2006/112006年11月30日


 


06/11/30 (木)  好きなカフェの事

   

以前は、カフェに入る事は余り無かった。
男1人で入るには何となく居心地が良くないし、Mや他の友達と行くならお酒の呑める店が良い。
落ち着かない店に居るよりは、公園のベンチで空でも見ていたほうが良い。
数年前にあの店を見つけるまでは、そう思っていた。

その店は、職場からの帰り道を少しだけ遠回りした所にある。
車やバイクでは勿論、自転車でも気軽に行ける距離だ。
例えばスポーツジムへ行く時間は無いけれど、家へ帰る前に少し息抜きしたい。
冷えた体をお酒以外の飲み物で温めたい。
Mと予定を合わせなかった平日休みの午後。
そんな時、その店で過ごす事が有る。
そしてその店は1人でフラリと入っても寂しくないばかりか、僕のような物好きには堪らない魅力が有る。
だって、ガラス一枚向こうは滑走路なんだから。

羽田空港にも滑走路の見える店は有るけれど、あれは飛行機まで遥かに遠い。
でも、ここは違う。
まさに目の前を飛行機が離着陸して行く。
ガラスで隔てられた数メートル先に滑走路。
扉の向こうは格納庫。
BGM代わりに流れる管制無線。
さっきまで隣で食事をしていた人が実はパイロットで、目の前の飛行機に乗り込んで行ったりもする。
ここは飛行機好きには天国のような店だ。

特に夕方が良い。
駐機場の飛行機が夕陽に照らされ、とても綺麗だ。
ここは小型機専用の飛行場で、空港と言うよりバス停と言った方が良い位の佇まい。
空港特有の慌しさや煩さはまったく無い。
巨大な味の素スタジアムを背景に、長閑な滑走路に小さなプロペラの音をたてて小型機が離着陸する。
離島へ行く定員10人程度の双発機や個人所有のセスナだ。

窓際の席でチーズケーキ(←絶品)を食べながらボンヤリ飛行機を眺めているヒヨワそうな男が居たら、僕かも知れない。
激しく人見知りするので放っておいてください。
カフェの詳細はこれ




昨夜から喉の痛みと発熱。
出来れば一日ベッドで過ごしたい。
しかし11月最後の日。  仕事は山盛りだ。
風邪薬の眠気と闘いながら、それでもなんとか今月の仕事も終える事が出来た。

仕事帰り、スポーツジムへ行く気力は無く上記の店でカフェオレを飲んで帰宅。
夕飯の気力は無く、風呂に入って寝る予定。
寝酒にはブランデーで漬け込んだ梅酒をやろう。
今年の梅酒も上出来だ。

 

 

 


 

06/11/28 (火)

柿の実が1つ、熟してカーポートの屋根に落ちる。
その音で眼が覚めた。
肌寒く、暗い朝。
昨夜からの雨はやまず。

夜勤や事故の心労で疲弊しているMと某所に篭る。
暖かい部屋と糊の利いたシーツ。

僕は昼酒を呑みながら、昏々と眠るMの顔を見る。
夢でも見ているのか、時折苦しそうに額にシワを寄せ、それでも眼を覚まさない。
疲労が滓の様に体の底に溜まっているんだ。
また少し、痩せたような気がする。

   

夕方、それぞれの家へ帰宅。
降ったり止んだりを繰り返しながら、今日の東京は雨の中。
都心はもうクリスマスの色。


 


 

06/11/26 (日)  事故

土曜の深夜、機嫌よく1人宴会。
日本酒の酔鯨、スコッチのマッカラン、ジンのゴードン、ブランデーで漬けた自家製梅酒。
キッチンのテーブルで、酒専用冷蔵庫に眠る様々な「命の水」の味見をする。

豆板醤と粉山椒で発作的に作った麻婆豆腐が上手くでき、格安で買ってきた巨大なブリのカマも良く焼けた。
カブの煮物、、セロリのぬか漬け(←最近良く作る)、M手製の辛いネギ味噌。
DVDで邦画、「好きだ、」を見ながら酒がすすむ。

と、どこかで電話の着信音。
寝室のサイドボードに置いてある僕の携帯が鳴っている。
液晶表示を見た瞬間に、緊張する。
Mからの着信。
こんな時間に彼女が電話してくるのはヘンだ。

ごめん、車で事故をした。
お酒呑んでるでしょ?
絶対自分で運転しないで。。  でも、タクシー捕まえてすぐに来て欲しいよ。

電話口から聞こえるMの声には、ハッキリと緊張が伺え、僕も身構える。
作りかけの湯豆腐の火を停めて、駅まで走る。
自宅から駅まで走れば5分。
電話でタクシーを呼ぶより、駅待ちのタクシー乗り場まで行った方が早い。
でも、酔っていて上手く走れない。



車はメチャメチャになったと言うMの言葉が、頭から離れない。
緊張もし、動揺もしている。
乗ったのが地元のタクシーで無かった事が災いし、幹線道路しか知らない運転手の方に抜け道を教える。
でもなにせ、今夜は酒を6合は呑んでいる。
いつもの倍以上の酒量。
久しぶりに、土曜の夜を1人酒で楽しもうと思っていたんだ。
いつもは自分の運転で抜ける近道を、上手く指示する事が出来ない。

