い切り活動したいと言う人の欲求を満たす、素晴らしい場所なんだ。

その場所のライブカメラを見つけ、暇さえあればいつも見ている。
このカメラの映す堰の下で、僕は良く釣り糸を垂れている。

5時40分起床。  いつものようにPCを起動し秋ヶ瀬の様子を見る。
そこに映ったのは、台風に洗われた清浄の空。
素晴らしい朝焼けの空。

今、外に出れば同じ朝焼けを見ることが出来るだろう。
でもそれは、建物に切り取られた小さな空。
たとえモニター越しであっても、広い河川敷にもうすぐ訪れる地平からの夜明けを見ていたい。
暫くのちに登ってきた太陽の神々しさはモニター越しでも色褪せず、息を飲む最高の表情を見せた。



   

午前、コネで手に入れた招待券で  陸上自衛隊観閲式へ行く。
3年ぶりの朝霞駐屯地。
招待券の効力で胸にリボンを付けて貰い、良い席に陣取る。

首相も来ているせいか、警備の目が厳しい。
それでも三台のカメラを振り回し、300枚の写真を撮ることが出来た。
今年はブルーインパルスの参加が無かったけれど、彼らには来週会う事が出来るだろう。 
来週は、そのために1日中入間基地に詰めるのだから。


   

午後、両国まで飛行機模型同好会の発表会を見に行く。
最高峰と言われる技術を持つ人たちの発表会なのだけれど、毎年見に来て、その度に唸ってしまう。
僕も浪人時代のあるとき、ジオラマや模型製作で喰って居た事が有るのだけれど、この人たちの足元にも及ばない。
だって、実機のリベットの数まで正確に再現しているんだ。

メーカー製のキットじゃなくて、プラ板から削り出し、ここまで仕上げてしまう人たち。
その、汚れまで再現された模型を前に、ただただ感嘆の唸りを上げるしかなかった。



19時。
遊び疲れての帰り道。
何となくM宅が見たくなり、まるでストーカーのように遠回りをし、灯りを見上げる。

Mのマンション。
子供達がきっとテレビでもみているんだろう。
Mはもう帰宅しているのか。
それともまた仕事をしているのか。
そんな事を考えながら街灯の影に居たら、目の前を自転車でMが通過する。
丁度、仕事からの帰り道だと言う。

こんな時は早く訪れる夜も悪くない。
人目を気にせず、手を繋いで少しだけ散歩をした。
東に満月を少し過ぎた月が昇る。
青い月だ。

そしてまた、月曜日がやって来る。




 


 

07/10/26 (金)  ホウトウ鍋

好きな行為、状況の一つとして「雨の中、露天風呂に入る」と言うのがある。
真冬じゃちょっと寒すぎるし夏は夏で良いけれど、出来れば少し肌寒い程度の季節が良い。
そぼふる雨の中、静かな露天風呂につかり放心したい。
久しぶりに、そんなささやかな願いを叶えた日。

Mと紅葉を見に行くつもりが、朝から雨。
予定を変更し、富士の温泉へ向かった。
不思議なほど空いた中央高速。
たった100キロの距離、渋滞さえなければ1時間で富士に着く。

菅笠を被り、雨に打たれて温泉に沈む快感。
天気が良ければ目の前に雄大な富士が見えるこの風呂も、今日は乳白色の雨霧に覆われている。
それが一層に静けさを感じさせ、風呂に落ちる雨の音を聞きながらボンヤリとする。
この頃体調の良くなかったMも随分と長湯をし、この風呂が気に入ったようだ。

   

食事と休憩に個室を借りたので、何にも煩わされること無く寛いだ。
ホウトウ鍋を食べ、畳の上で雨の音を聞きながら気持ちの良い昼寝をした。
ちょっとこの頃記憶に無かった程、気持ちの良い昼寝だった。


つい長居をしてしまい厚い雲の向こうに色が消える頃、また中央高速を走る。
濃霧に反射するヘッドライト。
目の前の路面以外何も見えないほどの霧の中、まるで雲の中をゆくパイロットになった気分で飛んだ。
やがて灯りが増えてゆき、府中で下りれば家はもうすぐだ。

良い休日はあっと言う間に暮れる。
明日はまた早出。

 

 

 

 

 


 

07/10/24 (水)  さむい

霜降。
そんな二十四節季にふさわしい朝。

5時半、月桂樹の樹にぶら下げてある温度計は10度。
だんだんと明けてゆく空を、犬と眺めた。

街の静けさの中、粛々と東雲から光芒が漏れ出でる様は言葉に出来ないほどに美しい。
これが毎日繰り返される事が奇跡にすら思える。
何度見ても夜明けは素晴らしい。
それが大量の仕事を抱え、早出する為に起きた二日酔いの朝でも。


早い時間に出勤。
機器のウォームアップをしながらPCを立ちあげ紅茶を飲む。
月末予定表の作成、会議用レポートの準備、研究会準備、部署間調整。
昼に大勝軒へ出張。

今日はシールドルームへ篭る必要は無く、穏やかな高い空を窓の外に見ながら仕事をする事が出来た。
午後はひたすらルーチンワークに没頭するも、遠心分離機の安全装置が解除できなくなるというツマラナイ出来事に足を引っ張られ脱力した。

発注した試薬が届き保冷庫へ入れようと扉を開けると、奥に未開封の同じ試薬を発見。
先日注文した「感染対策の実践ガイド」が届けば、すでに持っていた本だと判明。
もう脳が駄目だ・・

