2007/82007年08月30日


 


07/8/31 (金)  忘れもの

小雨降る朝。
起きた時の気温は22度。 
たった数日で見事に季節が入れ替わった。

収穫の終わったトマトを引き抜き、暫く土を休ませよう。
夏の間、充分に楽しませてくれたトマトの苗はコンポストへ。
やがて堆肥となって来年の畑に帰るだろう。
暫くしたら、カブと大根の種を蒔こう。
水菜も播種を待っている。

チョロQで出勤。
霧に白く煙った幹線道路の分離帯でカンナの花が散りはじめている。
FMのDJが今日は8月31日です、と言っている。
8月31日という言葉の響きが物悲しい。
子供の頃、永遠とも思えた夏休みも気付けばあっと言う間に往く事を知り酷く悲しんだ。
そんな時、国語の教科書で出合った詩を今でも良く覚えている。

       入道雲にのって
       夏休みはいってしまった
       「サヨナラ」のかわりに
       素晴らしい夕立をふりまいて

       けさ 空はまっさお
       木々の葉の一枚一枚が
       あたらしい光とあいさつをかわしている

       だがキミ! 夏休みよ
       もう一度 もどってこないかな
       忘れものをとりにさ

       迷い子のセミ
       さびしそうな麦わら帽子
       それから ぼくの耳に
       くっついて離れない波の音

    高田敏子 「忘れもの」



土曜からの月始めに備えての事務仕事。
午前中はずっとPCの前に座っていた。
総務と秋の健康診断の打ち合わせ、会議室の予約、勉強会の打ち合わせ。

昼食後、昨夜殆ど眠らず朝まで(←良書)を読んでいた煽りで眠気に襲われる。
事務所のOちゃんに匿ってもらい30分だけ当直室で仮眠。
夕方、今日で定年退職する用務のHさんに挨拶。
40年間、お疲れ様でした。
退職後は念願の沖縄暮らしを堪能してください。

職場からの帰り道、スポーツジムへ寄る。
ここへ来るのも今夜で最後。
最後くらい頑張ってみようかと思うも、信じ難いほどに混雑しているマシンエリアを見て退散。
天然温泉の威力はここまでのものなのか。
長く親しんだ場を去るのはやはり寂しいけれど、居心地が悪くなってしまえばそれまでだ。
ゴッソリ辞めていった常連の人たちは他のジムへ移籍したのだろうか。

   

夕飯は作る気力なく非常用棚から持ってきた缶詰。
たまに食べるとジャンクな美味さがたまらない。
エビスビールを1本、日本酒は広島の宝剣。

Mはまた徹夜の勤務。
今夜も照明の落とされたあの病棟の廊下を、ナースコールに追われ走るだろう。

 

 

 

 


 

07/8/30 (木) 病気のこと

ここ2日間、自宅のインターネット回線であるybbからhotmailに繋がらない。
メッセも駄目、某巨大掲示板にも繋がらない。
「ybbの北米経路バックボーンであるNTTcomで障害発生」との事らしいのだけれど、Yahooから正式な障害情報は出て居ないようだ。
困っている人は多い様で、某掲示板ではちょっとした祭りになってしまっている。
そんな訳で、僕へmail連絡くださる場合はhotmail以外のアドレスへお願いします。

それにしても、障害はしかたが無いとしても、障害報告は迅速に出してもらいたいな。



小糠雨の朝。
水の中をゆくかのような重い湿度。
色を無くした風景の中で、オクラの苗が綺麗な薄黄の花を咲かせる。

いつもより1時間早い時間にチョロQで出勤。
着替える時間ももどかしく今日の仕事を始める。

機器を持って数箇所の建物を渡り歩く。
階段を駆け上がり、渡り廊下を走り抜ける。
気温は低く、25度。 でもエアコンを切られ送風のみとなっている館内の湿度は飽和状態。
真夏の頃でもこれほどの汗をかく事は無かったろう。

一仕事を終えた後で不快感に耐え切れずTシャツを着替える。
時間が有ればシャワーを浴びたいけれど叶わず。
昼はまたカップ麺。
食べる時間が有るだけ良いと思うべきか。

午後もずっと走り回っていた。


夜、こんなニュースを読んだ。

鳥取空港で29日夕、乗客の女性が「閉所恐怖症」による体調不良を訴え、東京行きの全日空機が遅れるトラブルがあった。
全日空東京空港支店鳥取空港所では「唖然とするような理由。他のお客様のご迷惑を考えれば、航空機に搭乗すべきではなかった」とのコメントを発表した。
全日空によると、29日午後6時10分ごろ、鳥取空港で鳥取発東京行きの全日空298便が離陸のために滑走路に向かう途中、
乗客の女性が突然、体調不良で「どうしても降機したい」と訴えた。
同機には女性を含め乗客158人が乗っており、そのままターミナルに引き返して女性を降ろした後、24分遅れで離陸した。
女性は客室乗務員らに「自分は閉所恐怖症。乗ってみたけど、どうしてもダメだった」と説明。女性はその後、JRで東京へ向かったという。

読んだ瞬間に全身が冷たくなった。 そして悔しいけれど涙が滲じむ。
この人は間違いなく僕と同じ病気。
これはパニック発作だ。

確かにこの人は他の乗客に迷惑をかけたし、飛行機に乗るべきじゃ無かった。
それは批判されて仕方が無い。
全日空の「唖然とするような理由」と言うコメントにも文句は無い。

でも、僕にはこの人の苦しみが良く解る。
このニュースを読んだ人の殆ど全てが迷惑な話だと苦笑したとしても、僕だけはこの人の辛さが自分の事のように理解が出来る。
もしかしたら飛行機に乗れるのではないかという淡い希望も、発作の辛さも、その結果他人に迷惑を掛けてしまった悲しさも。
だから、同情と悔しさの涙が滲む。

