2006/122006年12月30日


 


06/12/某日  秩父路のこと。 その2


   


ある札所でご朱印を頂いたあと、お寺の人がお茶と梅干しを出してくれる。
そして、この寺に伝わる物語や山門の地蔵、仁王像の事を話してくれる。
5月の花祭りのこと、そして巡礼のこと。

秩父札所のおこりは1200年代にまで遡るという。
800年続いた巡礼という行為とは何なのだろう。
交通手段の未発達な時代、旅行すらままならない時代に、遥かに遠くからやって来る巡礼者は何を祈ったのだろう。
何がそこまで人を一途な思いにさせるのだろう。

そんな話しをするうちに、車で廻っていて良いのかなという気持ちがわいてくる。
スタンプラリーのようなものだという気持ちも消えてくる。
遥かな昔から続く巡礼道を歩きたい。
車で廻ってしまうのはもったいない。



とは言っても、例えば30番から31番間は18キロ、33番から34番間は16キロ。
すべて歩くほどの装備も体力も無い。
だから、ある札所に車を停め、次の札所が歩いて行けるなら歩き、遠ければ車を使う。
2キロ程度の距離なら歩く事にしよう。
この短い日程で全ての札所を廻って見ようと言う思惑は無理となるけれど、まだこれからも機会は幾らでもある。
急ぐ事なんか無いんだ。

    

方向音痴の僕は徒歩では迷うのでは無いかと心配したけれど、前もって買ってあったガイドブックが役に立つ。
そして何より、いにしえよりの巡礼道。
古いものから新しいものまで、札所を示す道標には事欠かない。

朝からの風も収まり、気温は低いけれど陽射しの暖かさが心地良い。
冬枯れの野山を見ながら機嫌よく歩いた。



   
暗くなるまで巡り、予約を入れてある旅館へ入る。
横瀬川を見下ろす露天風呂に入り、ビールを飲み、少し贅沢な食事をし、また風呂へ入る。

夜は川の水音を聞きながら良く眠った。


   


   


翌日。
昨日の歩き過ぎが祟って筋肉痛が酷い。
それでも歩き、あるいは車に乗り、ご朱印を貰い、また移動する。
出合った人と少しだけ会話をし、また一人になり、街中の巡礼道は足早に、里山の巡礼道では景色を楽しむ。

巡礼道のどこにいても見えるのが、秩父の守り神・武甲山だ。
信仰の地の信仰の山。
この地に生まれた人にとっては普通の光景なのだろうけれど、東京の平凡な街に生きる僕はそれを羨ましく思う。
普段生活の中で意識しなくても、きっとこの山と札所は秩父の人たちの拠り所になっているんだろう。

長い歴史を霊場と共に生きてきた人たちの、札所への、そして巡礼者たちへの温かさを感じる。
それは地蔵に花を手向ける人であったり、納経帳を手に持って歩く僕に蜜柑を持たせてくれる人であったり、参道の落ち葉を掃く人だったり。
信仰の事は僕には良く解らないけれど、何かを信じることが出来ると言うのは幸せな事かもしれない。
それを信じることで、自分は1人きりではない事に気付くのかもしれない。



32番札所・法性寺。
ご朱印を頂いた後、奥の院を目指すという僕を居合わせた巡礼者が止める。
そこは往復1時間かかる極めて険しい道で、その靴(VANSのハイトップスニーカー)では無理だと。
それでも僕はどうしても行ってみたかった。
ガイドブックに載っている写真が、とても魅力的だったからだ。

しかし、歩き始めてすぐに後悔する事になる。
道とは到底呼べない幅50センチほどの獣道には落ち葉が積もり、道標は有るものの迷えば洒落にならない結果になりそうな山道。
オーバーハングし、のし掛かるような岩を見上げ、鎖を頼りに両手両足を使ってよじ登り、木の根を掴み急斜面をずり上がり、水の湧く泥場を飛び越える。
汗をビッショリとかき、本当に迷ったのではないかと心配になる頃、巨大な岩が目の前に迫る。
そして、その岩には鎖が打ち込まれ、足場として少し岩を削っただけの階段のような物が作られている。
高所恐怖症の僕は体を丸め、震えながらよじ登る。
下は断崖で、ここで滑れば絶対に助からないだろう。


    

そこに安置されるのは、大日如来像と観音像。
大日如来像は1700年代の物らしく、誰がどうやってこんな所に像を運んだのか。
どんな思いがそこに有ったのか。
高いところの苦手な僕が怖いのを忘れて暫く見入るほどに、それは神々しい魅力をたたえていた。
それはまさに、絶景だ。

ペットボトルのお茶を飲みながら汗を拭き、しばらく風に吹かれる。
火照った体が冷たい空気で醒めていくのが心地良い。
そして、我にかえる。






1人で居たいと言うくせに、巡礼の人たちと交わす会話が嬉しい。
そして、この奥の院で遥か眼下に街を見ていたら、急にMと話がしたくなった。

まだ少し時間に余裕はあるけれど、今回は此処で終わろうと思う。
今日は大晦日。
高速を使って飛んで帰れば、仕事から帰るMを出迎える事が出来るだろう。


今回、約半分の札所を巡った。
この続きはいつ出来るか解らないけれど、必ず全てを巡ってみようと思う。
一番から始めて札所番号を気にせず廻って来たけれど、最後の34番だけは前を通ったものの残しておいた。

いつか、全ての札所を廻り終え最後の34番・水潜寺へ着いた時、何を感じるか今から楽しみだ。




 

06/12/某日  秩父路のこと。 その1

暮れも押し迫った日。
年内の仕事を仕上げ、1人で逃避する。
12月はそれなりに忙しく、煮詰まって煮詰まって焦げ付きそうだった。
短い時間しか捻出できなかったけれど、1人になりたい。
行き先は、秩父だ。

東京から充分に日帰り圏内の秩父。
僕はそこの里山の風景が好きで、今までに何度行ったか解らない。
そして、行く度に目にする光景がある。
札所を巡礼する人たちだ。

四国88所のお遍路ほど有名じゃないけれど、秩父34箇所も関東では知られた札所巡りの地だ。
車を運転しながら何度か見たその人達は、白衣と金剛杖という巡礼のイメージには程遠く、
普段着で、まるでハイキングでもするかのように楽しそうに歩いていた。