脳が思うように機能しないモドカシサに喘ぐ。
少しでも早くMの所に行きたいのに、全ての信号や踏み切りに引っかかり、少しも近づいている気がしない。
埼玉のM宅は遠い。
地の果てのように思える。



   


すでに警察の実況見分の終わった現場にやっと着く。
深夜の人だかり。
泣きそうな顔のM。
はじめての事故だ。 どんなに心細かったろう。

信号の有る交差点。
車同士の衝突で双方怪我は無し。
どちらかが信号を無視したのだろうけれど、双方ともに自分側の信号は青だったと主張する。
警官は人身ではない物損事故ゆえ、後は双方の保険会社に任せると言い置いて帰って言った。
事故の相手もあとは保険屋に任せましょうと言い、軽微な損傷をおった大きな車に乗って帰っていった。
残されたのは大破したMの車と僕ら。
そして僕は大酔っ払い状態だ。

絶対に自分側の信号は青だったと彼女は言う。
そんな過失割合より、怪我の無かった事が何よりだと僕が言う。
Mの声は緊張で震えている。
そして着の身着のままで飛び出してきた僕は、寒さに震える。
長く話して、またタクシーで帰宅。
事故現場がM宅目の前だったのが幸いし、Mの車は自走してマンションの駐車場に収まった。




日曜午前。
僕の運転でMの車をディーラーへ運ぶ。
厳しい顔のメカニック。
恐らく、全損廃車になるのではないかと言う。

陽の光の下で改めて見た僕も、この修理は難しいのではないかと思う。
ステアリングギアボックス、エアコンコンデンサ、ラジエタ、そして前部フレームも全て歪んでいる。
前部が綺麗に潰れているのだ。

Mがとても気に入り、可愛がっていたシルバーのヴィッツ。
先日も、僕と2人で磨き上げワックスを塗り、オイルの交換をし、内装もクリーニングした。
それが今、目の前でバンパーを落とし、ボンネットはめくり上がり、ライトは割れ、大破した痛々しい姿を見せている。

ディーラーの工場で、この車の損傷をメカニックの方と二人でチェックしていくうちに、恥ずかしいけれど涙が滲んでくる。
この小さな車がこんなに潰れ、自らが潰れる事でエネルギーを吸収しMの体を守ってくれたんだ。
この小さな車が、Mの代わりに死んでくれた。
涙がとまらない。
ありがとう、と車に言う。




事故原因がどちらに有ったのかは今更解らない。
深夜のことゆえ、目撃者も居ないのだ。
しかし、Mが過労状態だった事は確かだ、
運転の上手い彼女、普段だったら相手の車くらい避けていただろう。

日勤、そのまま続けての徹夜の夜勤、36時間勤務、帰宅して少し休んでまた出勤。
そして、朝5時起きで野球の試合に行く息子に持たせるために、終夜営業の店へお菓子を買いに行く途中の事故。
なんだか割り切れない思いで一杯だ。
僕がもっともっとMの生活をバックアップしなくてはいけないのだろう。
彼女にとって、離婚が本当に正しい選択だったのかとさえ思ってしまう。
そしてまた、自己嫌悪になる。


夜、東京はまた雨。
大粒の冷たい雨が落ちてくる。

そして、Mは今夜も夜勤だ。

 


 

06/11/25 (土)

   

凄い本


10月末に手に入れてから、何度繰り返し読んだろう。
こういう事を考えずに生きていければ、それは幸せだ。
でも、考え苦しみながら生きるのもまた人生。

何度読んでも解らない。
だから、また読む。
今までにこんな読み方をした本は他には無い。

 


 

 

06/11/23 (木)  犬とドライブ

勤労感謝の日。戦前の新嘗祭。 
それは新穀に感謝する祭りだ。
我が家の小さな池でも、数本の稲穂が揺れている。
田植えの時期、イタズラ半分に植えてみたものだ。
これは摘み取って乾燥し、餌台に乗せてスズメのオヤツにでもしてやろう。

先日掘り上げたサツマイモを見ていたら、天麩羅にして食べたくなった。
熱々の天麩羅で燗の酒を呑むのだ。
サツマイモだけでは寂しいので、畑へゴボウを抜きに行く。
今年のゴボウはとても良い出来だ。

トマトやナスで賑やかな夏の時期に比べ、この時期の畑は静かだ。
作業に来る人も少ないし、作物にも一時期の勢いは無い。
でも、そんな畑も嫌いじゃない。
ゴボウを抜いただけで帰るのが惜しくて、静かな畑で暫く放心した。
湿気を吸った、土の匂い。




    


予報は外れ、曇天ながら雨は降らず。
しかし、風に濃厚な雨の匂い。
寒い一日。

毛深い娘と川に遊びに行く。
この頃、車に乗る事を嫌がらなくなった娘。
窓を開けてさえいれば、車酔いすることも無くなった。

しかし、内弁慶なのは相変わらず。
せっかく広い河原に来たというのに、僕から遠く離れない。
リードを放たれている犬に怯え、川の中にいる鴨に怯え、浅瀬で跳ねる鯉に怯える。
少し過保護に育てすぎてしまったのだろうか。
他の犬と遊ぶより、僕と一緒に居ることを好む犬に少し複雑な思い。