この人のところへ走って行って、辛かったねと抱きしめてやりたい。
苦しんでいるのは貴方だけでは無いよと言ってあげたい。
それが癒しになるのなら、一緒に泣いても良い。
ああ、ちきしょう。なんて酷い病気なんだ。

僕だって、数年前の夏の日に突然発作を起こすまでは、まさか自分がこんな病気になるなんて思っても見なかったんだ。
旅行が好きで、毎年のように海外へ行っていた僕が、飛行機も電車も乗れず、車での移動しか出来ない体になるなんて、想像もしなかった。
病気の辛さも、そしてその病気を隠したいと言う気持ちも、発症してみて初めて解った。

あの日から、僕の生活は全く違うものになってしまった。
親しい人が久しぶりに東京へ出てきて、「新宿のいつもの店で飲もう」と言われても行く事が出来ない。 呑みに車で行く訳にはいかないからだ。
職員旅行で韓国だ、中国だと言われても行けず、付き合いが悪いと言われる。
仲の良かった友達が地方で結婚式をしても、それにすら行けない。 だって飛行機に乗れず車で1000キロも走って行くわけに行かないじゃないか。
僕はたまたま職場が近いけれど、電車通勤を余儀なくされているこの症状を持つ人たちは、日々どんな苦労をしているのだろう。
書いていて、また涙が滲んできた。

他人には中々説明し難い症状ゆえ、その病気を隠し暮らす事になる。
そんな、人口の2%弱と言われるこの症状を持つ人たちは、このニュースをどんな気持ちで読んだろう。


   

21時、疲れて帰ってビールを飲む。
庭のフェンスで作っているキュウリもこれでおしまい。
その最後の一本をもいで来て、先日行った温泉で買って来た辛味噌を付けて食べた。

日本酒が飲みたいな、と思う。
でも、今夜は疲れ過ぎて眠くなってしまった。
明日は今日より更に早く出勤しなければならない。
早くに寝よう、でも眠ったらまたすぐに朝がやって来る。
さっきからそんな事ばかり考えている。

   

 

 

 


07/8/29 (水)  ジムを辞める

突如としてやって来た夏は唐突に往く。
昨夜の雷雨が溜まった熱気を昇華させた。
そして空気は秋。
短かったけれど良い夏だった。

停滞した前線の影響で曇の厚い朝。
気温は23度。
散歩をせがむ犬の声で目が覚める。
夏バテ気味だった犬には良い季節がやってきたのだろう。
昨夜の慈雨に湿ったアスファルトの上を、嬉しそうに歩いていた。

スクーターで出勤。
夏の間使う事の少なかった為か、酷く調子が悪い。
休みの日にでもゆっくりキャブを分解整備する必要があるだろう。
もともと最高速度40キロのチョイノリが調子を崩せば、それはもう自転車の方が早いくらいだ。

仕事は月末特有の忙しさ。
残念な事、悔しい事がいくつか重なり、気持ちが重い。
誠意を込めて仕事をしているのに、それは中々伝わらない。
走り回りながら、自分は本当にこの仕事に適しているのだろうかと考える。
誰かから良い評価を得ようと頑張っている訳で無いのだけれど、もう少し報われたいと言う気持ちは確かに有る。

昼に緑のたぬき。
湯が沸くのを待つ時間無く、ぬるい湯で作った出来そこないの麺をムッとしながら食べた。
午後はイレギュラーが3つ。
残業して済ます事の出来ない種類の仕事を大量に明日へ送る。
相手のいる仕事ゆえに残業に持ち込めない事が多いのもストレスだ。




スポーツジムの前を通り、駐車場が満車な事を確認して帰宅。
今月一杯でこのジムを辞める事になるのに、最後の数日も汗を流す事が出来ない。
夏になってから殆ど満足にこのジムで運動する事が出来なかった。

気に入り、長い事通ってきたスポーツジムだから、そこを辞めるのは寂しい思いがある。
でも、ここ数ヶ月でその場所は全く違う施設に変貌してしまったんだ。
地下1500メートルまで掘削し、天然温泉を掘り当てたのが発端。
その後大規模に広告を打ち、スタジオを潰して岩盤浴とし、ロビーに大量のマッサージチェアを並べ、駐車場を増設し、
スポーツジムでは無く温泉施設として生まれ変わったんだ。
今、施設内は温泉目当ての新規会員でごった返し、駐車場前には空き待ちの車が列を成す。

マシンの上で限界まで走ったり、決められた筋トレメニューを涙を流しながらこなしたり、プールでクタクタになるほど泳いだした居心地の良いジムはもう無い。
気付けば黙々とトレーニングしていた他の人たちも、今はもう誰も残っていない。
皆、いつの間にか退会してしまったんだ。
僕の居場所が一つ無くなった。

ジムで走っていた分のカロリーは夜のジョギングで消費しよう。
美味しいビールを呑み続けるために、定期的な運動は欠かせないんだ。
でも、カロリー消費はそんな手段で出来たとしても、自分の居場所を無くした寂しさには代償しない。
僕がいかにあの場所を気に入っていたか、今にして良く解ったんだ。

   

今夜もエビスビールを1リットル。
ツマミは買って来た串カツ。
酒は純米美田。  焼き海苔とワサビ漬けを準備した。

明日は仕事が難航する確信。
でもまだそれまでには、数時間の猶予がある。
眠るまでの短い時間、読みかけの本を読みながら現実から逃避するのだ。
北方版・水滸伝、第11巻そろそろ読了。
長かった物語も残すところあと8巻。

 

 

 


 