伸びすぎた髪を切りたくて、適当に仕事を切り上げ職場を出た。


毎年繰り返される事だけれど、この時期日増しに昼の時間が短くなってゆくのは寂しい。
今日の東京の日の出は5時54分。日没は16時58分。
8月の頃より3時間も昼の時間は短いんだ。

中学の頃、autumnには秋の他に初老という意味も有ると習ったけれど、葉が散り光りは弱く影が勢力を伸ばすこの時期は、衰える辛さばかり感じてしまう。
ポケットに手を入れて背を丸め歩く日々が、またやってくる。
夏の夜はむしろ好きなのに、これからの季節の闇が苦手だ。

髪を切り、買い物をして帰宅。
何だか頭の奥に疲れが溜まり、ボンヤリと熱感もある。
もしかしたら風邪をひいたのかもしれない。

そんな事を考えながら玄関を開けると、こんな娘がシッポを振って僕の帰りを待っていてくれる。
自分のねぐらから走ってきて、お帰り!と全身で表現してくれるんだ。
良い娘を持って、僕は幸せだ。

   


夕飯を作る気力なくコンビニのおでんで済ます。
でも、酒は専用の酒器を出し、今期初めてキチンと燗酒をつけた。
温かい日本酒が染入る程に旨い。
この旨さは、例えばホットバタードラムやホットウイスキーなんかじゃ味わえない日本酒独特の優しさだ。

11月に入ればすぐに立冬。
そんな季節に向って少しでも色彩が欲しく、家の周囲に大量の菜の花の種を蒔いた。
あの黄色の花が咲き始めれば、遠い春も少しは現実味を感じることが出来るだろう。

 

 

 

 


 

07/10/23 (火)  病院にて

昼前で無理やり仕事にカタを付け、母親を病院へ連れて行く。
いつ何度来ても、病院というところは人を陰鬱にする。
居心地の悪い場所で待たされる時間は永遠にも思える。

結果、おそらく脂肪腫だろうとの事で経過観察で放免となった。
油断は出来ないけれど、ずっと悪い結果をも有り得ると思っていただけに安心して力が抜けた。
Mの時と良い、母の時と良い、いっそ自分の身に降りかかった事の方が気が楽かもしれない。

しかし、自宅周辺の病院には知り合いが多く、それもまた居心地が悪い。
今日は二ヶ所の病院を廻ったのだけれど、どちらでも声を掛けられ照れ笑い。
今日のように緊張している時は、普段バカ話する人でも会いたくは無い。

夜は幼馴染と呑み。
奴らには今日の事は話さないけれど、僕にとってちょうど良い乾杯となるだろう。
明日も仕事だから深酒は出来ないけれど。

 

 


 

07/10/21 (日)  ジョギングをする

秋土用の入り。

大きな高気圧に抱かれ、素晴らしく穏やかな秋の1日。
冬に向かって透明度を増してゆく空。
ススキが気持ち良さそうに揺れている。

昨夜から心身共に不調だったのだけれど、朝の陽を浴びて幸せな気持ちになる。
こんな時は家に居ない方が良いんだ。
少し位の不調は、外で、明るい陽の元で過ごせば回復するだろう。
つまり、僕の不調とはそういう類のものなんだ。

二ヶ所の、もうすぐ自分の物では無くなる畑を廻る。
サツマイモのツル返し、ムカゴ拾い、落花生の土寄せ。
サトイモの根元に手を差し込み、小芋を10個ほど土の中から探り当てる。
これは「きぬかつぎ」にして今夜の酒の肴にしよう。
手を差し入れた畑の土はホックリと温かい。
ここに数ヵ月後マンションが建つなど、悪い冗談としか思えない。

午後、この頃気に入りの場所で過ごす。
ここはM宅から更に10キロ。
荒川河川敷の秋ヶ瀬という地だ。

広大な河川敷に車を乗り入れることが出来る。
土手の内側に広かる耕作地。
川で釣りをする人。
パラグライダーで空を飛ぶ人、凧をあげる人、楽器の練習をする人、野球に興じる人。
様々な人が様々な楽しみ方をするのに充分な懐となる広大な河川敷。
天気の良い日曜の午後を過ごすのには最適な場所なんだ。

   

一周4キロのジョギングコースを2周走る。
鯉を釣る人を眺め、仕掛けでウナギやテナガ海老を採る人と話をする。
少年野球を眺め、コンビニで買ってきた梅オニギリを頬張り、日陰で最高に気持ちの良い昼寝をし、仕上げにまた4キロウオーキングをした。

夕方、巨大な火の玉が西へ落ちるのをじっと見て、美しい薄明を経て夜の世界がやって来るまでそこに居た。
オレンジの剃刀のような飛行機雲、武蔵野線の鉄橋を列車がゆく。 川は漆黒でそこはもう人を寄せ付けない。
普段の生活の中で、こんなに空が広いなんて忘れていた。
空を見上げる事すら忘れているかもしれない。
今日は良い休日だった。

そしてまた月曜がやって来る。
でも今夜はきっと熟睡できるだろう。
心地よい疲れが、心地よい睡眠を運んでくるだろう。
明日の事は明日考えよう。
明日出来る事は、今日悩まないのだ。




 


 

07/10/19 (金)  アジサバ尽くし

6時起床。
気温は15度。 犬の散歩に行くにも、それなりの服を着なければ寒さを感じる。
サンダルと半パンでひょいと散歩に行ったのは、たった一月前だと言うのに。
気圧の谷の影響で午後から雨の予報。
しかしすでにもう、濃厚な雨の気配。 
湿気を含んだ西よりの風。 散り花となった金木犀が微かに香りを残す。
そんな朝。