10メートルの長いリード一杯に走り、僕から離れすぎた事に気付いて走り戻ってくる。
そしてまた、蟻やバッタを追いかけ走り、カラスに驚き戻ってくる。
風の匂いを嗅ぎ、飛行機を見上げ、人族には到底解らない匂いに恍惚とし、何を思ったか突然穴を掘り始める。
そんな彼女を見ながら、草原に座り午後の時間を過ごした。
僕を見上げる琥珀色の眼。
間違いなく、一番の親友だ。

19時半。
イモとゴボウを揚げようか。
少量の牡蠣と海老も買ってきたし、キャベツも刻んだ。
今夜は1人宴会だ。

 


 

06/11/22 (水)  サンマ缶

晴れ。
しかし、上空には白い水蒸気のベール。
朝の気温は9度。
夜露が地表を濡らしている。

6時、出勤時の街はまだ薄暗い。
今日の日の出は6時23分。
早い時簡に出勤し、帰宅時は当然暗くなっている訳で、仕事に行く日は昼間の庭を見る事が出来ない。
金魚にエサをあげたり、犬と青空を仰いだりするのが好きな者にとって、やはり冬は辛い季節だ。
散歩の途中、夏の夕陽を犬と眺めるのが日課だった季節が遠い過去のように感じる。

色々な事が重なり、午前中まったく仕事にならず。
今週中に終わらせたい仕事のかなりの部分を来週に廻す事になる。
他の要因で自分の仕事が捗らない事に少しイライラ。
来週は火曜に休みが入っているので、3日出勤すれば今月は終わってしまうと言うのに。
もっと計画的に仕事を組めばこんな事にはならないのに、学ばない僕が一番悪いのだけど。
残業や休日出勤で処理できる種類の仕事内容では無いのがイタイところだ。

昼に職場近所に出来た380円ラーメン。
不味し。
おやつに貰い物のGABAチョコレート
GABAと言うのは学生時代に勉強した脳に分布するアミノ酸、γ-Amino Butyric Acidの略称と同じだなと思って
パッケージを良く見ると本当にγ-Amino Butyric Acidを含有しているらしい。
抑制効果が有ると言うけど、blood-brain barrier を通過しないのでは?と思って調べたら、やはり通らないらしい。
あまり効果は期待出来なさそう。
それにしても、流行のコエンザイムQ10と言い、GABAと言い、学生時代の生化学の試験を思い出しそうで嫌な商品名だ。

11月から、この新聞を取っている。
購読可能なのは首都圏と京都のみらしいのだけれど、これがなかなか良い。
タブロイドの読みやすいサイズ、綺麗な写真、読みなれた横書きの紙面、ざっと読んでちょうど良い情報量。
ちょっとカバンに入れて職場へも持って行きやすいし、なにより1ヶ月1680円の安さ。
おかげで、もともと取っていた読売新聞は殆ど読まなくなってしまった。
もう暫く並行してみて、支障ないようなら読売は止めてしまおう。



   


遅く帰って、食事を作る気力なし。
そんな時のための床下収納から缶詰を持ってくる。
そこには安売りの時に買い貯めた缶詰が30個程も保存してあるんだ。

高価なカニ缶からダイエット用のノンオイルツナ、酒の肴用の鮭の中骨缶や焼き鳥缶などの中から選んだのが定番の
「チョーシタのサンマ蒲焼」
学生時代、ビンボーな友達のアパートにこれを土産に持って遊びに行き、大量にご飯を炊いてサンマ丼を作ったっけ。
その友達は今、沖縄の病院のエライ人になっている居るけれど、まだこの缶詰が大好物だと言う。

酒の肴としてのこの缶詰は、日本酒というより焼酎のお湯割りに良くあう。
この時期愛用しているスチーム型の加湿器の上に置いておくと、適度に温まって更によし。
今夜はこれで少しの酒を呑み、眠ってしまおう。
少し頭が痛く、少し熱がある。

今日は二十四節季の「小雪」
でも、今日の東京は小春日和と言っても良い陽気だった。
しかし、それは続かない。
明日は南海上の低気圧の影響で雨。
流れ込む寒気により、冷たい雨になりそうだ。




 


 

06/11/20 (月)

   

遅い時間に疲弊して帰宅。
冷たい雨と風、そして困難だった今日一日に押しつぶされて溜息をつき、怒りさえ感じず、ただ弱気になる。

シャワーを浴びて、干物を炙り、燗の酒を呑んで放心。
これはある方に教えて頂いた山形・出羽桜の「枯山水」大古酒三年熟成という素晴らしい酒。  (special thanks : yumikoさん)
季節限定品だけれど、手を尽くし6本を買い置いた。

そして今夜、2本目が空くだろう。



先日偶然に手にした素晴らしい本と、染み入る程に旨い熟成酒の燗、そして静かな自分だけの空間。
それらが僕を快復させる。
これでまた、少しだけ頑張れるかもしれない。

明日の東京は低気圧が抜け、晴れ。

 

 

 

 


 