07/8/27 (月)  温泉で昼寝をする

晴れ。
朝から気温は30度。  湿気を含んだ重い空気。
良く咲いてくれた向日葵もそろそろ終わり。  頭を垂れたその中心で種が熟している。


以前はそれなりに都心で遊ぶ事もしたけれど、この頃はせいぜい映画を観る位か。
Mと都合を合わせた休みは郊外で過ごす事が多い。
少しでも人の居ないところへ、少しでも静かな所へと。
僕が人混みを極端に恐れるせいもあるけれど、歳を重ねてMも煩い場所が苦手になってきて居るようだ。
出合った時28歳だったMも、先日の誕生日で44歳になった。

朝、埼玉のマンションでMを拾い、西へ行く。
険しい峠道を走り山梨県境を越え、標高が上がっても気温は30度を下らない。
車はファルコン号で、チョロQより遥かに大きい車幅に気を使うけれど、こう言う道を走らせたら水を得た魚のようだ。
やがて温泉へ。
何だかこの頃、温泉ばかりだけれど。

この辺では珍しい硫黄臭のする湯。
先日の海行きで酷い日焼け状態の肌に、少し熱めの湯が沁みる。
ヨシズ越しに見下ろす川で水遊びする親子連れを見ながら、ボケッと湯に浮いた。
川の音と蝉の鳴き声しか聞こえない。   
気持ちが良くて、随分と長湯をしてしまった。

この頃はMも僕の車を運転してくれるので嬉しい。
後の運転を彼女に任せ、昼間からビールを飲む事が出来るからだ。
温泉で汗を流してから飲むビールは至福だ。
目の前に大きなジョッキが置かれると、思わず唾を飲み込んでしまう。
美味い美味いを連発する僕の脇で、Mが食べていた手打ちの蕎麦も上等だった。

   

午後、温泉の座敷で昼寝する。
まだ新しい畳の匂い。 障子越しの光りが柔らかい。
ひんやりとした畳の上で眠る気持ちの良さ。
1時間ほどして目が覚めたけれど、隣で眠るMが余りに幸せそうな顔をしていたので、もう少し昼寝に付き合おう。


やがてヒグラシ蝉の大合唱で目が覚めた。
山間の陽は短い。
トンボの群れ、白いコスモス、熟したアケビの綺麗な紫、空の表情は初秋のそれ。
もう家へ帰る時間だ。



夕飯には秋刀魚を焼いた。
酒は鳳凰美田。 
温泉で買って来た刺身コンニャクを珍しげに犬が食べる。

明日から天気は下り坂。
季節が変わる。
大陸からの高気圧が太平洋高気圧を南へ追いやる。
その2つの高気圧の間に前線帯を形成し、そして秋雨が降る。
今年の夏はもう往った。
僕の夏休みもこれで終わりだ。



 

 


 

07/8/25 (土)  出勤


   


雲の多い晴れの日。
最高気温は34度。
支柱の脇の見えなかった位置で収穫を逃れたゴーヤが、熟れて綺麗なオレンジ色に染まっている。
その果肉からこぼれた種が、来年また発芽しツルを延ばすだろう。

写真は先日、海で調子に乗る僕。
この直後に大波をかぶり愛用のデジカメを水没させてしまった。
その後、カメラは起動はするものの不安定な挙動。
日常で一眼レフを持ち歩くわけにも行かず、様子を見て買い替えが必要かもしれない。




長いズボンと靴を履く。
ほんの数日だけれど、ビーサンと半パンで過ごした体が、動き難いそんな服装を嫌がっている。
腕時計、IDカード、仕事用PHS。
社会復帰の為の小物を身に付けチョロQで出勤。
往く夏を惜しむ人達が行楽へ向うのか、FMの交通情報では高速30キロ渋滞などと言っている。

午前、山積した仕事を黙々とこなす。
数日居なかっただけなのに、何故こんな事になっているのか。
訳の解らない状況に少しムッとしながら、でも目の前の仕事を片付ける。
昼に頭がオーバーヒートし大勝軒まで遠征。
午後もずっと部屋に篭り、誰とも話さず仕事に没頭した。

夜、幼馴染といつもの店に呑みに行く。
奴と飲むとつい自分のペースを外してしまう。
幼稚園の頃からの付き合いが、外呑みの緊張感を溶かし自宅に居るかのように寛いでしまうからだ。
ついつい呑み過ぎ、数件目の店を出た後の事を良く覚えていない。
歩きながらM宅に電話をすると、もう眠っていた子供が出た気がする。
お母さんは夜勤だと言っていた気がする。
少しの罪悪感を感じながら、更にもう一軒をハシゴしたのだ。

散財し、頭痛と共に帰宅。
パタンパタンと尻尾を振って犬が出迎えてくれた。

 



07/8/某日  

   

今年もまた、母の実家の有る海へ行く。
8月も後半に入っての短い夏休みだけれど、まだきっと有るだろう夏の景色を存分に見て来たい。
いつものフェリーに乗ると、まるであの頃のようにはしゃいだ気持ちになる。
船室になんか入らずに、ずっと景色を見ているのもあの頃と同じだ。

喘息に苦しんだ子供時代。
海風が病気に良いと信じた母は、僕の夏休みをその海で過ごさせた。
あの頃の母の実家は大家族で、毎日が宴会のような賑やかさ。
目の前に海が迫るその家で過ごした子供時代の夏休みを、僕は忘れる事が出来ない。

車は新チョロQ。
座席を畳んだ後部には、海で遊ぶ機材を満載してきているんだ。
窓を開け、海辺の道を走る気持ちの良さ。
もうここまで来たらエアコンなんて要らない。
湿気を含んだ濃厚な海の匂いを楽しみたい。