チョロQで出勤。
今日入っている数件の予約をどう進めるか考えながら仕事部屋へ入る。
と、そこに目を疑う物を見つけ不機嫌になる。

来週早々に予定していた集検を、引継ぎのミスだか何だかの理由で今朝提出されていたんだ。
仕事量として半日以上掛かるモノを、間違えましたの一言で押し付けられえては堪らない。
しかし、大量の検体をもう一度採り直せと言う訳にも行かず、渋々引き受けた。

こう言うミスをするのは、ある決まった部署なのだ。
毎度繰り返されるだらしの無さに呆れる。
お陰で今日の仕事予定は全て台無しだ。

昼食に赤いきつねを10分で食べ、午後も虚しい作業を続ける。
ふと気付けば窓の外はもう夕闇。
いつの間に降り出したのか、細い雨が落ちている。

苛々したせいか、1日酷い頭痛に悩んだ。
気力をなくし、適当な頃合に職場を出た。


昨夜から今日に掛けて料理し、食べたものの記録。
1人で食べるには少し釣果が有り過ぎたか。
この2日間、昼のカップ麺を除き、アジとサバしか食べていない。

   

豆アジの南蛮漬け。
綺麗に掃除したアジを二度揚げし、合わせ酢に漬け冷やした物。
スライスした玉葱を乗せて完成。
2日目の方が味が染みて好み。

   

シメサバ。
三枚に下ろしたサバに塩をしてしばらく放置。
少し砂糖を入れた酢に漬けただけ。
寝る前に酢に漬け、朝出したから酢漬け時間は5時間ほどか。
食べる前に薄皮を剥ぐのを忘れずに。

   

アジの塩焼き。
ただ焼いただけ。
大根おろしとスダチ添え。

自分が釣った魚だから贔屓目も有るだろうけれど、どれも最高に美味し。
丸々肥ったサバの、脂ののった美味さ。
頭から骨ごとバリバリ食べる豆アジの香ばしさ。
そして定番、アジの塩焼き。

これほど酒の進む料理を前に、ついつい飲みすぎてしまい二日酔い。
今度は白身が食べたくなってきた。
底砂の浜にカレイでも釣りに行こうか。




夏の頃から、腕にシコリを自覚していた母が来週火曜日に検査を受けることになった。
8月末、シコリを自覚した母はリウマチで毎月受診している主治医に相談し、心配は無いだろうと言われたらしい。
そんなアホな。 検査もせずに心配無いなんて言えないぜ、と母を説得し他の大きな病院を受診させ、そこでも検査もなしに経過観察を言い渡された。

その時点で、更に他の病院へ行けとは言えなかった。
医者嫌いな母が二軒の病院を廻り、どちらでも経過観察で良いと言われたと喜んでいたからだ。
しかし、そのシコリはこの一ヶ月の間にハッキリと大きくなっているという。
早くMRIを受けさせなければ。

予約をねじ込んだのが来週火曜日。
そこで検査をし、地元の病院に結果を持ち帰るという。
医者嫌いな母は、今の時点でもう落ち込んでいる。  
受診とか検査とかが苦手な人なんだ。
僕もそうだけれど。

7年前、僕の顎に突然大きなシコリが出来た。
悪性の疑いが濃いと言われ、検査漬けになった。
手で触れる鶏卵大(!)のシコリを触る度、これが悪性だったらと思うと息苦しくなり動悸がしたのを覚えている。
あの時は、何をしていてもその事ばかり考えていた。
根拠も無く持っていた健康に対する自信が、バラバラと崩れるのを感じていた。

ちょうどその頃祖母が倒れ、病院の祖母の個室に泊り込み、翌朝また検査に向かうような日が続いた。
結局そのシコリが良性だと解ったのは数週間の入院の挙句オペで摘出してからで、そのオペの当日、祖母は逝ったんだ。
そんな経験をしたから尚更に、今、母がどんなストレスに晒されているかが良く解る。

来週火曜日、今日のイレギュラーのあおりで忙しくなる日。
でも何とか時間を作って昼で帰ろう。
傍に居るだけで、それで少しでも安心することが出来るなら母に付き添おう。
母の神経質なところを受け継いでいる僕はが一緒にて、どれ程の安心に結びつくかは解らないけれど。

 


 

07/10/17 (水) 釣り師

   

釣果速報。
サバ大×2
アジ中×3
アジ小×20
他に大量の雑魚、これはリリース。
八丈島で大物相手に「老人と海」見たいな格闘的釣りもした事が有るけれど、東京湾の磯釣りでこれだけ釣れれば満足。
やっぱり海は気持ち良いや。

疲れて空腹で帰宅したけれど、まだ酒を呑み始めるわけには行かない。
小アジは明日の夕飯に揚げるとして、今からサバはシメサバに、中アジは刺身にするんだ。
釣った魚を料理してそれを肴に酒を呑む。
そんな甘美な儀式を、これからゆっくりと楽しもう。

 


 

07/10/16 (火)  寒い

6時、少し開けた窓から流れてくる空気の冷たさに目が覚める。
気温は15度。 この秋一番の肌寒い朝。
低い雲、ボンヤリとした灰色の朝。

やはりどうにもこの季節が苦手だ。
新しい日に立ち向う気力が湧かず、いつまでも枕を抱いている事が多い。
このまま仕事に行かなくて良いと言われたら、きっとずっとベッドに篭って居るだろう。
でも、これが休日なら早々に畑へ行くのだから、ただのサボりなのだろうけれど。


   