06/11/19 (日)  けんちん汁

寒い朝。
昼から雨との予報に急き立てられるように、早朝から畑に立つ。
この冬最後の作付けをするために、今日はどうしても落花生を収穫してしまいたかったからだ。
何かを抜かなければ、新しい植え付けが出来ない。
これが家庭菜園レベルの畑の限界だ。
いつか、広大な自分の畑を手に入れたい。

チョロQに必要な資材を積んで、埼玉の畑へ向かう。
落花生の収穫は楽しい。
株の根元を持って、エイとばかりに引き抜けば土の下から落花生の可愛いサヤが飛び出てくるのだ。
30株ほどを楽しみながら引き抜く。
200円で買った、たった一袋の種が6キロほどの落花生となる。
これが野菜作りの醍醐味だ。
この落花生は、サヤごと塩茹でにして食べよう。
そして、食べきれない分は正月に煮豆を作ってM宅で食べるんだ。

ついでに夕飯の材料も収穫して帰ろう。
今夜は温かい汁が食べたい。
ゴボウ、下仁田ネギ、里芋、大根、蕪を抜く。
昼近く、予報どおりの雨に打ち止めされるまで楽しい畑作業を続けた。




冷たい大粒の雨。
午後、Mと会う。
深夜3時まで仕事をしていた彼女は、顔色が悪い。

スーパーの地下食品売り場は日曜で大混雑。
人に酔い、気分を悪くした僕は車に逃げ帰る。
シンと冷えた屋上駐車場の空気が気持ち良い。
そのまま2人で、雨の都心をドライブした。

街路樹の葉が紅葉し、散ってゆく。
イチョウ、ケヤキ、桜、栃。
東京の大通りは街路樹がとても綺麗だ。
雨に濡れた歩道を色とりどりの落ち葉が被う。

夕方、Mをマンションへ送り届け帰宅。
雨が強くなる。




   

けんちん汁。
豆腐と肉以外は全て自分の畑から収穫したばかりのもの。

里芋もゴボウも下仁田ネギも完璧な出来だ。
何ヶ月も面倒を見て来た可愛い野菜たち。
それを味わいながら呑む燗の酒が、一層に気持ちを優しくさせる。
今夜もまた、酒がすすみそうだ。




明日の東京は発達した低気圧の影響で荒れる。
そんな中、いつもより2時間早くに出勤予定。
また、月曜日がやってくる。

 


 

06/11/18 (土)  かぶを煮る

西高東低型の朝。
6時半、庭に吊るした温度計は6度。
ツワブキの黄の花に、朝の空気が結露する。
もうじき霜も降るだろう。

水鉢の睡蓮は葉を落とした。
高麗芝は色を無くし、コスモスが枯れ、犬は毛布の下で丸くなっている。
本当の冬がやってきた。



チョロQで出勤。
午前、雑事の大半を来週に廻し、測定機器のキャリブレーションに費やす。
温度と湿度を保たれた部屋の窓から、職場中庭の雑木林を眺めつつ作業。
もう、冬枯れがはじまっている。

職場検診で採血とレントゲン。
僕の職場ではインフルエンザの予防接種を無料で受ける事が出来るのだけれど、
数年前に接種後高熱を出した経験から辞退する。
忘年会出欠の回覧。
もうそんな時期なのか。
今年はどこの部署の忘年会に顔を出そうか。

昼に大勝軒。
午後は数件の依頼を受けただけで暮れる。
今日、東京の日没は16時34分。
初夏の頃の日没は19時だから、2時間半も早くに陽が暮れるのだ。
そして、この時期の夕は薄暮の時間が短い。
塵や水蒸気の少ない大気は、太陽の光を乱反射せずに明るさを失ってゆく。
陽の余韻を残す事無く、夜がやってくるんだ。

久しぶりに、定時に職場を出る。
時間はまだ早いのに、東京はもうすっかり夜。



   

帰り道、畑へ寄り蕪を数本収穫。
貝柱のダシで煮る。
弱火にかけた鍋の中身がコトコトと小さな音で煮えていくのを見ているのは、幸せな気分だ。

温かい煮物と燗の酒。
加湿器がポコポコと小さな音をたてる。
犬は眠ってしまった。
僕もそろそろ眠くなる。

寒くなってからというもの、眠気が強い。
食欲と睡眠欲に勝つ事が出来ない。
それは冬眠の準備なのではないかとMが言う。
僕もそう思う。
いっそ、このまま暖かいベッドの中で春まで眠って居たい。
まるでムーミンのように。

前線の影響で西から雨が迫ってくる。
遥か沖縄や九州に雨を降らせた低気圧が、ゆっくりと東進してくる。
明日の昼には東京も雨。
冷たい雨になりそうだ。


 

 


 

06/11/17 (金)

仕事が多いなら、その分沢山出勤すれば良いだけの話しだけれど、諸般の事情でそうも行かず。
だから、出勤すれば1日の作業量に忙殺されて余裕なし。
日記の更新も自炊も読書もままならず。

でも、カップ麺や外食が続くと体が優しい味を求めだす。
今日の昼はカップ麺、夜はまた吉野家か。

明日の土曜こそ、定時に帰ろう。
仕事を持ち帰るのもやめよう。
そして帰り道に畑へ寄り、ムッチリ肥ったカブを数本抜いて来よう。
薄味で炊いたカブで燗酒。
今はそれを楽しみに、目の前の仕事を片付けよう。