やがて母の実家。
顔見知りの犬「とびちゃん」が納屋で尻尾を振ってる。
その納屋には、20年も前に飼われていた牛のハナコの匂いが今でも染み付いている。
干されたトウモロコシ、錆びついて動かなくなったホンダのスーパーカブ。
この家で飼われている12匹の猫達。
生い茂るマツバボタン、防砂林の松の大木。 そしてその向こうに見える海。
ああ、今年もまた此処へやって来た。

玄関の鍵は開いたまま。
今、この大きな家に1人で住む叔母は、クラス会で銀座に行って居るんだ。
勝手に入り、勝手にシャワーを浴び、とびちゃんを連れて墓参りへ行く。
その墓には沢山の人が入っている。
あの頃、いつも僕を出迎えてくれた祖父母も叔父も、従兄弟もみな逝ってしまった。
そう、仲の良かった従兄弟は今はもう居ないんだ。
墓に刻まれたその名前を見ても、従兄弟の早世がまだ信じられない。
好物のスイカを持って、いまにもその影から顔を出しそうな気さえするんだ。





   

いつもの磯。
防波堤の反対側は広い砂浜だけれど、僕は断然磯の方が好きだ。
磯遊びほど楽しいものは無い。
潮溜まりに取り残された小ハゼの群れ イソギンチャクに指を入れると潮を噴く。
岩を走る大量のフナ虫、ヤドカリが僕を見上げる。
そしてクーラーボックスに大量のビール。
海に来ると生き返ったような気がする。
海はまったく、素晴らしい。

以前はそれなりに観光客も居た海だけれど、この頃はもう誰も遊びに来ないと言う。
数件有った民宿も閉鎖してしまった。
今の子供達は、夏に海で遊ばずに何をしているんだろう。
それとも綺麗な観光ホテルにでも泊まっているのか。

でも、そんな事どうでも良い。
僕は他に誰も居ないこの海が好きなんだ。
そして調子に乗った僕は岩場で大波を被り、愛用のデジカメを駄目にし、気に入りのフィンを流してしまったのだった。

夜、銀座から叔母が帰る。
あんな暑い所(東京)には二度と行きたく無いよと言っている。
そりゃそうだ。  僕だってあんな所に帰りたくない。

日の出と共に起き、普段は食べない朝食を食べ、犬と浜を散歩し、昼間の時間をずっと磯で過ごし、夜眠る前にまた浜を歩く。
月に照らされて光る海をMにも見せたいと思った。
夜の街灯に集まるカブトやクワガタを見たら、虫好きなMの息子は何と言うだろう。

数日の間に30本のビールを飲み、大粒の通り雨と共に僕の夏休みが終わる。
僕は、東京の日常へ。
叔母にも、また1人暮らしの日常が帰ってくる。

フェリーの時間を確認しようと左腕を見、自分がこの旅行に腕時計を持ってきていなかった事に気付く。
分刻みで動いている普段からは想像も出来ない事だ。
腕時計なんて、見たくも無い。




東京へ帰り、また排気ガス臭い空気の中での日々が始まった。
怠惰な数日間が嘘の事のようだけれど、ヒリヒリと痛む日焼けが、それが本当に有った事なのだと気付かせる。

環八で渋滞に埋まりながら思う。
犬のとびちゃんは今も庭に穴を掘っているだろうか。
あの墓地では今も狂おしい程に名残りのセミが鳴いているだろうか。
流してしまった黄色いフィンは、海流に乗ってもうどの辺まで漂ったろうか。

 

 

 

 


 

07/8/20  向日葵


   

自宅から車で2時間。
気に入りの秘密の場所にて。

Mと1日川遊び。
水に入る準備をしていかなかった僕は、下着のパンツ一枚になり冷たい川を楽しんだ。
やがて、当然のようにそのパンツも濡らしてしまい、もうどうでも良いやと泳いでしまった。

小魚の群れ。
子供の頃マッカチンと呼んでいたアメリカザリガニ。
8月の陽射し。
高度1万メートルは有りそうな積乱雲。
そして河川敷沿いで作られている見渡す限りの向日葵たち。

カメラを向けると向日葵がみんな僕を見ているようで、パンツ一枚の僕は何だか照れてしまったよ。




明日から1人で海。
浜でビールを飲み、放心してこよう。
来年の夏にまた出会うまで、夏の記憶を刻み込んでくるんだ。





07/8/19 (日)  秋刀魚苦いか

早くに起きてウロウロ歩く。
今年新調した黄色のビーサンでパタパタ歩いていたら、隣のウチの犬に吼えられてしまった。
雲の綺麗な朝。
ギンヤンマがスィーと飛んでいく。

午前は畑。
炎天下、日照りで元気の無い里芋のケアをし、ゴボウを引き抜き、落花生に土寄せをし、カボチャの実を撫でた。
サツマイモは極めて順調、大収穫の予感。 トウガンも5個の結実を確認。
日に照らされ温かくなったトマトを一つもぎ、ガシガシと齧る。 美味し。

帰宅後、チョロQの屋根にキャリアを取り付け、池の濾過フィルターを掃除し、メダカに餌をやった。
犬に牛乳をやり、鈴虫に霧をかけ、膨らみ始めたハスの蕾を観察した。

風呂に入ってボンヤリしていると幼馴染が遊びに来て外出。
新座の江川亭で昼食。 
朝から汗を絞りきった体に、濃い味のラーメンが美味い。

フラフラとドライブし、秋ヶ瀬公園に車を乗り入れ川で遊んだ。
ビーサンで踏み入れる川底の感触が懐かしくて、30年数年前もそうだった様に幼稚園時代からの友人と水遊びをした。
河原を渡る風が気持ちが良い。
そこに微かな秋の気配。




   