チョロQで出勤。
駐車場に漂う芳しい香りの元を探して上を向けば、イチョウの大木にたわわに実るギンナン。
今年は例年になくギンナンの当たり年だ。
敷地にイチョウの樹の多い職場がギンナンの匂いに包まれている。
すばらしい。

午前、数本の電話により明日の予約がキャンセルされる。
その分また他の日に予約が入るのだから仕事量は同じなのだけれど、
今週はずっと出勤しようと思っていたのを急遽明日の休みを決めた。

そうなるとゲンキンなもので、目の前の仕事をサクサクとこなす。
温泉にでも行こうか、釣りにでも行こうかと妄想しながら、いつも以上のペースで働いた。

昼、コンビニで弁当とおでんの大根を買い、公園の駐車場に停めた車の中で食べた。
キチンと休憩が取れ、そして車で出勤した時にだけ使えるワザ。
シートを少し倒しラジオを聴きながら1人で弁当を食べる開放感は、職場の食堂なんかじゃ有り得ない幸せなものだ。
1時間の昼休みを取ることに少しの罪悪感を感じつつ、でも昼に1時間の休憩を取ってどこが悪いんだよ、と開き直り1人の昼休みを楽しんだ。

そして1時間後、仕事中はいつも持ち歩く事になっているPHSに入った6件の着信の後始末に追われる事になった。



夜、八丈島産のアジをタタキにし酒を呑む。
もともと魚が好きなのだけれど、その中でもアジという魚を好む。
刺身でも、焼いても、揚げても旨みが濃く、酒の肴に良く合うからだ。

そうだ、明日はアジでも釣りに行こうか。
秋のこの時期、防波堤でアジのサビキ釣りには絶好の季節じゃないか。
以前よく行った三浦の観音崎あたりを徘徊しよう。
回遊するその群れに当たればきっと大漁だ。
群れにさえ当たれば。

Mは今夜もまた徹夜の勤務。
人員不足のシワ寄せを全て1人で被る婦長という立場の難しさは解っているけれど、それにしてもこれでは消耗戦だ。
何とか力になりたいと動いてはいるのだけれど、転職と言う根本的な解決に走るしか無いのかもしれない。
しかし、Mのマンションの立地から容易に通える病院は他になく、まだ子供が中学生のうちは自転車通勤圏の職場に留まりたいと言う気持ちも解る。

医者も看護婦もいつもクタクタな地域の中核救急病院。
看護婦が9日連続勤務だと言えば、医者は36時間眠って居ないと言う。
それでも、ミスが無くて当たり前。 些細なミスが人命に関わるんだ。
そんな悲惨な現場を良く知っているだけに、Mが夜勤の夜は気持ち良く酔う事が出来ない。
といっても、旨い酒を飲むのだけれど。

 


07/10/14 (日)  葡萄を食べる

朝6時、頭痛と喉の渇きで目が覚める。
案の定、昨夜呑みすぎたんだろう。

どれだけ飲んだかは良く覚えていない。  
仕上げにラーメン屋で餃子をツマミにビールを飲んだのはうっすらと覚えているけれど。
携帯のカメラが結構良く写るぞという昨日の日記を思い出し、携帯のmicroSDデータを見てみれば写ってる写ってる。
きっと新しい携帯を自慢し、写真を撮りまくっていたんだろう。
そこには数件の店をハシゴし、ウワバミの様に酒を呑む僕らの生態が写っていた。

少し反省。
でも、写真に写っている自分がとても楽しそうで、そんな酒を飲める幼馴染が居る事を感謝したい。
奴らとなら、二日酔いを恐れず泥の底まで酒をあおるだろう。




朝の東京は16度。
曇の多い灰色の日。
でも、二日酔いになんか負けてはいられない。
貴重な日曜日を少しも無駄には出来ない。

午前の早い時間、埼玉の二箇所の畑を廻る。
ゴボウはそろそろ収穫終わり。 サツマイモとサトイモ、落花生は順調に生育中。
大根は双葉が割れ、本葉が数枚。 3本立てに間引きする。
ラッキョウに少し施肥をし、ムカゴを拾い、サツマイモを数本試し掘り。
サトイモに土寄せをし畑をあとにした。
この畑明け渡しまであと一月半。
それまでに芋と落花生を収穫しなければならない。
間に合うかは微妙な状況。

帰宅後、遅い朝食にサツマイモを焼く。
古い中華鍋に、玄関の周りに敷いてある小玉石を沢山入れ簡易石焼芋を作る。
小さなガスの火で1時間。
その間に、門の上に作った葡萄棚から数房の葡萄をもいでみる。

   

3年前に50センチほどの苗を植えた葡萄棚。
デラ、ベリーA、巨峰を植えたのだけれど、そろそろ本格的に収穫が望める様になってきた。
巨峰はまだミドリ。 しかしベリーAとデラはそろそろ熟してきているんだ。

冬場の剪定に始まり初夏の摘花、摘房、袋かけ。
手間の掛かる分、収穫が嬉しい。
今年の猛暑にも助けられ、味の濃い甘い葡萄に仕上がった。
これなら巨峰も期待できるだろう。

子供の頃、当時住んでいた家には大きな葡萄棚が有った。
まだ体の自由が利いた祖母と小さかった僕。 ドキドキしながら赤葡萄酒を密造した楽しい記憶が蘇る。
小さな頃の僕の思い出のかなりの部分は祖母と共にある。
野菜作りもあの頃祖母に教わったままを今やっているに過ぎない。




昼、ふらりと入った釣り道具屋で新しい4メートル竿とクーラーボックスを買う。
最近休止していた釣り趣味だけれど、また釣りキチの血が騒いできているんだ。
海で過すには良い季節。
時間を作ってアジでも釣りに行こうか。