 


06/11/14 (火)  車で山に登る

月曜夜21時、仕事を終えてM宅へ泊まりに行く。
男の子達は父親のアパートへ泊まりに行っていて留守。
娘はまだ予備校から帰って居ない。
いつも賑やかな(賑やか過ぎて落ち着けない)M宅と違い、静かな夜だ。
寿司をつまみながら僕の持ち込んだ酒を燗で呑む。
やはり「大七生もと」の美味さは尋常じゃない。

深夜、ウトウトしているMを起こさないように娘と低い声で話す。
学校や予備校や来春の受験の事。
こうして僕に相談してくれるうちは、出来る事は何でもしてやろうと思う。
受験勉強は僕の手に負えず、予備校に任せてしまったけれど。

ふと、娘の持ち物の中に見覚えの有る物を見つける。
それは3年前、この子と一緒に学業の神様と言われる湯島天神へ行き貰ったお守りだ。
あれを今でも持っていてくれたのか。
口には出さなかったけれど、何だか嬉しくてニヤニヤしてしまった。


朝。
娘を学校へ送り出しチョロQで出発。
今日は紅葉を見に山奥へ行くつもりなんだ。

雲と青空とのコントラストが美しい。
暖かい陽射し。
国道463号、299号、140号。
もう1台の車ならあっと言う間の峠道。
急勾配の道で制限速度を維持することすら出来ないチョロQは、喘ぎながらカーブを抜ける。
一瞬、チョロQで来た事を悔いたけれど、今日はこの車でなければならない理由がある。
今までは諦めていた、未舗装の林道を走るオフロードという分野の遊びをやってみようと思ったからだ。

オフロード系のホームページを見る度に羨ましく思っていた。
人気の無い林道、他に誰も居ない川、峠の展望を独り占め。
でも、バイク時代を含め、オフロード系の車両を所有した事が無く、行きたくても手段が無かった。
それが今年、畑作業専用車と割り切って買った、のちにチョロQと命名された車の悪路走破性を知るにつれ、
林道を一度走って見たいと思っていた。
そして日帰り圏の埼玉、群馬、長野の境界の有る山岳部には、気持ちの良い林道が沢山あるらしいんだ。

    

やがて車は、紅葉の山に着く。
目の前には大きな石や泥濘で荒れた林道。
普通の車では越える事の出来ない峠道だ。


はじめは緊張していた。
でも、段々と悪路を走る楽しさに高揚し、運転が楽しくなってくる。
渓谷沿いの林道は紅葉が素晴らしい。
そして、それを見ているのは今、僕らだけだ。
聞こえるのは自分の車のエンジン音だけで、他には自然の音しか聞こえない。

一般道では非力な亀のようだったチョロQが、俄然元気になってくる。
巨大な岩に穴を開けただけの素彫りのトンネル。
首が痛くなるほどに見上げる岩盤の切り通し。
20キロ走って、すれ違った車は4台。
素晴らしい景色を独り占めしながら、ゆっくりと山道を走る。

    



   

下界は23度の小春日和。
それなのに、日陰になった岩にツララを見つけ僕らは驚嘆する。
10度を切った気温。
岩の間からは手を切る程に冷たい清水が湧きだしている。
それが夜間に凍るのだろう。

いつの間にか、随分と標高の高い所まで登って来ているんだ。
こんな所で身動きできなくなったら、助けを呼ぶ事も出来ないだろう。
携帯も圏外の林道は、路肩を踏み抜けば遥かに深い谷底だ。
慎重に慎重に。
やがて、峠が見えてくる。



   

良い景色を見つけてはそれに見入り、綺麗な小川を見つけては顔を洗い、遠望のきく所では遠くの山を地図と見比べ。
そんな事をしながら登りきった峠道。
こんな小さな車でよくここまで来たと思う。
ここは分水嶺。
こちら側に降った雨は荒川から太平洋へと流れ、あちら側に降った雨は信濃川から日本海へと落ちて行く。
この峠を越えれば向こうは長野県だ。

運転に程良く疲れ、景色を見ながら暫く放心。
そして、途中で買って来たオニギリとお茶で昼食だ。
風の音しか聞こえない峠。
車の窓を開けると、鼻が赤くなるほどに寒い。




Mに運転を代わって、2時間掛けて登って来た道を一気に下る。
ダートの運転は始めてのMだけれど、よほど楽しかったのか声を出して笑いながらアクセルを踏む。
おかげでこちらはグリップを握り締め、掌に汗をかきながらの下山だ。
この人の暴走癖は林道でも変わらない。

夜、帰り道に寄った酒蔵で買って来た日本酒を飲みながら地図を見る。
今日走ったルートを目で追いながら、見た景色や話した会話を思い出す。
12時間、朝満タンにしたガソリンタンクが空になるほど走り回って、それでもまだ足りない。
ドライブは楽しい。
隣にMが居れば、一層に楽しい。

明日から職場検診で忙しくなる予感。

 

 


 