夕飯には今年初めての秋刀魚を焼いた。
秋刀魚を食べる度に思い出す。
  
  あはれ  秋風よ  情(こころ)あらば伝えてよ 
  男ありて  今日の夕餉に ひとり  さんまを食(くら)ひて 思ひにふける と。

で始まる佐藤春夫の「秋刀魚の歌」
この詩を暗唱したのは、もう何年前の事だろう。

酒はエビスビールを1リットル。
その後愛媛の加儀屋・純米生原酒。

夜勤が続いたMはどうしているだろう。
電話をしてみたいけれど、疲れ果て、もう眠っているだろう。
今日、畑で抜いたゴボウの太さを
今日、荒川で来た綺麗な雲を
今日、犬と見たアブラゼミの孵化を
今日、咲いたヘブンリーブルーという名の朝顔の事を、Mに話したい。
彼女の事を考えながら、今夜はもう少し飲もう。

明日は上空に入る寒気の影響で不安定な天気。
最高気温も平年並み。
もう、処暑も近い。
今年も夏が往こうとしている。

 

 

 


07/8/16 (木)  最高気温更新

朝から凶暴に陽が照りつける。
気温は8時の時点ですでに33度。
昨夜、水をやり忘れた路地植えの朝顔が葉を萎らせ、うな垂れている。




   

Mと奥多摩の山へ散歩に行く。
車は新チョロQ。
エンジンのナラシを兼ねて夏らしい景色を探しに行った。
東京と山梨を繋ぐ柳沢峠は、長く険しい。  急勾配の続くこの道は、軽には少し荷が重い。

でも、そのお陰で僕らは素晴らしい集落を発見した。
ファルコン号ならあっと言う間に通り過ぎてしまう峠道をゆっくりと登って来たからだ。

峠道から分岐する、対向車が来たらすれ違いは出来そうも無い林道のその奥。
そこに、まるで箱庭のように存在する集落。
荒れたコンクリートの細道の両脇に沢山の花が咲き、沢を流れる水は手を切るように冷たい。
むせる程の草いきれ。
かやぶき屋根の家の前で大きな犬が昼寝をしていた。

車を停めて、すこし歩いた。
気温は高いけれど、不快ではない。
コンクリートで覆われた都心の暑さとは種類が違うんだ。

   

長い坂を一気に下れば、山梨県。
そこで昼食にする。
天丼と大盛りのざる蕎麦を注文し、半分コに分けて食べた。
しかしこのざる蕎麦、いくら大盛りとは言え少し量が多すぎだ。
とても美味しかったけれど。
食後にオバチャンがサービスで持ってきてくれたプラムは、さすが果物産地で有名な土地だけはある美味いモノだった。

勝沼の街を少し歩いた。
そこの暑さは半端なモノでは無く、陽炎の立つ路面のアスファルトが溶け、僕の履いているビーチサンダルに粘り付くほどだ。
一番暑い時間、商店街を歩く人も居ない。
この車に車外温度計は付いて居ないけれど、おそらく38度は有っただろう。
後で知ったのだけれど、その時熊谷では72年ぶりに日本最高気温記録を更新していたらしい。

炎天下の散歩で滝の汗。
風呂に入ってさっぱりしよう。




   

標高700メートルの高みから甲府盆地を見下ろすこの温泉は、僕が最も気に入っている露天風呂だ。
家から遠い事もあり昼の時間帯でしか入った事が無いけれど、夜景と星を見ながら入る風呂は最高らしい。
デッキに寝転がったり、また湯に浸かったりを繰り返す。
風呂の周りでは早くもススキの尾花が揺れている。

やがて、かつて記憶に無い程の雷雨に襲われる。
雨の露天風呂が大好きだけれど、そんな生易しい降り方ではなかった。

遠雷が聞こえたかと思ったら、ほんの10分ほどでやってきた嵐。
痛いほどの大粒の雨、突風。
自分の目線と同じ高さで水平に走る稲妻、そして間髪入れずにとどろく雷鳴。
それは音と言うより体全体で感じる衝撃波だ。
腰にタオルを巻き、脱衣所で夕立ちの去るのを待つ。
小さな子供が雷に怯えて泣いている。
僕にとっても、これほどの恐怖を感じる雷雨は今までに経験が無かった。
それは大気現象の偉大さを体中で感じた瞬間だ。

10分で嵐が去る。
一気に下がった気温。
完璧な夏の日の、完璧な夕立ち。
そしてまた、強い陽射しが降って来る。
甲府盆地全体がキラキラと輝いていた。




雁坂トンネル、秩父経由で帰宅。
走行距離は320キロ。
また綺麗な夏の1日が暮れる。

夜、火照った体をビールで冷やす。
塩をかけたトマトが美味い。

太平洋高気圧の隆盛も長くは続かず、明日は北から寒気を伴った前線が下りてくる。
僕には解る。  今日が今年最後の完璧な夏の日だ。
週末崩れる天気を挟んでまた晴天はやってくるけれど、それはもう初秋のそれだ。

でも、まだ足りないんだ。
名残りの夏を少しでも感じたい。
予報では雨だけれど、やはり来週海へ行こう。
母の実家で従兄弟の墓に線香を灯し、そして1人で磯遊びをしよう。
この時期の温かい雨に打たれて海で遊ぶのも悪くはない。








 


07/8/15 (水) 暑い!