午後はファーストフードをテイクアウトして秋ヶ瀬で過した。
休日の河川敷は良い。
釣り、オフロードバイク、ラジコン飛行機、凧、楽器を練習する人。
それぞれがそれぞれの趣味に没頭している。
そんな中僕も8キロジョギングをし、川を見ながらコーヒーを呑み、釣りをする人と話をし、河川敷に拡がる畑を眺めた。

気持ちの良い午後の時間がゆっくりと過ぎる。
こうしている間も今、Mは職場で走り回っているだろうか。
昨夜は眠れたろうか。
食事をとる時間は有ったろうか。
そんな事を考えていたら眠たくなってしまった。
チョロQのシートはフルフラットにすることが出来る。
窓を開けて気持ちの良い風を感じながら、最高の昼寝をした。
少しだけMに罪悪感を感じたけれど。

夜は間引き大根菜のおひたし。
他にカツオのナマリ煮、湯豆腐。
読みかけの本は江国香織の「きらきらひかる」と医歯薬出版の「臨床生理学」
そしてまた月曜日がやって来る。
新しい週がやって来る。


 

 

 


 

07/10/13 (土)  携帯のカメラ

   

先日、携帯電話を新しく買い換えた。
これはその端末に付いているカメラの画像。
携帯に付いているカメラなんて今まで馬鹿にしていたけれど、これだけ映るならメモ程度には使えるかもしれない。
あくまでメモだけれど。




曇り時々晴れ。
朝起きた時の気温は18度、最高気温は21度。

出勤前、プランターで作っていた稲を刈り取る。
プランター1本分だから量は少ないけれど、みっちりと実の詰まったコシヒカリは見ていて楽しい。
こんな少ない量だけれど、どうにか脱穀してみようか。
精米機は持っているから、脱穀さえ出来れば食べることが出来るかもしれない。

8時、出勤するも仕事が捗らず少しイライラ。
他部署にいい加減な仕事をされ、その尻拭いで半日が潰れる。
立場上仕方の無い事かもしれないし、この程度の規模の職場では兼任はやむを得ないのだけれど。
それでも自分の専門外の仕事、それも揉め事仲裁人の様な作業は嫌気がさす。
結句、今日に予定されていた仕事は殆どする事が出来ず。

Mはいつもこんな思いをしているのだろうか。
管理の仕事を嫌々引き受けた彼女は、以前のように眼を輝かせて仕事の話をしなくなった。
そして溜息ばかりついている気がする。
楽しいばかりの仕事なんて無いけれど、もう少し達成感のある日々をおくりたい。

夕方、もうどうでも良い気分になり幼馴染に電話。
少し離れた私鉄の駅まで自転車で出て行き、目当ての店で今夜は飲もう。
幼稚園の同級生だった幼馴染と、仕事の話なんか少しもせず遅くまで飲むんだ。



 


 

07/10/11 (木)  サイクリング

朝、低くたなびいていた雲も消え、空の高い日。
最高気温は24度。 気温ほどの暑さを感じないのは風が爽やかなためか。
街路のギンナンが熟す。
手袋をはめ、それを集める人を車の窓から眺めた。
僕も今度の日曜あたり、どこかへギンナンを拾いに行こう。



      


何だか色々なストレスを抱えて爆発しそうなMを誘って、公園をサイクリングする。
ここは日本有数の面積を誇り、良く手入れされたエリアに四季の花が咲く気持ちの良い公園だ。
今の時期ちょうどコスモスが満開で、丘を埋め尽くすその光景が素晴らしい。

余りに広く、歩いて回る事は難しい。
だから、入り口で数百円を払い自転車を借りる事になるんだ。
売店でソフトクリームを買い、樹の名を覚え、池で鯉を眺める。
日本庭園で抹茶を頂き、野良猫を撫で、膝枕をしてもらい木陰で少しウトウト。
気持ちの良い秋の日。
なんだか腹が減ったと思ったら、もう午後2時だ。




車を公園駐車場に置いたまま、歩いて15分。
駅に隣接するこの施設で胃袋を満たそう。
ここは、ラーメンテーマパークなのだけれど、一般公募のコンテストで優勝すると出店できるところが面白い。
定期的に店の入替えが有るため、目新しい店が出来るたびに行く事になる。

今回初めて食べたは先日開店したばかり。
イタリア料理出身のオーナーが作る塩ラーメンの白濁した濃厚な汁は、それだけで一品料理のスープみたい。
パスタのような麺とも良くあって、こりゃ美味いや。
調子に乗ってもう一軒。
2人で計4杯のラーメンを平らげ、膨れた腹を持て余す。
やはりミニラーメンにしておけば良かったか。
でも満腹は幸せな気分だ。



夕方、西の空を直線に切る飛行機雲を見上げた。
残照に照らされて明るいオレンジに光る飛行機雲がとても綺麗で、首が痛くなるまで見上げていた。
あの飛行機はどこへ行くんだろう。
19時、それぞれの家へ帰宅。
Mは明日から9連続出勤。

夜は久しぶりに早くに寝た。
窓を開けて眠ると肌寒い季節。
ベッドの上掛けを一枚引っ張り出し、ラジオを聴きながら眠った。



 

07/10/9 (火)  角打ち

「寒露」
冷たい露が降り始める頃。
金木犀の甘い香りが漂い始めた。
柿の実の赤みも、一層に深みを増す。

小糠雨の朝。
気温は18度。
夏の間、腹を出しイビキをかいていた犬が丸くなって眠るようになった。
人もまた、布団から出るのが辛い季節がやってくる。
雨の週明けならば尚更だ。