06/11/12 (日)  畑

昨夜、久しぶりに呑んだ赤ワインが実に美味く一晩でで2本を開けてしまう。
アメリカに住む友人が土産に持ってきてくれたカリフォルニアワインで、僕好みの渋みの効いたヘヴィーなやつだ。
ウッカリと食料の買い置きが殆ど無く、ツマミが鮭の中骨缶詰とホワイトアスパラガスの缶詰だけだったのは少し寂しかったけれど、
夜遅くまで1人飲み会を機嫌よく楽しんだ。

お陰で二日酔いの朝。
明け方、微睡みの中で冷たい風の気配を感じた気がした。
少しだけ開けた窓から吹き込んできたのだろう。




風の朝。
東京に木枯らし一号が吹く。
深い青色の空に白い雲が千切れ飛ぶ。
高台から見る奥多摩の山々がとても近くに見える。
強風で塵が吹き飛ばされ、空気が澄んでいるからだろうか。

久しぶりに一日中、畑で過ごす。
長靴と作業着、手には黄色の軍手、頭には白いタオル。
チョロQに堆肥75キロと肥料20キロ、石灰に鍬にスコップにジョウロと支柱、休憩用のパイプ椅子を積み込んでの畑行き。
この車無しの生活など、もはや考えられない。
コイツは本当に働き者の車だ。

先日の収穫残しのサツマイモ掘り。
土起こしと堆肥入れ。 これは漬物用白菜の植え付け準備だ。
ヌカミソ用にカブを収穫し、大根に土寄せと追肥をする。

風は強いけれど良い天気。
途中で買ってきたビックマックと烏龍茶の昼食を、椅子に座ってゆっくり食べる。
菊には害虫を寄せ付けない作用があり、だから畑の境界線に植える人が多い。
この時期、畑は菊の香りに満ちている。
僕は菊の花が好きだ。

静かな畑、暖かい陽射し、携帯電話すら持ってきていない自由な時間。
なんて気分が良いんだろう。



午後は刈り取ったサツマイモのツルの処理。
ホウレンソウ、ソラマメ、水菜、菜の花の種蒔き。
ちょっと休んでからサヤエンドウの植え付け。
ゴボウの堀上げ。
そしてふと気付けば陽が西へ落ちてゆく。
驚くほどに昼が短い。

今日の東京の日没は16時38分。
1ヵ月後には更に10分早くなり16時28分に陽が沈む。
ああ、寒く暗い冬がやって来る。

夕方、コントラストの高い暮れどきは僕の好きな時間だ。
自宅へ向かう車の窓から素晴らしく発達した積乱雲を見る。
あの中にはラピュタが有るに違いない。
1万メートル以上に伸び上がり、内部は乱流と氷の粒の世界。
その上部はプラスに、下部はマイナスに帯電しているだろう。

夕日に照らされて、その積乱雲が黄金に光る。
あまりに神々しい姿に圧倒されて、車を路肩に停めて見入ってしまった。




   

夕飯は鮪の赤身。
大量に収穫したサツマ芋を一本使って炊いたイモご飯。
シラスおろし。
酒は燗だ。

明日はまた早朝から出勤。
面倒な来客がある予定で、その対策を午前の早い時間にしてしまいたい。
高気圧に覆われる関東地方は晴れの予報。
気温も上がって小春日和となるようだ。



 


 

06/11/9 (木)  合唱祭

小春日和。
空の青に柿の実が鮮やかに映える。
素晴らしい照柿色だ。

Mと2人で、Mの息子の学校へ合唱祭を見にいった。
久しぶりに入る体育館。
他の保護者に混じり、少し居心地の悪い思いをしながら合唱に聴き入る。
僕が中学生だったのは100万光年の昔だけれど、今でも同じ歌を歌っているのを聴いて嬉しくなってしまう。
課題曲「大地讃頌」なんて、懐かしくて自分のパートだった歌詞を小声で歌ってしまった。
光陰は矢の如し。

   

午後、微妙に体調不良で映画に行く予定を止めのんびり過ごす。
コンビニで買ったアイス片手に長い散歩をした。
M宅の周囲にはゆっくり散歩出来る雑木林がまだまだ残っているんだ。
平林寺から野火止用水沿いに歩き、米軍通信施設に抜け志木街道の神社に詣で変電所で鉄塔を見る。
気持ちの良い午後で、このままずっとずっと歩いて行きたい気分だった。

夕方、いつもの高台から夕陽を見て、それぞれの家へ帰った。


体調不良を走って治そうとスポーツジムへ行く。
少しの自律神経の乱れは運動が一番の治療になると経験から良く知っているからだ。
1時間45分、ゆっくりと走った。
ただ家に帰り飲むエビスビールの事だけを考えながら。

22時、爽快な気分で帰宅。
ビールの肴にはホッケを焼いた。
東向きのキッチンの出窓から、月齢18の月影が綺麗に差し込んでいた。

 

 

 


 

06/11/8 (水)  新宿へ行く

立冬も過ぎて、暦の上ではいよいよ冬がやって来た。
今日の東京の日の出は6時9分、日の入りが16時40分。
昼の時間は10時間と少ししか無いのだ。

朝6時、庭の月桂樹の木にぶら下げてある温度計によると気温は7度。
夏の間、お腹を出して眠っていた犬も、今朝は気に入りのバスタオルに潜り込み熟睡している。
東の空で低い雲がオレンジに輝く時間。
新しい朝の空が綺麗で、暫く見ていた。