ネットで得た情報では、全行程約100キロ。
歩けば6日間かかるその道のりも、車なら2日で廻れると言う。
お経を知らなくたって、正式な作法を知らなくたって(本当はいけないのだろうけれど)大丈夫。
納経帳というノートに、各お寺でご朱印というものを書いてもらえるらしい。

楽しそうじゃないか。
ドライブしながら、スタンプラリーのようにお寺を廻り、ノートに朱印を押してもらうんだ。
キリスト教の家庭に生まれ、仏教のことは何一つ知らないけれど行ってみよう。


早い時間に家を出発。
暮れの国道はガラガラで、早朝から現地入りをする事が出来た。
素晴らしく青い空。
車から降りると、キンと冷えた空気で耳や指先が痛いほどに冷える。
明らかに東京とは寒さの種類が違う。

   

一番札所、四萬部寺。
ここでは巡礼に必要な全てのものが手に入る。
僕が買ったのは納経帳(1200円)のみ。
正式な巡礼装も展示してあったけれど、もちろんそんなものは買わなかった。

売店のお爺さんによると、順路は決まっておらず好きに廻って良いらしい。
楽しんでおいでと送り出され、いい気分で2キロほど離れた2番札所へ向かった。

   

朱印とはこのようなものだ。
300円が必要だけれど、朱印を押し寺の名を筆で手書きしてくれる。
そして、その度にどこから来たのか、巡礼は今回初めてかなどを聞かれ、次は何番へ行くのか、道は解るのかと心配される。
ナビゲーション付きの車で廻っていると言い難くなる僕は、丁寧に道筋を教えてくれるお寺の人に頭を下げる。




     

順調に数箇所を廻り、朱印が増えていく。
そして、その度にするお寺の人とのちょっとした会話が楽しみになってくる。
いや、お寺の人だけじゃ無い。
どうしても廻りやすい順番で巡るものだから、同じ巡礼の人と何度も会うことになるんだ。
あの人は2番にいた人だ。
向こうから来るのは11番にいた人だ。
そして、挨拶をし、また別れる。

ある人は徒歩で、ある自転車で、タクシーで巡る人もいるし、
長く立ち話した女性は何度かに分けて全ての札所をジョギングで廻っているという。
そして、僕は安楽な車。
静かな札所にトラストマフラーの爆音が響く。(←馬鹿)

その2へ続く

 

 

 

 


 

06/12/29 (金)  また一年が往く

寒い朝。
昨日までとは明らかに違う、厳しい冬の感触。

沈丁花の蕾を観察し、犬の頭を掻いてやり、吐く息が白いのを確認してから出勤。
近所の道端で火興ししている石焼き芋売りの軽トラから漂ってくる煙の良い匂い。
昔日に好きだった落ち葉焚きを思い出す。

出勤のため車に乗ってからも暖房が効きはじめるまでの間にハンドルを持つ手が痛いほどに冷える。
朝の道はガラガラだ。
世間の多くはもう休暇に入っているのだろうか。

今年最後の出勤日。
有る程度の余裕を期待したけれど、イレギュラーの仕事が入り結局最後までバタバタとする。
昼食はカップヌードル。
久しぶりに食べるカップヌードルは思いがけず美味かった。




    

正月休みと言っても5連休。
その間に何度かは職場へ連絡を入れるし、もしかしたら呼び出されるかもしれない。
それでも僕にとっては貴重な連休だ。

大晦日、元旦も関係無しに出勤する他部署の人達に少し後ろめたさも感じる。
流行のノロウイルスにやられて点滴を受けながら仕事を続ける人。
年明けすぐの学会準備で徹夜状態の人。
年末年始に5連続で職場に泊まり込む人。
そんな人達に挨拶をして職場を出る。

24時間、照明の落ちる事のない建物を出ると、暮れなずみの時間。
透明度の高い空に、陽の名残りが陰影を作る。
今年の仕事も無事に終わったのだ。
数日後にはまた日常がはじまるけれど、濃淡の美しい空を見上げていたらそれなりの達成感が涌いてきた。





明日の早朝に家を出て、1人車で秩父へ向かう。
やはり年に何度かは1人で出掛ける必要がある。
それがたった一泊であっても、自分にとってどうしても必要な息抜きだからだ。
秩父で温泉に浸かり、山里の札所を歩いて見ようと思っている。

大晦日の夜はM宅。
蕎麦を喰い、夜勤続きのMの腰でも揉もう。
元旦の早朝、仕事へ行くMを送り出してから畑や初詣で過ごし、夜はまたM宅の予定。
次に日記を更新するのは新年2日頃になるだろう。



 

06/12/28 (木)  寒気来る

ここ暫く、僕は仕事を頑張った。
誰も褒めてくれないから、自分で自分を褒めてやる。

カップ麺にお湯を入れた瞬間に急ぎの仕事が入り、数時間後に全てのスープを吸い尽くし焼きソバのようになったシロモノを食べたり、
トイレに行く時間がなく、危うく失禁しかけたり、
エレベーターを待ちきれず重い機器を担いで階段を駆け上り足の爪を剥がしてしまったり、
右手でPCに入力しながら左手にマイクロピペットを持ち電話の問い合わせに答えながら来客の対応をしたり、
故障した遠心分離機の修理を自力でしながら他部署のHDDの交換をしたり。

そうして師走の日々は流れる。
今年が往こうとしている。

いったい僕はこの一年、何をしただろう。
ただ目の前の仕事をこなし、酒を呑み、Mと犬と畑の時間に喜びを感じる。
それでも、この一年を乗り切ってきた。
フラフラしヘロヘロになりフヌケで逃避癖が有っても、何とか今年も終える事が出来そうだ。
僕は僕なりに、頑張った。


   

家の玄関脇に植えてある沈丁花。
僕はこの沈丁花という花が好きだ。
子供の頃、春先に漂うこの香りに不思議な魅力を感じ、祖母にねだって何本もの沈丁花の苗を買ってもらった。
それらの木が有った場所はアパートとなってしまい祖母に買ってもらった沈丁花ももう無いけれど、あの頃を懐かしんで数本の小株を植えてある。