どうにも睡眠サイクルが狂っていけない。
もともと睡眠障害の気はあるのだけれど、この頃は午前2時、3時になっても眠くならないんだ。
眠りも浅く、朝までの間に何度も目を覚ます。
やっと眠ったかと思えばハッと目覚め、時計を見るとまだ1時間しか経って居なかったり。

そんな夜は、夜明けの白みが何よりも嬉しい。
今朝も、低い雲が灰色に変化する様を布団を被ってボンヤリと見ていた。
それなのに、待望の朝が来ても頭は廻らない。
体は眠れなくても、精神のエネルギーは回復していないようだ。
なんだかグッタリ疲れてベッドを出る。



出勤前、庭に作った畑スペースにスナップエンドウの苗を植えつけた。
先日蒔いた大根、カブ、ホウレンソウの発芽は順調。
黒土から顔を出した双葉が気持ち良さそうに秋の霧雨に濡れている。
畑の外周に菜の花の種を振り撒く。
たったそれだけで、年末から年明けに掛けて春を思わす黄色の花と、ほろ苦いオヒタシを楽しむ事が出来るんだ。

チョロQで出勤。
雨の連休明けの渋滞にもまれ、職場へ行くだけで疲れてしまう。
仕事は相変わらず雑用多し。
職場内研修の資料作りやら、某原稿の締め切りやら。

ふと自分の予定表を見ると、空けておいてくれと頼んだ来月の土曜日にしっかりと3件の予約が入っている。
何でだよ? その日は学会へ行く予定だったのに。

腹が立つ。
その事務担当者が職員旅行で台湾へ行っているのも腹が立つ。
海外へ職員旅行するほど余裕があるなら、新しい測定器でも買って欲しいものだ。
そう言えば去年の職員旅行は韓国で、その担当者は酔って大暴れしたそうな。
だらしの無い奴は嫌いだ。

昼に緑のたぬき。
午後、医事のOちゃんに手製のお菓子を貰いおやつにする。





   

仕事帰り、近所の「焼きトン屋」で1本80円の串を買って帰る。
この店は僕がまだ幼稚園頃、呑みに出る父親にくっ付いて行った店だ。
あの頃何故かレバーに恋していた僕は、ビールを呑む父親の隣でジュース片手にレバー焼きを食べていたんだ。

皿の端にぺタッと付けてくれるニンニク味噌が美味だったのを覚えている。
木造の店内全てが煙に燻され黒光りしていたのも覚えている。
しかし考えてみれば幼稚園児の分際でレバ串片手に大人の会話に混じっていたのだから、僕の酒飲みは幼少の頃から運命付けられていたのかもしれない。

夕飯は焼きトン、梅キュウ、冷奴に焼き海苔。
酒はエビスを1リットル、量り売りで買ってきた日本酒を2合。

この酒は地元の酒屋さんが山形の蔵に作らせているオリジナルの純米種。
一升瓶を持っていくと大きな保冷タンクから一升3000円で量り売りしてくれるんだ。
旨みの乗った佳酒。
その酒屋さんには小さなカウンターがあり、仕事帰りの酒好きたちが立ち飲みしていく微笑ましい光景を見ることが出来る。
酒屋さんの店内で立ち飲み(立ち飲み屋とは違う。酒販店の片隅でツマミもなく立ち飲み)する事を「角打ち」というのだけれど、
僕もいつかそんな姿が似合うようになれば良いなと思う。
本当に酒好きな人が、ほんの一合か二合、帰宅前に呑んでいく様は、古くからある良い光景だ。

今夜、気持ちよく眠ることが出来るだろうか。
時間は短くても、熟睡することさえ出来れば。
なんとか良い眠りを迎えたい。
でもそれは、今夜もまた徹夜で勤務しているMの事を思えば贅沢なことなのかもしれない。

 

 


 

07/10/7 (日)  栗を煮る

先日のドライブ中、立ち寄った農家の野菜直売所。
いくつかの野菜や漬物と共に、庭で取れたという栗を少し買ってきた。

以前の僕が住んでいた家には栗の巨木があり、この時期には焚き火をして焼き栗を作るのが何よりも楽しかった。
焚き火に投じた栗が破裂するのが怖くて、祖母の後に隠れて見ていたっけ。
祖母も栗の木も当時の庭も今は過去の記憶だけれど、この時期栗を見るとその楽しかった思い出が蘇る。

1人身の自炊生活で栗の料理など余り作らないけれど、たまには栗仕事でもしようか。
陽射しの気持ち良い日曜の朝、覚悟を決めて栗に取り掛かる。
1日掛かりで作る「栗の渋皮煮」だ。





   


栗は前夜から水に漬け、皮を剥きやすくしておきましょう。
「渋皮煮」ですから、栗の鬼皮だけを剥いて渋皮は残します。
この渋皮をいかに傷付けず綺麗に残せるかが唯一のポイント。
それさえ出来れば勝ったも同然です。


   

鬼皮を剥くためには手段も道具も選びません。
でも結局、小さめのナイフとキッチン鋏が使いやすいようです。

   

渋皮を残しこんな感じにします。
渋皮の表面に付いている筋や綿は後ほど取り除くので、今は気にしなくても大丈夫。

   

たったこれだけの栗の鬼皮剥きに1時間かかりました。
こういうチマチマした内職的仕事が実は大好きです。
蚊取り線香を焚いた縁側で、ラジオを聴きながら作業しました。

いつか引退したら、こんな事をしながら日がな一日過したいですね。
この様子を日曜だと言うのに仕事中のMに写メしたら、もうそのまま専業主夫になっちゃえば?と返事が来ました。
いや、させてくれるなら喜んでなりますけど。