   

終戦記念日。
祖母が元気だった頃、繰り返し繰り返し聞かされたその日の暑さを思う。
そんな猛暑の日。
アメダスによれば、練馬の最高気温は38度に近かったらしい。

ファルコン号で出勤。
普段40分掛かる渋滞の道を、その半分の時間で飛ぶ。
夏休みか。
この時期の空いた東京は嫌いじゃ無い。

盆暮れ正月関係のない職場だけれど、ここ数日は不思議な開放感がある。
おエライ人達がごっそりと夏休みを取って居ないからだ。
その分、僕がある部署の臨時責任者となってしまっているけれど、そんな事のプレッシャーより開放感の方が余程に大きい。

空調の利いた職場の窓から空を見る。
雄大な白い積乱雲。
コントラストの強い光りが全てモノを色濃く見せる。
中庭の花壇で向日葵の黄色が揺れる。
完璧な夏の1日。

午前中は病棟。
仕事の一段落したところで職場を抜け出し警察へ。
一昨日納車になったチョロQ2世号の車庫申請をするためだ。
署へ入ると受付ロビーの警官全員が、起立し黙祷していた。
終戦記念日の正午だからだ。
僕も一緒になって黙祷。
車庫証明500円。
帰り道に大勝軒でもりそばを食べた。
午後、仕事の合間に耐え難い眠気に襲われ、誰も居ないエライ人の部屋のソファーで昼寝をしてやった。

僕の夏休みは来週の火-木の3日間を予定しているのだけれど、もしかしたら月曜日も休めるかもしれない。
そうなれば日曜日からの5連休となる。
すごい事だ。
休日の数は多いけれど、連休を取り難い立場で5連休だなんて。
今更、宿の予約は難しいだろうけれど、どこかで夏を感じたい。
母の実家で海でも眺めようか。
と、週間予報を見れば日曜日から天気は下り坂。
久しく見なかった傘のマークが付いていて、気温もあまり上がらないようだ。
それを境にして秋風が吹くかもしれない。
夏は短い。
その夏の盛りを空調された職場で送るのは嫌なものだ。


夕飯は肉が安かったので、トマトとキュウリを畑から採って来て冷シャブ。
酒は販促をしていた贅沢日和という発泡酒を買ってみた。
始めて飲む発泡酒だけれど、不味くない事に驚いた。
これなら、例えば苦手なビール・スーパードライあたりより美味しく飲めるかも知れない。
酒は広島の酔心。
横山大観が愛飲したという酒だ。

明日は仕事休み。 天気は晴れ、気温が上がる予報。
あと何回あるか解らない完璧な夏を眺めに、どこかへ出掛けたい。

 


 

07/8/13 (月)  チョロQⅡ

   

退役したチョロQの後継として主力輸送機兼お遊び車の座に着いた新チョロQ号、今日納車。
梯子フレーム構造、センターデフロック可のフルタイム4WD、縦置きDOHCターボエンジン、扁平率80のA/Tタイヤ、最低地上高は195ミリ。
どんな荒地にでも乗り入れて行けそうな期待を持たせるスペック。

ディーラーで受け取り後、早速寝不足のMを付き合わせ荒川河川敷のダートで振り回す。
高い着座位置と視界のよさが印象的。
久しぶりに乗るターボエンジンも懐かしい感覚だ。

走行1000キロまでは4000rpmに抑える事。
ナラシが終わりオイル交換を済ませたら、遊び車として酷使する事にしよう。
畑作業の輸送機として、主力の車の入って行けない荒れた峠道探索機として、そして日常の足としてミッチリと働いてもらうんだ。

 


 

07/8/12 (日)  いぬがバテる

御巣鷹忌。
そうだ、こんなお盆の時期だったっけ。
数年前Mと登ったあの険しい尾根を、今年も遺族は歩いているだろうか。
あれから22年。


   

暑い。
昨日の東京の最高気温は37度。
夏バテで食欲を無くした毛深い娘に、小さな扇風機をプレゼントする。
昨夜は水の好きなこの犬と、風呂場で水遊び。
今まで数頭の犬と暮らしたけれど、水を嫌がらない犬は初めてだ。

朝起きた時の気温は29度、予想最高気温は35度。
いくら暑い夏が好きだからと言っても、この炎天下に畑作業をし、気分が悪くなり帰宅。
なんとかゴボウの収穫だけは済ませたが、他の作業を全て放棄し逃げ帰る。
完璧な夏の空。
シジミチョウが乱舞する。

昼、気温は34度。
明日で引退するチョロQ号のワックス掛けをする。
僕のところに居た1年の間に1万キロ以上を走り、文句も言わずに良く働いてくれた。
いつも沢山の畑道具を積み込んで、ある時は大量の堆肥、ある時は数十キロのジャガイモ。
洗濯機や自転車を買い、そのまま積み込んで持ち帰ってきた事もある。
新しい持ち主の元でもまた、元気で走って欲しい。

縁側でスイカを食べ、ヨシズ越しの陰影の強い景色に見入り、冷たいシャワーを浴びた。
今から家を出てM宅。
夜は空の広い荒川の河川敷へ行き、深夜まで流星群を見る予定。
ペルセウスは僕とMにとって忘れられない思い出の流星群なんだ。






 


 

07/8/9 (木) ドライブ

8月、東京の平均気温は観測史上2位の暑さ。
広く太平洋高気圧に覆われ、猛暑が続く。
凶暴さを増した太陽からジリジリと熱射が降り注ぐ。
そんな真夏日に誘われてMとドライブへ行った。




まだ開通したばかりの日野バイパスで甲州街道・日野橋の渋滞を避け八王子バイパスへ抜ける。
料金所を抜けてすぐに右折、413号線を暫く走ればもう都会の喧騒は無い。
津久井湖のダムを見下ろし、鼠坂から牧馬峠へ。
長い坂を下れば、眼下に道志川が見えてくる。

水栽培で作るクレソンの出荷量日本一という道志村は水処。
村内いたる所から湧水する水が驚くほど冷たく気持ちが良い。
古くからの集落で、街道沿いには無数の石碑群。
その中には、僕が写真を収集している月待ちの碑も多い。
北に月待ちの山である二十六夜山。
古い民族信仰の一つである月待ちは、村人が夜通し語らいながら月の出を待つ素敵な風習だ。