今朝撮った写真。
鼻を近づけてみてもあの芳香はまだしない。
しかし、その蕾は少しずつ膨らみ春を待っているように見える。
もう少しだ。
もう、冬至を過ぎた夕方の陽に、日が伸びてきている事を感じることが出来る。
これから本格的な寒波がやって来るけれど、それでも辛い冬の先が見えてきている。




27日までにほぼ仕事を終え、あとは29日に幾つかの予約仕事を済ますだけ。
今日は全てを投げ出してMと映画を見に行った。
娯楽としての楽しむ映画の対極。
僕の叔父はこの島で戦死しているのだけれど、もちろん会った事も無い叔父が経験しただろう地獄の片鱗を感じ涙がとまらない。
なぜこんな悲劇が起きてしまったんだろう。
そして、明日の日本の再生を信じ死んでいった人たちは、今のこの国を見てどう思っているんだろう。
よい国にしなければと思う。
僕の存在はあまりに小さいけれど、よい国にしたいという気持ちはいつも持っている。

    

遅い昼食に新規開拓店(黒潮屋・東久留米市下里3-17-12)
僕はつけ麺、Mは塩ラーメン。

美味い。
太麺好きの僕が思わず身を乗り出すほどの艶やかで美しい麺。
小麦の香りが良いそれは顎が疲れるほどにコシがあり、麺を食べる喜びに満ちている。
カツオ出汁の濃厚なつけ汁は酸味が利き最後まで飽きない。
Mの塩ラーメンは細麺と海老油の香り高い上品なスープとが見事にあい、食べすすむうちに段々嬉しくなるような一杯。

はじめて入る店がアタリだった時ほどラーメンマニアにとって嬉しい事は無い。
店主の応対もとても感じ良く、自宅から遠いけれど通い店になる予感。

その後、新しく開店した三越をひやかし、正月の買い物を少しして帰宅。
夕方、高台から見る西の地平に富士が美しいシルエットを見せる。
そしてその上に、-4等の金星が孤高に光る。



また去年のようにと楽しみにしていたけれど、正月のMは仕事だという。
去年の大晦日から1月2日に掛けて2人きりで過ごした時間の楽しさが忘れられない僕は、激しく脱力する。
部下を休ませるために自分がずっと仕事に出るのか。
それがMのやり方なのは知っているけれど、やはりガッカリせずにはいられない。

それでも、夜勤は回避できたんだ。
大晦日の夜も、元旦の夜もM宅で過ごそう。
たとえまだ暗い早朝から出勤するMを送り出すことになっても、夜だけは一緒に居る事ができる。
それだけでも良しとしなくてはいけないのだろうか。

暖冬と言われている今年の冬だけれど、今夜から本格的な寒気がやって来る。
本当の冬がやってくるんだ。
そんな中、明日一日出勤すれば僕の正月休みがやって来る。
途中呼び出される事がなければ5連続の休暇だ。
正月の準備も殆どしていないけれど、酒用冷蔵庫だけはすでに上等な吟醸酒で埋まっている。
酒の備蓄だけは抜かり無しだ。

 

 

 

 


06/12/25 (月)

   

出勤すると自室の机の上に「サンタより」の付箋のついたカッパえびせんがっ!
僕の好物まで知っているサンタって凄い。



今年中に終えたい仕事に目処が付きつつある。
昼食も、おやつのカッパえびせんも食べずに仕事に没頭したからだ。
これで予定通り30日から正月休みに入れそう。

30日~31日にかけて秩父の温泉に1人で行くつもりで予約を入れてある。
僕は秩父と言う場所が大好きなんだ。
関東随一の信仰の地として知られる秩父。
時間の許す限り、札所巡りでもしてみようか。

明日は発達した低気圧の通過で雨。
散り残しの葉もこれで一気に落ちるだろう。

 


 

06/12/24 (日)  納車

風の強いクリスマスイブ。
東京の最高気温は11度。
高層に刷毛で書いたような薄い雲。

   

Mの新しい車が納車される。
前と同じ車種、同じ色。
だから新鮮味は無いけれど、やはり新車は気持ちが良い。
交互に代わりながら試運転。
三気筒1000ccのエンジンがコロコロと良く回る。

説明書を読んだり、ステレオの操作を覚えたり、車両感覚を取り戻したり。
空いたバイパスを何度も往復しながら、新しい車を堪能した。
ヴィッツ君、これからMを宜しく頼みます。


新しい車に夢中になり、クリスマスの準備をしていない事に気付く。
ケーキの予約も、チキンの予約もしていないじゃないか。

夕方、数件のKFCやケーキ屋を回るも長蛇の列。
予約をしていなければ買うことは殆ど出来ない状況だ。
日曜日のイブをナメていた。
これでは今夜のパーティーは無理じゃないか。
参ったな・・


結局、Mに新しいステレオをプレゼントして帰宅。
今年のパーティーは無しだ。

帰り道に「小僧寿し」で一人前の寿司を買い、「いなげや」でビールを、いつもの地酒屋で広島の生酒を一升買う。
犬と風呂に入り、サッパリしてから1人宴会をはじめる。

夜、久しぶり、某掲示板に入り浸る。
懐かしいな。 
イブの夜恒例の独身男の祭りが盛り上がっている。
みんな回線の向こうで1人宴会をしながら盛り上がっている。
普段は便所の落書きのような掲示板でも、こんな時は確かに互いに通じるモノがある。
遅くまでPCのモニターを前に、泣いたり笑ったりしながら呑んでいた。

明日は月曜日。
今年の最後の一頑張りだ。










 


 

06/12/23 (土)  冬囲い

明け方、ふと目を覚ますと西へ傾くオリオンがあまりに綺麗で暫く目を奪われた。
明るい星の多い冬の星座は豪華だ。
リゲル、ベテルギウス、シリウス、プロキオン。
僕の好きな、懐かしい星達。
夜明け前の一番暗い時間帯。
東京でもこれだけ素晴らしい星を見ることが出来るんだ。

高校の天文部だったのは遥かに昔。
僕も世の中も随分と変わったけれど、星だけが少しも変わりはしない。




   