   

アク抜きの為、小さじ1の重曹を加えて10分ほど煮ます。
アクで黒くなった煮汁を捨て、また重曹を加えた湯で煮て・・を3回ほど繰り返します。
もうビックリするほどアクが出ます。
真っ黒になった煮汁がグツグツと泡を立てる様子は、ホグワーツ魔法学校の薬学教授・スネイプ先生が毒を煮出している場面のようです。
3回のアク出し後、流水で洗いながら栗の表面を掃除しましょう。
筋も綿も、指の腹でそっと落としてやります。

ちなみに左の鍋は煮豚を仕込み中です。
休日に有る程度の料理を仕込んでおくのは自炊独身生活者の悲しいさが。
煮豚はこの先数日間の僕の栄養源となるでしょう。


   

アク抜きが終わったら三温糖で煮ましょう。
皮を剥いた栗が800グラムだったので、三温糖はその半分の400グラム。
ちなみにこの砂糖量は少し甘めかもしれません。
甘さ控えめが好きで保存を考えないのなら、もう少し減らしても良いでしょう。

極弱火で栗が煮崩れないように気を使い20分ほど焚きましょう。
この時点で、皮むきの時に渋皮を傷つけてしまった栗は崩れてしまいます。
あの忍耐の要る作業がこの料理のポイントだと言うのはその事なのです。

火を停めて近所を1時間ほどジョギング。
そのあと、車を洗い、犬と遊び、池の濾過機のフィルターを洗いました。
そうこうしているうちに栗は冷め、味が沁みていくでしょう。

仕上げに酒棚にあったブランデーを適量入れ、20分ほど極弱火で焚きます。
これでほぼ出来上がり。
明日の朝、もう一度火入れして半分は瓶詰めに、残りの半分はM宅に届けます。





   

夜、まだ味が落ち着いていないけれど鍋から栗の渋皮煮を出してツマミ食い。
極めて美味し。
これはウイスキーをロックでやるときに良いツマミになるだろう。
強い蒸留酒と甘いツマミは良くあうからな。

明日は前線の影響で天気は下り坂。
それは予報を聞かなくても、かつて若い過ちで潰した関節の痛みで解る。
7ヶ月入院し、5回の手術をし、申請すれば手帳をもらえるほどの障害を残し、そして数日後までの天気を感じることの出来る関節を手に入れた。
これからの季節、古傷が雨に疼く事が多くなる。
一雨ごとに秋は深まり、もう冬もそこまで来ているのかもしれない。

しかし嫌な事ばかりじゃない。
長い夜は酒を楽しむのには最適な時間だからだ。




 

07/10/5 (金)  北関東をぐるっと廻った

   

朝、低い雲から小糠雨が散る。
東京の夜明けは18度。
予報では天気は急速に回復し、昼から暑くなるという。

仕事のストレスでカチカチに硬直しているMを車に乗せ、北関東へドライブへ行った。
関越自動車道で僅か1時間。
行くたびに思う。 
東京から少し離れただけで、これほどまでに空が綺麗なんだ。
コスモスの揺れる道を、目的も無く、予定も無く、ただ気持ちの良い景色を探して走った。

こんな時は仕事の話はご法度で、CDなんかも聞かず当地のFMでも点けておけば良い。
予報どおり天気は回復し、綺麗な秋の空。
エアコンを切って窓を開ければ、早朝の雨に濡れた土の匂いやら、肥えの匂いやら。
そして甘く懐かしい独特の香り。
あ、金木犀が咲いているよ。

やはり朝夕に冷えるのだろう。
東京ではまだ咲く気配を見せない金木犀が、ここでは誇るように香っている。
少し走っては車を停め、田の畦を散歩し、川に下り、直販所の野菜を冷やかす。
収穫の終わった田、コンニャクの畑、河原のススキ、どこかから漂ってくる懐かしい煙の匂い。

天気は良いし、車も調子良い。 季節の気配が濃厚な山里を見ながらドライブをした。
ただそれだけで鬱憤が昇華し、気持ちが優しくなってゆくのを感じる。
ああ、もうずっとこのまま走っていられれば良いのにな。




   


僕の車は万能だ。
こんな時のために、トランクに温泉入浴セットも積んでいるぞ。
汗を流そうと、数年前に一度来た温泉を記憶を頼りに探り当て、平日昼間の幸せに浸る。
平日に仕事を休める有り難さは、例えば温泉に来て露天風呂に誰も居ない事でも充分に感じられるんだ。
この湯を独り占めする快感。

眼下に川を見下ろす源泉100%のこの露天風呂。
休日はどんな混雑ぶりなのだろう。
そんな事を思いながら、脳ミソが解けて流れ出すまで湯に浸かる。
沢を流れる水の音を聞いていたら眠くなってしまった。
眠くなったら眠っても良い。 そんな状況はとても幸せなのかもしれない。
湯に浮いて、少しだけウトウトとした。

付き合い始めた10数年前、温泉に行っても湯にゆっくり浸かる習慣無くアッと言う間に上がって来たM。
今ではスパルタ教育の甲斐有って、僕より長湯する。
40分も湯に浸かり、フヤケて上がってきてもMはまだまだ出ては来なかった。
よほどこの湯が気に入ったんだろう。
今日はもうこれだけで、遠くここまで来た甲斐があったね。