   

道志川で遊び、直売の焼きトウモロコシを喰らい、猫とじゃれた。
濃い山の緑、田でゆれる稲、その上を驚くほど大きいトンボが飛ぶ。
ひんやりと冷たい岩の上に寝そべって川の音を聞いて居たら眠くなってしまった。

昼寝から覚めてまた走る。
都留から思い出の秋山村へ。




高校の2年の時、出席日数不足で留年の危機に瀕していた。
徒歩で新宿へ出られる高校の立地も悪かったが、規則の厳しい私立高の居心地が悪く、繁華街をぶらつく方が遥かに楽しかったんだ。
補講でなんとか出席日数は確保したけれど、必修だったクラブ活動の単位を貰う事が出来なかった。
そこで古文の教師だった担任が自分が顧問をする民族学部とかいうツマラナそうな部へ僕を入れ、進級会議までに課題を提出すればクラブ単位を与えると譲歩してくれたんだ。
そこで与えられた課題が雛鶴姫の逃避行。
インターネットも無い時代、図書館に篭って調べた雛鶴姫の伝承が伝わる村が、この秋山村だ。
数箇所の史跡を廻る。
高校時代の秘話はMには話して居ない。
なぜ僕がこの地の伝承に詳しいのか、彼女は不思議に思っただろう。

更に富士へ向かって走る。
山中湖、河口湖の周辺は観光地だ。
家族連れや体育会系の大学生で溢れている。
車は渋滞し、道の両脇には土産物屋が並ぶ。
僕の大嫌いな人混みだ。逃げなければ。

腹も減った。
Mの好物、ほうとうを食べに行こう。
いつもの店。 メニューはほうとう一つだけだ。
エアコンの無い店で、ぐつぐつと煮込まれたほうとうを食べた。
暑い時に食べる熱々の麺が美味い。
濃い味噌味の汁を残さずに飲み干した。
滝の汗。

137号線を御坂へ向おう。
トンネルの手前で旧道に入り、クネクネとした峠道を登る。
ここで是非見たい物が有る。
天下茶屋だ。

太宰治が心中を遂げたのは、僕の家の近くを流れる玉川上水だ。
その墓もまた近所にある。
小学校では入水現場を見に行き、中学校では桜桃忌として知られる太宰忌を見学に行った。
だから僕らの同級生は、太宰治に何かしら親近感を持っていると思う。
その太宰が数ヵ月滞在し、小説「富嶽百景」の舞台としたのがこの天下茶屋だ。

   

二階の太宰記念館から外を見た。
当時の建物ではないけれど、景色は変わらないだろう。
窓から見える富士を太宰はたいそう気に入っていたらしい。

涼しい風。
眼下に広がる富士と河口湖。
ああ、ここは何て良いところなんだろう。
帰りたくないな。



18時、中央高速を東へ飛ぶ。
僕は、冷えたビールの待つ自宅へと。
Mは、徹夜勤務の待つ職場へと。

 


 

07/8/8 (水)  あさがお

   


立秋の朝、海の色の花が咲いた。

 


07/8/7 (火)  すずむし

夏らしい日が続く。
梅雨の日照不足で元気の無かったナスの株も、また薄紫の花を沢山付けはじめた。
職場近くの大きな公園ではセミが大合唱。
アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクホウシ。 うるさいほどの合唱が嬉しくて、窓を開けて聞き入ったりする。
彼らは短い夏を無駄にせぬよう、必死に歌う。

やがて晩夏となり、セミの声はヒグラシに代わるだろう。
夕暮れになると聞こえてくるカナカナカナという寂しげな声を聞くたびに悲しくなる。
夏が往き世の中の良い事なんかもう皆終わってしまうんだ。
やがてまた暗く寒い季節を俯いて過ごすようになるんだ。 なんて悲観する。
それは子供の頃も大人になってからも変わりはしない。
大人になるなんてただ歳を重ねるだけで、精神的なものなど子供の頃と実は変わらないのかもしれない。
少なくとも僕はそうだ。

さあ、秋風が吹くまではまだ猶予が有るぞ。
セミに負けず僕も頑張って歌おう。




午前中はルーチンワーク。
昼にカップラーメンと「ガリガリ君」。
午後は会議。 ずっと会議。
会議と言うのは忍耐力を養うのに最適な時間だ。

仕事帰りにジムへ寄り少し体を動かした。
ホームセンター、レンタルDVD屋、いつもの地酒屋は定休日で今夜は日本酒を飲まない珍しい夜になる。

 

   

毎年育てている鈴虫が、今年もまた鳴きはじめた。
一夏を鳴き、卵を産んで死に、次ぎの世代が産まれまた季節を繋げる。
そう言うのって素敵だ。

まだ、どのオスも上手く弓を使えず鳴き方はぎこちないけれど、それがまた可愛い。
彼らの好物はナス。
新鮮な無農薬ナスには事欠かない。
彼らはナスを幸せそうに齧る。
僕は誰の役にも立たない存在だけれど、少なくとも鈴虫は、あと恐らく犬も幸せにする事が出来るんだ。

夕飯にはキュウリを丸齧り。  自家製の梅干しタタキを付けて食べるキュウリは美味い。
他にイクラの醤油漬け、小イワシの丸干し。
酒はエビスビールを1リットル、その後泡盛を飲むかもしれない。

 

 


 

07/8/5 (日)  美味いビールを呑む

あっ、日記を書こうとして日付を97/8/5と書いてしまった。
10年前!
でもそれは、驚くほどの昔では無い。
すでに僕の隣にはMが居たのだから。
その年の夏も今と変わらずビールを飲んでいたのだから。