暖かい、まるで春を思い出すような日。
高気圧がもたらす恵みを体に浴びながら、機嫌よく庭仕事。

寒さに弱い木にプチプチシートで冬囲いを作る。
これは数本植えてあるグレープフルーツのうちの一本。
もう少し大きくなるまでは北風への防備が必要となる。
やがて、大きなグレープフルーツを実らせる日を妄想しながら、暖かいシートに包み込もう。

チョロQをMに貸し出しているため、農作業はせず。
それも、明日まで。
明日、クリスマスイブの日にMの新しい車が納車される。
それを機に、忌まわしい事故の記憶から立ち直ってくれれば良いけれど。
新しい車と、また色々なところへ出掛けてくれれば良いけれど。

そして、チョロQが戻ってきたら僕も停滞している畑仕事に戻る事にしよう。
まずは大根を大量に収穫し、タクワンを仕込むのだ。

なにか録画するものでもあるかとHDDレコーダーのEPG(電子番組ガイド)を見ていたら、もう紅白歌合戦までが表示されている。
このEPGには一週間少し先までの番組が表示されるのだけれど、そうか、大晦日までもうそんなに近いのか。

前回の紅白をMと見てから一年が経とうとしているだなんて。
今年も、もう終わるんだ。
そして年が明ければ僕もまた一つ歳をとる。
といっても何も変わることもなく、ただ淡々と生活をするだけだ。
なんだか世間の流れと僕の生活の間には随分と遊離が有るようにも感じるけれど、
僕はただ、静かに自分のペースで過ごしたいだけなんだ。




    300mm. 4sec露出

昼に引き続き暖かな夕。
地球照の綺麗な月齢2.8の月が西へ落ちてゆく。

サンダルを引っ掛けて友達と呑みに行く。
奴とは幼稚園の時からの付き合いだ。
今年有った事などポツリポツリと話しながら、燗酒を呑んだ。
静かな店で幼馴染との居心地の良い時間。
その安心感の中、気持ち良く酔った。

 

 


 

06/12/22 (金)

雲が低い白い一日。
雨の匂いはするけれど、結局降らず。

冬至。
今日、もっとも弱まった太陽の光は、明日からまた息を吹き返す。
地上ではこれから寒さが増すけれど、それでも今日から昼の力が増してゆく。
昔はこの日から新年が始まったんだ。

と、自分をなだめてみるけれど、春はまだ遠い。




   

どうにも煮詰まってしまい全ての予定を変更し、色々なものから逃避してMと2人、某所に篭る。
暖かい部屋。
あっと言う間に陽が暮れる。
クリスマス目前の街の喧騒を車の窓越しに眺めながら帰宅。

夜、少し不調。
ジトッと掌に汗をかき、起きているのが辛くなってベッドへ逃げ込む。

明日は高気圧に覆われ晴れの予報。
体調が良ければ畑へいけるだろう。



 


 

06/12/20 (水)

   

6時起床。
外気温は4度。
良く晴れた水曜日。  しかし、予報では天気は下り坂。

銀杏の落葉が美しい。
ハラハラと舞う葉を追って犬が走る。
犬と2人の朝の散歩は平和なひと時だ。
こんな優しい時間がいつまでも続けば良いのに、早々に切り上げて出勤準備。

仕事も年末進行となり、一日にこなしたい仕事を頭の中で組み立てながらの通勤。
お茶を飲む間も惜しんで、午前の仕事に取り掛かる。
半日がかりのルーチンを終えて昼。
午後に予定していた大きな作業が、他部署との兼ね合いで不可能な事に気付き暫くヘタリ込む。
予定が有るなら教えてくれといつも言っているのに、なぜこんな簡単なことが出来ないのか理解に苦しむ。
こっちは他の予定をキャンセルして今日の午後に備えていたというのに。

年内の出勤日はもう限られているというのに、この半日の埋め合わせに喘ぐ事になるだろう。
残業や早出で解消できる類の作業でないために、こんなことで浪費する時間が惜しい。
不機嫌になり、遅い昼に大勝軒逃げ込む。
昼の混雑が一段落した店内。
奥の座敷に上がり、読みかけの三国志第5巻のページをめくりながら濃厚醤油ラーメンを食べた。

夜、久しぶりにスポーツジムへ行きフラフラになるほど走りこむ。
やはり汗をかくのは気持ちが良い。
10キロも走っているうちに頭の中が真っ白になり、サウナで仕上げる頃にはすっかり生き返っている。
運動の心的効果は確かにある。

22時半。
遅い夕飯に湯豆腐を作る。
タラの切り身でも入れば豪華な一品だけれど、今夜のはただの昆布出汁で煮た木綿豆腐。
その豆腐もスーパーで買ったものだ。
でも、そんなモノがとても美味しい。
少しの酒と、温かい豆腐で寛いで、また明日に備えよう。
明日は早出。
そして困難な一日になりそうな予感。





 


 

06/12/18 (月) 忘年会で酔う

   

冬らしい清んだ空。
西に大きく雪を被った富士。
出勤途中、その富士見たさに少し遠回りして歩道橋を渡る。
同じ場所から富士を見る見知らぬ人と会釈。
気持ちの良い朝。

午前、午後と良い感じに仕事が進む。
疲れるのは仕事量では無く、思うように仕事が進まない事なのだと改めて気付く。
昼にコンビニの鶏そぼろ弁当。
おやつに林檎。

夜は忘年会。
その忘年会に少し遅刻して、屋上から薄明の終わった西の空を見る。
今、国際宇宙ステーションとスペースシャトルはドッキング中で、条件がよければとても鮮明に見えるからだ。
やがて、計算どおりに現れた350キロ彼方の宇宙ステーションは-2等級の光りを引いてゆっくりと飛んで行く。
地球の影に入るまでの数分間、何度見ても飽きる事の無い光点に見惚れた。

自分のお金ならきっと食べないだろう高級シャブシャブ。
普段、あまり肉を食べる事の無い僕だけれど、これは美味かった。
職場のエライ人達の忘年会で居心地は良く無かったけれど、肉の美味さについ卑しさがでる。
サッサと帰ろうと思っていた企みはどこかへ消え、腰を据えて酒を呑みはじめる。
そして、大方の予想の通りに泥酔。
こういう場で酒量を抑えられないようではまだまだ若輩だ。