畳の部屋で腰を揉んであげていたら、程なく彼女は寝てしまった。
夜勤が続いた疲れは体よりもむしろ精神の奥底に沈殿しているのかもしれない。


   

秩父まで帰ってきて、幹線道路から外れ細い道を行くと一面に白い花。
蕎麦だ。
そうだ。 この辺りは蕎麦の産地で、以前、新蕎麦の時期に唸るほど美味い蕎麦を食べた事があったっけ。
でもこれほど蕎麦の花が咲いている光景を見たのは初めてだな。

まるで野花の様に控えめで可憐な花は、いつまで見ていても飽きる事が無い。
蕾を、花を、そして実を指差しては蕎麦畑を歩く。
「影森」という素敵な名の駅へ電車が滑り込んでいく。
何だかとても気持ちの良い午後だ。

そして腹がへっている事に気付く。
今日は朝、朝マックを食べて以来マトモに食事をしていないじゃないか。


   

今、花が咲いているのだから新蕎麦にはまだ早いのが解っているのだけれど。
それでも蕎麦屋さんに駆け込み蕎麦をたぐる。
これはMが食べた分。
僕はせいろを2枚も平らげ、キノコの炊き込みご飯までかき込み、蕎麦湯でやっと人心地をついた。

この辺りは去年の大晦日、なぜか思い立ち1人で「札所巡り」をしたところだ。
秩父34箇所巡りと書かれた僕の納経帳には、あと一つの御朱印を残すだけだ。
最後の一箇所は今年、紅葉の時期にまたMと再来しよう。

あの納経帳がが全て埋まったら、やはり感動するだろう。
でも、それでも満足はしないだろう。
なぜか秩父という地に惹かれる僕は、また札所巡りをする気がする。
前回は車だったから、次回はきっと徒歩で廻ろう。
キリスト教の家に育った僕には、それがどんな意味を持つのかも良く解らないけれど。




夜は焼き海苔で酒を呑んだ。
今夜は久しぶりに早くに寝るつもり。
明日はどんな1日になるのかな。
土曜日で忙しくなりそうだから、1時間早出をしようか。
Mもまた、先の見えない仕事の日々が始まるんだ。

 


 

07/10/2 (火) かぐや

9月14日、種子島から打ち上げられた日本の月観測船「かぐや」が地球から11万キロの所で撮影した画像
漆黒をバックに浮かぶ地球がとても綺麗。
地球って本当に青いんだ。

かぐやはあと数日で月に到着。
上空100キロの軌道を周回しながら一年間にわたり、アポロ以来最大の月探査をする予定。




いつも仕事帰りに汗を流していたスポーツクラブ。
天然温泉を掘り当てクアハウスに衣替えしてしまってから居心地が悪くなってしまい辞めてから一ヵ月。
体が運動を求める。
もともと肥る体質ではないけれど、根っからのビール好き。
美味しく酒を呑むために、日常的な運動が欠かせない。
昨夜、夜遅くまでやっている公営の体育館に初めて行って見た。

一回200円で使えるその体育館の設備に驚いた。
豪華なんだ。
巨大な温水プールと室内運動場、屋外エリアには一周500メートルのジョギングコース。
40台のマシンを備えるトレーニングルームにはインストラクターが常駐し、その人にあったプランを丁寧に指導している。
サウナや大きな風呂と言った贅沢な設備こそ無いけれど、運動すると言う目的に使うなら会員制のスポーツクラブに遜色ない。
自宅から車で10分の場所に、これだけの施設があったなんて。

たった一ヵ月の間が開いただけなのに、負荷を掛けた筋肉が悲鳴を上げる。
トレッドミルの上でフラフラする。
ストレッチマットの上にへたり込む。
緩んだ体を痛めつける快感。
これでまた、帰って飲むビールが美味くなるだろう。
これは良い居場所を見つけてしまったな。


今朝、肌寒さで目が覚める。
気温は17度。
小雨の朝。
先日大根の種を蒔いた畝が気持ち良さそうに濡れている。
しっとりと雨を吸い込んだ土に抱かれ、種は少しづつ膨らんでいるだろう。

オレンジに染まる前の柿の実が一つ、カーポートの屋根に落ちる。
花季を終えた朝顔のツルには種を包んだ実がゆれている。
いつの間にか鳴かなくなった鈴虫の水槽、匂いを無くした芝生、下を見て歩く。
何度も繰り返される季節。
その度に苦手だと自覚する秋。

車で出勤。
午前、月初め特有の雑務を大量に抱える。
本来の業務は捗らず。
そうこうしている間にも予約の電話は鳴り続け、今月の予定表が真っ黒になる。
ああ、この生活はいつまで続くのだろう。
いや、今の生活にそれほど不満が有る訳でも無いのだけれど。

午後、少し難しい仕事に没頭する。
たまにこういう種類の仕事が舞い込むと、とても新鮮。

夕方、仕事に疲れきったMから何通かメールが来る。
過酷な勤務の続く彼女は、解放されるまであと16時間(!)
誰かの犠牲の上に成り立つ世の中に、唾を吐きたくなる。




仕事帰り、和菓子屋で手土産を買っていつもの心療内科。
とりとめもない話を暫らく垂れる。
ここにこうして通っているうちは、僕も立派な患者だ。
そして、僕の主治医とこうして話している時間が僕は好きだ。

夕飯には出汁巻き卵を焼いた。
他にシラスおろし、玉コンニャク、焼き海苔。
酒はエビスビールを1リットル。 後に「遊穂」を2合。
程々に酔ったところでベッドへ入り、また遅くまで本を読もう。
今読んでいるのは「水滸伝・第12巻」