   

朝5時半、夏の気配で目が覚める。
何がそう感じさせたのか解らないけれど、今日が素晴らしい真夏日になる予感を肌で感じた。
開き始めた紫の朝顔。
ビーサン引っ掛けて犬と近所を徘徊。
日曜の朝、まだ人通りの少ない駅前通り。

7時、チョロQに農具一式を積み込み、埼玉の畑へ行く。
ゴボウ、枝豆の収穫。
サツマイモ、カボチャ、トウガンのツルの手入れ。
落花生の土寄せ、草むしり、ナスの整枝。

痛いほどの陽射し。
昼の気温は34度、南から熱風が吹く。
この季節をどれほど待ち望んだ事か。
人混みの暑さは苦手だけれど、広い空の下で感じる夏の凶暴でそして儚い暑さが好きだ。

夾竹桃の赤、ホオズキのオレンジ、向日葵の黄、フヨウの白。
色々な色。

晴れた夏日、仕事の無い休みの日、そして広い空の下。
たったこれだけの条件だけれど、ひと夏のうちに何日そんな日が有るだろう。
少しも無駄には出来ない。
今年もまた肌に夏の暑さを焼きこまなくては。
そして秋になり、腕時計やビーサン跡の日焼け残りを見て、夏の名残りを感じるんだ。

夕方、美しい1日が暮れる。
今日の陽射しを溜めた肌が火照る。
どこかで盆踊りがあるのか、浴衣の女性が歩いてゆく。
今年初めてのオニヤンマが夕暮れの空を切る。

帰宅後シャワーで生き返り、今年最高のビールを飲む。
思わず唸ってしまうほどに美味い。
このために午後から水分制限をし、労苦に耐えてきたんだ。
滝の汗は今、報われる。

やがて遠雷、そして大粒の通り雨。
夕方見た浴衣の女性を思い出す。
盆踊りは踊れただろうか。

夕飯はゴボウサラダ、キュウリのヌカ漬け、マグロ赤身モロヘイヤかけ。
酒はエビスを1リットル、そしてこれからキンと冷やした日本酒をやろう。

明日もまた暑くなるだろう。
その暑さを職場の窓越しに眺めながら、また週明けの忙しさに流されるだろう。
だから今夜はもう少し夏を感じていたい。
夜にまた、犬を連れて散歩に行こうか。


 

 

 


 

07/8/3 (金)  熱

   

アザミの花が咲く。
かつて僕が好きだった女性が愛した花だ。
アザミの花には棘がある。
でも、その薄紫の花はとても美しい。




九州から日本海へ抜けた「うさぎ」の影響で南風。
熱風だ。
多湿と高温に少しバテる。
暑いのは好きなはずなのに、やはり体調が悪いんだ。

昨日は仕事休みでMと出掛ける予定だったのだけれど、咳と微熱、そしてなにより強い倦怠感で動けず。
Mも巻き込んで1日中ゴロゴロして過ごす。
普段殆ど見ないテレビを見、エアコンの利いた部屋から外界を眺めながらビールを呑み、そして昏々と眠った。
昼間からあれだけ熟睡できたのは風邪のお陰か。
ここ数日、夜になると咳き込んでマトモに眠っていなかったからだ。

昼間眠ったアオリで昨夜は目が冴え、朝までテレビの台風情報をボンヤリ見ていた。
台風が近づく度に繰り返される、朝まで続くこの番組が好きだ。
衛星から見た台風の巨大な渦巻きが好きだ。
台風を迎えるときの緊張感が好きだ。

そして今朝、殆ど眠らずに出勤。
何の気無しに脇に挟んだ体温計を見て、自分が本格に発熱している事に気付いた。
明日は絶対に仕事を休む事が出来ない。
今日は退散し、自宅でまた眠り続けよう。

とにかく良く眠る事。
体の疲れにも精神の疲れにも、眠る事さえ出来れば立ち向かえる。





 

07/8/1 (水)  うさぎ

数年前から日本周辺で発生した台風にアジア名を付ける事になっている。
アジアの10数カ国が提案した名前を順番に付けて行くのだ。
台風5号が北上して来ている。
当初の予想より太平洋高気圧に押される形で西寄りへ進路を変え、勢力を増しつつ九州へ向っている。
その台風のアジア名は「ウサギ」だ。

ウサギは九州に上陸するかもしれない。
大きなウサギなので注意が必要。



   


5時起床。
気温21度。 良く晴れた夏の朝。
朝の時点で気象庁はまだ梅雨明けの宣言をしていないけれど、もう僕の中では梅雨は明けた事にする。
8月に入ったんだ、梅雨なんて言葉は似合わない。

出勤前に土用干し。
仕込み中の梅干しを梅雨が明けた頃、天日に晒す事を土用干しと言うんだ。
これで梅は柔らかく、味の沁みた美味しい梅干しとなる。
祖母が毎年やっていた梅干し漬けを僕が引き継いで、もうどれ位になるだろう。

毎年同じ作業を同じ季節にする。
今年もまた、この作業をする事が出来た。
それはとても嬉しい事だ。

昼、職場の食堂で関東に梅雨明け宣言が出たことを知る。
その途端、何だか落ち着かなくなってくる。
秋なんて、すぐにやって来てしまうんだ。
短い夏をどう過ごすか考えなくては。
長い夏休みなど望めないけれど、普段の生活の中で少しでも季節を感じたい。
そして、少しでも多くの冷たいビールをあおるのだ。
今夜にでも自宅冷蔵庫の簡易生サーバーに樽を繋がなくては。



夕方、西の空に茜雲。
夏は他の季節より空を見上げる事が多い。
何故だか解らないけれど。