深夜、肌を切るほどの冷たい風の中、自宅までの道程の遠い事。
溜息をつき、うずくまり、調子に乗って呑んだ事を呪いながらトボトボ歩く。
迎えに行くとのMの有難い提案を断り、やっとたどり着いた時には心底冷え切っていた。


 

 


 

06/12/17 (日)  ソラマメ

すこし肌寒いけれど、気持ちのいい晴れの日曜日。
この頃ゆっくりと畑で過ごす事が出来なかった反動で、早朝から畑行き。
大根とブロッコリー、里芋を収穫。
それらは全て今夜の酒の肴になる。

数箇所に借りている畑のうちの一つが年明けに契約終了し、返還しなければならない。
その畑は自宅から最も近く、最も土も日当りもいい場所。
手放したくは無いけれど、こればかりは仕方が無い。

これは趣味として野菜作りをする人共通の悩みだ。
農地法に縛られ、趣味の野菜人が自分の畑を手に入れることはほぼ不可能だ。
宅地を買って畑にするといっても、自宅周辺は坪100万円。 恐ろしく高い野菜になってしまう。
市民農園にしろ、契約菜園にしろ、数年の契約でそれが終われば返還しなくてはいけない。
堆肥をすき込み、フカフカの良い土を作っても、数年で自分のモノではなくなってしまうんだ。

いつか自分の畑を持ちたい。
でも、どうすれば良いのか。
東京で宅地を買って畑にするのか。
今、自分の周りにある全てのものを捨てて、新しい職と新しい土地を地方に求めるのか。
環境を変え、新しい土地を求めたい衝動をいつも感じている。
新しい職も見つかるだろう。
畑の開墾も苦にはならないだろう。
でも東京を離れるという事は、Mとの終わりを意味するだろう。
この頃、夢の中でもそんな葛藤を感じる。




   

M宅近くに借りている畑。
落ち葉焚きの煙が低くたなびく。
煙が昇らず低く漂う冬の日は冷え込みが厳しくなると、逝った祖母が言ったっけ。
どんな理由で冷え込むのか聞いただろうけれど忘れてしまった。
色々な事を知っていた人だった。
天国で元気に暮らしているだろうか。

2週間前に蒔いたソラマメの発芽。
これは来年6月の頃、ビールの最高のツマミとなるだろう。
6月か。
春から夏へ移りゆく、あの季節。
入梅の頃の湿気と蒸し暑さ、そして冷たいビールと茹でたてのソラマメを想像する。
ファンヒータの前で丸まる犬を見ながら燗酒を啜り、夏という季節を想う。
夏になれば、少しだけ元気も出るだろう。





午後、Mをつれてトヨタへ行き、車とお別れする。
11月末の事故で潰れた車の廃車が決まったからだ。
事故の過失割合についてはまだ揉めそうだけれど、この車の廃車手続きは終わった。
Mの代わりに傷付いてくれた車をスクラップにするための手続きを終え、ディーラーの屋上でうずくまるヴィッツを見に行った。

改めて見ると、その衝撃がいかに大きかったかが解る。
大きく潰れたボンネット、落ちたバンパー、歪んだエンジンルーム。
それでも、ドアの開閉は支障なく、キャビンには全く歪みは無い。
この小さな車が上手く潰れ、衝撃を吸収し、Mを守ってくれたんだ。

風の冷たい吹きさらしの屋上で、Mが泣く。
営業担当の人がうろたえる程に泣く。
はじめて自分で買い、大切にしていた車を潰したショックと、自分は青信号で進入したという主張が認められない悔しさと。
僕に経験は無いけれど、その傷の大きさは理解できる。
そしてMに泣かれると、僕はどうして良いか解らずにオロオロするばかりだ。
どんな長く付き合っても、この人に泣かれると僕は何もできない。
随分長い時間を屋上で過ごした。




夕飯は里芋煮。
大根は薄くスライスしてブロッコリと共にサラダ。
酒は枯山水を燗で。

ファンヒーターと加湿器が動く部屋の窓に結露が流れる。
気圧の谷の影響で、関東北部の山間では雪が降っているらしい。
冬眠できる生き物に軽い羨望を感じながら、温めた酒を今夜も呑む。

そして、また月曜がやってくる。



 

 


 

06/12/16 (土)


仕事が少し忙しい。
そして、忙しくなると途端に日記が書けなくなる。
時間が無くなるのではない。
書く事が無くなるのだ。

朝暗いうちに起きて出勤し、昼食をとる暇が無いか、良くてもカップ麺を数分で啜る他はずっと仕事をしている。
家に帰り、自炊する気力はなく簡単なモノで食事を済ませ、酒を呑み、犬と少しだけ遊び、眠る。
週に2日の休日をキチンと取っているので体の疲れは無いけれど、
出勤日には職場と家の往復以外になにもしていない気がする。

そして、Mの忙しさは常軌を逸している。
彼女はもうヤケになってしまっているのでは無いか、とすら思う。
慢性的な人不足の病棟婦長であるM。
いい加減な人をあてにするのなら、自分でやった方が良いと言う。
でも、夜勤に引き続き日勤をし、帰宅後数時間眠り、深夜にまた呼び出されるような働き方は絶対に普通ではない。
それでミスが起きないのはMが優秀だからじゃない。
ただ運が良いだけだ。

そして残業手当も出ないその対価は、ビックリするほどに安い。
前線に立つ看護婦の現場は過酷だ。
これから年末年始に掛けてその忙しさは更に加速するだろう。
暗澹とした気分になる。



晴れのち曇り。
最高気温は14度。  ここ数日悪天が続き、久しぶりに青空を仰ぎ見た気がする。
職場中庭では銀杏の落ち葉が黄の絨毯となり積もっている。

5時半起床。
7時過ぎには職場に着き、お茶を飲みながら少しだけネットを徘徊。
14時まで仕事。
遅い昼に菓子パンを齧っていると緊急の仕事が舞い込み、気付けば夜。
寒く暗い道を厚着をし、俯いて帰宅。