   

嫌いな街、新宿へ行く。
嫌いな服、スーツにネクタイという姿で。
そして、最も嫌いな電車という手段でだ。

お酒を呑むことになるので、電車で行かざるを得ない。
午前の早い時間、電車で新宿へ行くと言う行為は、僕にとって極めてハードルが高い。
混んだ電車は僕の最も苦手とする空間だからだ。

僕はある専門職に就いているのだけれど、その職能団体から表彰を受けることになったんだ。
表彰といってもたいした事をした訳じゃない。
ある程度の勤続年数と、ある程度の学会実績があれば誰でも受ける事が出来る程度のモノだ。
だから僕は被表彰者となる事を逃げ、固辞し、同業の知り合いに転嫁までした。
僕はそう言う儀式がとても苦手だからだ。

それでも逃げ切れず、ネクタイを締めてラッシュ車中の人となる。
自宅から新宿まで電車で19分。
その19分の距離を、何度も途中下車し、何度も駅のベンチで冷や汗を流し、やっとの思いで到着した午前10時の新宿駅。
そこは出勤する人たちの途切れる事の無い流れがまるで大河のように見える、逃げ出したくなるような場所だ。

そんな思いをして望んだ授与式。
某高層ホテルの会場には、表彰を受ける人たちが並ぶ。
同じ途をゆく学友達だ。
開会挨拶、会長式辞、来賓祝辞・・
式が進むにつれ嫌々だった出席が、来て良かったという思いに変わる。
後列に懐かしい笑顔、来賓者の中に恩師の温顔、向こうに居るのは以前お世話になった先輩だ。

職場で孤軍奮闘し、義務も責任も僕1人に覆い被さっていると思う毎日。
でも、その根っ子はこの人たちと共に有り、この人たちに支えられているんだ。
その後のパーティー会場で、非常に上等な料理とワインを楽しみながら時間も忘れて会話に没頭する時には
この職に就いて良かったな、この職が好きだなという普段忘れている大切な思いに浸っていた。




そして、もちろん酔っ払い。
酔いの勢いで苦手な電車を乗り切り、地元に帰り着いた安堵で蕎麦屋へ立ち寄り煮込みと酒で放心する。
夕方の空いた蕎麦屋の座敷は居心地が良い。
ネクタイを緩め、アグラをかいて呑む酒が美味い。
随分長い間、座敷でボンヤリしていた気がする。

新蕎麦で仕上げて家へ向かう時にはすっかり陽も暮れ、青白い街灯が明滅する。
それでもまだ、時間は早いのだ。
朝見た暦には、日没は16時40分と書いてあったっけ。
午前中から酒を呑んでいたのですっかり深夜の気がしているけれど、実はまだ夕方といっても良い時間なのだ。

初冬の夜長を、これからどう過ごそうか。

 


 

06/11/6 (月)

ここ数日の日記を読むと、まるで仕事を放り投げて遊び呆けている様に思える。
船に乗ったり、ミュージカルを観たり。
でも、勿論そんなんじゃ無い。
職場の年度の都合で、半強制的に取らされる年休と僕好みのイベントが重なっているだけだ。
そのシワ寄せで出勤すれば遅くまで残業しスポーツジムへ行く間も無く、仕事を除けば日記に書くほどの事柄が無いだけだ。
そして今日も早朝から夜遅くまで働いた。

   

深夜、疲れて帰宅。
頭の中は風呂、そしてビールと燗酒。
酒の肴は買い置き無く、でも帰り道に24時間営業のスーパーへ行く気力も無い。
仕方がない。
今夜は冷蔵庫で眠っている納豆とシーチキンで酒を呑もうとでも思っていたんだ。

そんな時、まるで奇跡のようにMから差し入れが届く。
こんな遅い時間、10キロの道程を走り酒の肴を持ってきてくれたんだ。

ゴボウのかき揚げ、サツマイモの天麩羅、里芋煮付け。
それは昨日、僕らが畑で収穫したものの料理だ。

美味い。
料理の美味さだけじゃなく、昨日の収穫の楽しさが一層に食べることの喜びを感じさせる。
忙殺される日に、ふと感じる優しさ。
これはやはり、幸せなんだろうと思う。



明日も早朝出勤。
そして4連続の会議。

 


 

06/11/5 (日)  芋掘り

   


MとMの末っ子と僕の3人で、芋を掘る。
丹精したサツマイモが黒い土の下から鮮やかな色を見せる度、Mの子の歓声が畑に響く。
芋掘りは楽しい。
ムッチリと肥ったサツマイモを掘り起こし、大きな麻袋につめていく。
そんな作業が嬉しくて仕方ない。

Mの子供で唯一この子は、畑作業に興味があるようだ。
ジャガイモも、空豆もトマトもこの子と一緒に収穫した。
これからも、この子が望む物は何でも植えてやろう。
もしかしたら大人になったとき、僕と同じように野菜作りが好きな人間になってくれるかもしれない。
自分の子じゃないのに、子育ての楽しさを少しだけ味わっている気がする。

今日の収穫。
サツマイモ、ゴボウ、里芋、カブ、大根。
あと半年もしたら落花生も掘れるだろう。
その時はまた、この子と一緒に汗を流すんだ。


   