すぐに車に乗り都心へ出る。
ホテルで開かれた職場忘年会へ出たMを迎えに行くためだ。
徹夜勤務が2日続いた後に数時間眠り、そのままこの忘年会へ出たのだと言う。
立場上、この会は欠席できないのだと言う。

   

車のシートに座るなり眠るM。
青白く痩せた顔。
そんな困憊しきった彼女を見ると、怒りのようなものが込み上げて来る。
誰かの犠牲の上に成り立っている社会って何なのだろう。
街はクリスマス一色で週末の喧騒は凄まじかったけれど、何を見ても嘘臭く写った。
僕にとって、隣で疲れて眠るMだけが現実だ。

明日は南海上の低気圧の影響で下り坂の天気。
冬型が強まり寒くなるかもしれない。

 


 

06/12/13 (水)  新しいオモチャ


   

先日買ったムービーカメラが面白い。
衝動買いに近い買い方をしたカメラだけれど、この記事を読んだ時からずっと気になっていたんだ。
少し大きめの携帯電話ほどのコンパクトさ、155gという軽さ、日常生活防水という心強いボディー。
600万画素のCCDを搭載し、VGAサイズのMPEG-4ムービーを片手でササッと撮影できる。

小ささの秘密は記録方式にあって、これはDVDでもテープでも無い、SDカードを使ったビデオカメラなんだ。
デジカメのメディアとして使われるSDカードだけれど、その容量は信じがたいペースで増大し続け、いまや4Gのモノまで登場してきた。
僕が10数年前に初めて買ったマッキントッシュのHDD容量が800Mだったのだから、あんな切手のようなカードが4Gだなんて言われても実感が沸かない。
まああの頃はモノクロモニタもまだ普通に使われていたし、ネットの通信速度だって14.4kbpsのモデムを買った僕が羨望の眼差しで見られるような世界だったけれど。

とにかく、4GのSDカードメモリに最高画質で2時間45分の動画が撮影できるこのビデオ。
ポケットに入れておいてサッと取り出し、色々なモノを撮影しまくっている。
近所の野良猫、職場同僚がカップ麺をすする姿、ガラス越しの雨降り。
デジカメがフィルムと現像のコストから開放し、次々とシャッターを切るスタイルを作ったように、
SDメモリを使うビデオカメラも撮影コストを考えることなく気軽に使う事が出来る。
軽量ゆえに車のサンバイザーに大きなクリップで固定して、走行中のフロントグラスを通し流れる風景を撮り続けたりもしている。
予備のバッテリーとメモリーカードも発注済。
暫くはこの新しいオモチャに熱中しそうだ。




晴れ、後に天気は崩れ雨が降る。
最高気温は13度。

朝起きた時、世界の全ては朝露の中。
車も自転車も、朝の冒険から帰った犬までもが濡れている。
フェンス沿いに蒔いたきり忘れていた菜の花の種が発芽をし、可愛い双葉を見せている。
まだ寒い早春の頃、僕の大好きな黄色の花を見せてくれるだろうか。

Mの娘を学校見学へ連れて行く。
あの頃まだ幼児だったこの子も、今は17歳、
これから先どう生きるかを真剣に考える時だ。
この子を見ていると、僕とMの長い長い時間を思わずにいられない。
僕は自分の子を残さない代わりに、この子を育てている気がする。

僕の勧めで看護婦になる事を決めたこの子。
いよいよ受験対策も大詰めだ。
週に4日を深夜まで予備校で過ごし、休日も僕と共に参考書をめくり、いよいよ受験校も絞られてきた。
今日は最後の2校の学校説明会。
制服姿の娘を車に乗せてM宅から随分遠い街までやって来た。

車中で昔行った花火大会の話しになる。
あれはたぶん1995年の夏だから、この子は5歳か6歳だ。
僕もMもまだ覚悟が出来ていなくて、それでももう後に退けない状況だったと思う。
酷く蒸し暑い夜で、僕はポケット瓶のウイスキーで酔っていて、Mは暗い顔をしていて、この子だけがはしゃいでいたのを覚えている。
この子が履いていた白いビーチサンダルまで覚えている。
その時あった色々な事は、その前後の事情を含め僕には忘れられない夜として記憶に残っているのだけれど、
この子にはとても楽しい夜だったようだ。
あの、フェンス越しに見た5尺玉をこの子は良く覚えているという。
その事を楽しげに話すこの子を見ていたら、なんだか泣きそうになった。

そして、学校見学会。
カリキュラムや実習計画を聞きながら、この子のほとんどはこれから始まるのだと言う事に改めて気付く。
まさに、これからどうにでもなるだけの若さと時間がある。
それは羨ましくもあり、反面もう一度やるか?と聞かれたらちょっと面倒でもある。

どうかあまり傷つかないで欲しい。
でも、色々な経験をし、人の痛みが解る大人になってくれれば、と思う。




夜はスポーツジム。
走りすぎて貧血を起こしそうになり負け犬のように帰宅。
明日は今日より走れるかもしれないと思いつつ、ビールを飲んで放心する。










06/12/10 (日)  アワビを喰らう

晴れ。
最高気温は14度。
やや風は有るものの、穏やかな日曜日。

6時半起床。
サンダル履いて犬と近所を歩く。
空を見上げ、風の匂いをかぐ犬を見ながら公園のベンチで烏龍茶を飲むのは日曜朝恒例の行動だ。
渋い程に濃く煮出した烏龍茶をテルモスに入れて持っていくんだ。
犬にはクラッカーを数枚。
平和な休日の朝。

午前中の2時間ほど、分厚いマニュアルの解読に時間を割く。
昨夜、閉店間近のビックカメラ立川店で衝動的に買ったビデオカメラのマニュアルだ。
居間で、僕の本を齧る犬など撮影しながら長閑な時間を送る。
ガラス越しの陽射しが、天の恵みのように温かい。

昼、汚れ放題の車を磨きこむ。
先日の温泉行きで雨の石灰産地の峠道を走ったために、濃色の車体に付いた石灰が鱗のように白く固まっている。
時間を掛けて洗い、ポリマー屋さんに貰ったコーティング剤で磨く。
その足元で、犬が走り回る。
休みの日、僕が自宅に居る事の嬉しさを全身で表してくれるこの子が愛しい。
たまにコチョコチョとくすぐってやりながら、時間を掛けて車を洗った。

午後は畑。
久しぶり、思う存分に土を耕す。
そろそろ今期の農作業も終わり、あとはソラマメやキヌサヤなど数少ない越冬野菜の管理だけになる。
だから尚更に、土を耕す事が楽しい。
また来年の豊作を祈りながら天地返しを繰り返す。

今日の収穫はサトイモ、ブロッコリ、下仁田ネギ、そして大根。




趣味でやっている野菜作りだから、当然好物しか作らない。
だから、収穫=今夜の食材=酒の肴だ。
もともと野菜が好きなのだけれど、自分の畑で作った野菜を食べながら呑む酒はひとしおに美味い。

畑の帰り、数件の店へ寄る。
平日をカップ麺で生きている反動か、料理する時間のある日は美味しいものを堪能したい。
酒屋で最高の新酒を一升。
総菜屋で揚げたてのサツマアゲ。
魚屋でブリのアラ。 
ふと見ると素晴らしく美味しそうな房総産アワビ(←大好物)が一個1500円。
思い切ってそれも買う。
スーパーで焼き海苔とカニ缶。
和菓子屋でドラ焼きも買った。

   

ブロッコリは茹でてカニ缶の餡かけに。
サトイモは明日にとって置いて、大根と下仁田ネギはブリと煮た。
この時期の大根の美味さよ。
アワビは表面が乾く程度にごく軽く焼いて、スダチを絞って食べた。
肝はサッと茹で、醤油で最高の肴になる。

家事をしながら過ごす休日は楽しい。
もっともっとしたい事が山積だけれど、日曜は往き、新しい月曜がやって来る。
明日は晴れ。
しかし、大陸からやって来る低気圧の影響でその後の数日は雨の予報。
雨が降ればまた、冬が深まっていく。



 

 


 

06/12/8 (金)  温泉

20年前、19歳の時に大きな怪我をして肘を潰した。
救急車で最初に運ばれた病院では、この肘は固定してしまうしか無い、この肘関節をを動かす事は無理だと言われた。
有名な整形外科医が居る皇居の近くの病院へ転院し、半年以上の入院と5回の手術を経て手に入れたのは、
可動範囲35度の肘関節。
苦労の末、やっと35度だけ動くようになった左肘を僕はとても大切に使っている。

それでも年々可動範囲は狭くなり、特に寒さで硬くなってしまう冬場の可動範囲は20度程度。
マニュアルミションの車の運転に支障をきたす程度しか動かず、また常に重い痛みと痺れを感じている。
若い時の愚かな行為は、一生付いて回る障害を残した。



降ったりやんだりを繰り返す雨。
自宅から車で2時間の、いつもの山間の温泉は気温6度。
低い雲が山肌を流れ下り、雨粒は痛いほどに冷たい。
そんな中、露天風呂に浸かり放心するのは至福のときだ。

屋内の風呂になど見向きもしない。
露天に幾つも配された風呂に浸かり、雨を顔に受ける事の気持ちの良さ。
平日昼前、街からも高速からも遠いこの村の温泉施設は拍子抜けするほどに空いている。

Mは先日の事故で大きな痣を作った膝頭を、僕は左肘を湯の中でマッサージ。
温泉の効果を、自分の関節を通して実感する。
ゆっくりと揉み温めると固まった筋肉と癒着した関節が伸び、可動範囲が広がっていくんだ。
もし、何日もこの村に滞在し、湯治を続けたらこの肘の痛みも消えるかもしれない。
関節の障害に対して、温泉の効果は確かに有る。

帰り道はMの運転だ。
だから僕は遠慮なくビールを飲む。
長芋焼き、たくわん、雑穀釜飯、イワナの燻製。
ここの食事は美味い。
温泉から出て、この畳の部屋から外の景色を見ながらビールを飲む事。
その為だけに車で2時間の距離を走る価値が有る。
仕上げは蕎麦。
この村は蕎麦の作付けが盛んで、当然美味い蕎麦を食べる事が出来る。


ふと回りを見ると、僕ら以外の数組の客は皆、ご高齢の夫婦だった。
80歳位か。
そんな人達が温泉で火照った顔をして仲良く食事をしているのは良い光景だ。
曲がった腰も皺の走る顔も尊く見える。

僕らもあんなふうになれるだろうか。
このままずっと一緒に居られるだろうか。




    

一つ雲が行って、また次ぎの雨が来る前にと周囲を散歩した。
村は冬枯れ。

 

 

 


 

06/12/6 (木)  事故その後

夢なのか、何かの気配なのか、突然目が覚める。
朝の6時。
この頃、こういう目の覚め方をする事が多い。
寒い朝。
東の空が少しずつオレンジ色を帯びてくる。

9時。
畑を経てM宅。
床暖房の心地よさに猫のように丸まり、新聞を読む。
子供が学校へ出掛けた後のM宅は平和だ。

Mは少し緊張気味。
午前中、保険会社から依頼された調査員が来宅するからだ。
先日の事故、事故の相手が自分に過失はなく自分の保険は使わないと訳の分からない事を主張したため、
調査会社が間に入る事になったんだ。
まったく、厄介な事を言ってくれる。
交差点での出会い頭の事故。
一方に全過失がある事など有る訳がないじゃないか。
これで事故の処理は長期戦の様相を呈してしまった。

14時。
調査員との面談と実況見分を終えたMを自動車ディーラーへ連れて行く。
仕事柄昼夜逆転の生活をする事も多く、深夜に24時間営業のスーパーへ買い物へ行く事の多い彼女。
自動車は生活に欠かせないものなんだ。

今は僕のチョロQを貸して有るけれど、事故を早く過去の物にするためにも、Mの車をどうするか決めてしまいたい。
潰れた車の件もそのままに、事故の心的後遺症を引きずっているからだ。
はやく前に進んだほうが良いだろう。
半ば強引にMをディーラーへ連れ込んだ。