遅い昼。
畑労働で腹ペコだ。
これだけお腹が空いてしまったらラーメンじゃ収まらない。
久しぶりに「王将」にでも行こうじゃないか。
王将は僕が10代の頃から世話になっている餃子のチェーン店だ。

食べ盛りの12歳の男の子が料理を平らげて行くのを見るのは楽しい。
2人前の餃子、ラーメンとチャーハン。
末っ子君が目の前に並んだ料理を片付けていく様子を見ながら僕はビールを飲む。

こんな痩せっぽちの体のどこに、これだけの料理が収まるんだろう。
この子のオムツを替えてやったのがつい昨日の事のように思えるというのに、いつの間にか僕より沢山食べるようになっている。
それだけ長い時間を共有できた事に満足もし、感謝したい。
そしてこれからもずっと、子供達の成長を見守っていけたらと思う。




夕方、Mと2人で買い物へ行く。
僕は大量のビールを、Mは3人の子供達の腹を満たす為に大量の食材を。
そしていつもの高台へ登り、東の空を見る。
ちょうど、思った通りだ。
そこには。地平から今まさに昇ってきた満月があった。
月を見ながら、暫く過ごす。
やがて、それぞれの帰路へ。

こんな風に関係が安定してからもう随分と長い時が経つ。
Mの離婚が成立してからというもの、多少の波風はあるものの概ね穏やかな日々を淡々と過ごしている。
このままで良いのかと眠れない夜を過ごす事も有るけれど、これが僕に与えられた生き方なのだとも思う。
先の事は解らないけれど。

今夜の酒は枯山水。
肴には鮪の湯引きと湯葉を食べた。

夜は読書。
もう何度目かの「三国志」をまた読み始めている。






 

06/11/3 (金)  飛行機を見に

気温20度。
霞のかかった穏やかな空。
コスモスの跡地に植えたパンジーが咲きはじめる。

航空自衛隊・入間基地へ飛行機を見に行く。
自宅から、ひたすら西へ走る。
ドロンパ号↓でだ。

   

以前乗っていたバイクなら1時間の道のりを、2時間掛けてたどり着く。
最高巡航速度35kmのドロンパで行く入間は遥かに遠い。
しかし、基地周辺の駐車場は全て満車だろうし、電車に乗れない僕には他に手段が無い。

周囲が60km以上で流れる幹線道路をトコトコと走るドロンパは自転車にまで抜かれつつ健気に走る。
空冷単気筒の鼓動が心地良い。

 


毎年この日に行われるお祭り。
おそらく最も人口過密地に近い航空基地である入間は、その人出の多さでも良く知られれる。
正門前の人の海は恐ろしいばかりで、人混みの苦手な僕は帰りたくなる。
今日の人出は22万↓


   

特に広報する訳でも無いのに、良くこれほどに人が集まるものだ。
揉みくちゃにされ冷や汗を流しながら、ただ飛行機見たさに歩いていく。
広い滑走路にまで行ってしまえば、快適なのを知っているから。

やがて始まったT-4の編隊飛行に、救難団の模擬訓練に、C-1からの空挺降下に喰入る様に見入る。
そして何度見ても美しいブルーインパルスの曲技。
先ほどまでゲームで遊んでいた子供も、ビールで乾杯していたオジサンも、日傘の影で休んでいたオバサンも
時速800キロでの乱舞に溜息をつく。
皆が口をポカンと開いて空を見ている。

   


   

   

陽が西へ傾きだし滑走路に蛍の光りが流れ出しても、大勢の人達が名残惜しそうに座っていた。
年に一度のお楽しみ。
もう少しだけ、この雰囲気を楽しみたいのだ。

16時。
満足して正門を出る。
重たい望遠レンズを担いでドロンパで帰路についた僕が見た物は、地平まで続くかに見える大渋滞だった。


夜、無事帰還をエビスで乾杯。
その後、バイクで冷えた体を燗酒で温める。
肴は鮪のすき身とぬか漬の大根、焼き海苔にちりめん山椒。

開いた窓から見る庭が寂しくなってきた。
萩も芙蓉も葉を落とし、コスモスも向日葵もすでに無く、葡萄の葉は黄変し、高麗芝は色を失ってきた。
嫌いな冬を少しでも明るく過ごせるように、もっと彩りが欲しい。
葉牡丹、万両、ナンテン、水仙にクリスマスローズ。
休みの日に少しずつ植えていこう。
嫌いだと言ってばかりでは、冬は辛いだけの季節だ。

 

 

 

 


 

06/11/1 (水)

霜月。
大気中の水蒸気が減り、月が青みを増す季節。
昨夜の月はみずがめ座。  
中天にポッカリ浮かぶ青い光りがとても優しい。

深夜の散歩中、取り壊されたマンション跡地で揺れるススキを見る。
一緒に歩く犬は、ススキの穂で遊ぶのが好きなのだ。
眠れない夜は長い。



   

午後、Mと品川へミュージカルを見に行く。
前回は20年前。19歳の時に新宿で見たのだ。
相変わらず楽し。
手拍子を打ちすぎて掌が赤くなってしまった。


夕方から体調不良。
頭痛と倦怠感。
夜は早くに寝た。