保険会社、メカニック立会いで、車の損傷を見る。
前部の歪んだこの車を治すには2ヶ月の時間と80万円の修理費が掛かるとの事。
やはり、全損廃車だ。
Mの可愛がっていたヴィッツは死んだ。
その代わり、Mは無傷だ。
車に感謝しながら、廃車の手続きをとる。
さようなら。

その数時間後、ディーラーを出るときには新しい車を買っていた。
僕は買い替えに備え、10台ほどの候補車のデータをエクセルでまとめていた。
今度の休みの日を使って数件のディーラーを回り、試乗しようと目論んでいた計画は消えた。
Mがどうしてもまたヴィッツが良い、と言い張ったからだ。

新型のコレ、僕にはどうしても大きなハムスターにしか見えないのだけれど、仕方がない。
色まで今までの車と同じものを選ぶMを見て、その愛着に初めて気がついた。
この車が好きなんだね。

年内には納車可能と言う。
今度の車も今までと同様、Mの良い足になってくれる事を願いたい。



夕方。
以前から欲しかったビデオカメラを見に立川へ行こうと思っていたのだけれど、何となく面倒。
その代わり、スポーツジムへサウナに入りに行く。
が、ジムへ入ると運動欲がムクムクと持ち上がり、その後の数時間自分の体を虐め続ける事になる。
滝の汗。
ローカールームへの階段を降りるのもふら付く程に疲れてジムを出る。
この爽快な気分はちょと他には思いつかない。

   

24時間営業のスーパーを覗くと珍しく子持ちカレイの切り身が一切れでパックされていた。
いつもは煮魚を作ろうと思っても量が多すぎて買う気がしないんだ。
半額になっていたそのカレイを買い帰り、今朝畑で収穫したゴボウと共に煮上がったのは22時半。
人肌に温めた酒と共に頂いた。
やはり煮魚は美味い。
刺身などよりむしろ煮魚を好むようになってきた事に、自分の年齢を感じたりもする。

発達した低気圧の影響で西から雨が近づいている。
東京地方の予報では金曜から土曜に掛けて雨。
乾燥した空気にも、これで一息つけるだろう。

金曜日、もし雨が降ったら温泉に行こう。
雨の露天風呂が大好きなんだ。





 


 

06/12/4 (月)  寒い

   


快晴。
寒い朝。
庭で今年初めての霜柱を見つける。
霜柱の上を歩く感触を忘れていた。
シャリシャリと軽い音を立てて歩く事の嬉しさ、気持ちのよさ。

通勤途中にほんの一瞬、ビルの合間から富士山が見える場所が有る。
キンと冷えた早朝の透明感の向こうに浮かぶ富士はとても美しい。
真っ白に雪を被った山腹は、夏に散歩した穏やかな山とは全く違う世界だろう。

富士が綺麗に見える事。
空気の透明感が高い事。
霜の美しさ、星座の豪華さ、羊毛布団の心地よさ。
そして燗酒が旨い。

数えれば、冬にも少しは良いところがある。



週明け。
僕もMも、疲弊し持久戦の様相。
Mは前回の休みより8連続出勤中。
その間に数度の夜勤と連日の残業、そして事故。
僕は風邪による1週間の体調不良。
そして昨日は朝から夜遅くまで、寒い告別式会場の手伝い。

畑のブロッコリは収穫時期を過ぎ、硬くなってしまっているだろう。
種を蒔いたホウレンソウの様子も見に行っていない。
M宅ではまだ冬支度が出来ておらず、暖房のない生活をしているという。
事故で潰した車の現状も見に行っていない。
たった一日の休みが有れば全て解決する事ばかりなのに。
次ぎの休みは水曜日。




午前、午後と良いペースで仕事が流れる。
苦戦している風邪はやや快方に向かうも、相変わらずの咳と発熱。
昼に550円の仕出し弁当(ホッケ焼き、切干大根、里芋煮)
おやつに貰い物の林檎を一つ。

職場中庭の栃の木は、ほぼ葉を落とした。
モミジもイチョウもブナも、冬枯れが間近だ。
それら大木の下の池ではイシガメが冬眠し、シジュウカラが群れて水を飲み、野良猫は冬毛肥りをしている。
そんな中、人間だけが季節など関係ないかのように動き廻っている。
滑稽だなと思うけれど、次の瞬間には僕も渡り廊下を走り、エレベーターを待ちきれず階段を駆け、息を切らせている。
喰っていくのも楽ではない。




夜は厚揚げ焼き、真空パックの崎陽軒シュウマイ(←好物)、焼き海苔。
食前に梅酒をロックで一杯、その後燗酒を2合。
あすは早朝から午後まで4連続会議。



 

 

 

 


 

06/12/2 (土)  風邪

   

風邪の咳と熱に苦戦しているうちに、いつの間にか12月。
ここ数日、急に冷え込みが厳しくなってきた。
仕事からの帰り道、寒さと暗さに負けそうになる季節。
夏の頃から楽しまさせてくれたオシロイバナの花も、そろそろ終わる。


冬至は22日だから、これからまだ昼の時間は短くなる。
しかし、それは日の出の時刻が遅くなるためで、日没の時刻は今頃が一番早い。
今日の東京の日の入りは16時29分。
これが今月末には16時38分にまで遅くなるんだ。

こんな風に、暦を見ながら自分に言い聞かせる。
夕方の暗さは、峠を越した。
もう少し我慢すれば昼の時間も長くなりはじめる。
本格的な冬はこれからだと言うのに自分をなだめ、鎮め、機嫌を取り、そして遠い春を待つ。



車で出勤。
月初めと土曜日が重なり忙しい日。
午前中の体温は37.8度。
午後は更に上がっている気がして計る気にならず。
PLとクラリス服用。
一日中、龍角散のど飴を舐めながら仕事。

昼は食欲なくガリガリ君とうまい棒を一本ずつ。
外が真っ暗になった頃、降参して帰宅。




先日、職場のエライ先生が亡くなった。
現場には殆ど顔を見せなくなっていたけれど、それでもショックは大きい。
僕に酒の飲み方や楽しさを教えてくださった恩人でも有る。
大きな喪失感を感じる。

明日は都心でお別れの会。
早い時間から手伝いに行く予定。
冬型の気圧配置が強まり、寒い告別式になりそうだ。