2006/52006年05月30日


 

06/5/31 (水)  ニガウリ塩もみ

仕事を終えてスポーツクラブへ向かう足は、殆どの場合重い。
それはそうだ。
体力を使う仕事内容でこそ無いけれど、一日仕事をすれば消耗もするし疲れもする。
運動なんかするよりも自宅へまっすぐ帰りたい。
冷蔵庫にビールも冷えているし、犬も待っているだろう。
ベッドに転がってFMを聞いても良いし、読みかけの本を持ち込んで長湯するのも良い。
でも、そんな甘美な誘惑を振り切ってジムへ行くのだから、我ながら良くやるよと思う。

久しぶりの青空。
初夏を思わせる風。
5月最後の今日。 それなりに忙しく働き、夕方にはすっかり気力が萎えていた。
帰宅する前に気分を変えたい。
汗と共に毒を出したい。
理由は何でも良いや、ジムへ行こう。

眩暈のするような良い匂いを周囲に放つラーメン屋の前を素通りし、野菜苗の安売りをするJA直売所を見ぬふりし、
大きな本屋の前で立ち読みの誘惑に勝ち、電動工具の実演をしているホームセンターを横目にジムのフロントへ走りこむ。

1時間、iPodで古いローリングストーンズを聞きながら走った。
西向きの窓から遠く、月齢4の月を見ながら走っているとランナーズハイと言うのか、頭の中が真っ白になってくる。
今、脳内にはエンドルフィンが分泌されている。 
そう思いたくなるほど気分が良い。

腹筋、背筋、大腿四頭筋を虐めてからマシンルームを出る。
初級ヨガのクラスに誘われたけれど、今日はパス。
サウナに入って最後の一滴まで水分を絞り、家に帰って呑むビールを思う。




  

今夜のツマミはニガウリだ。
薄くスライスして軽く塩でもみ、酢を一滴。
鰹節と醤油で食べる。

照明を落とした部屋、冷えたエビスビール、もう何度読んだか解らないハインラインの「夏への扉」
眠るまでの3時間、居心地の良い時間を過ごそう。
それは僕にとって、欠くことのできない時間だ。

5月が往く。
そして今年もまた、雨の季節が来る。



 

06/5/30 (火)

   

淡々とした日常が帰ってきた。
自転車で通勤し、仕事帰りにジムへ寄り、帰宅して犬と遊び、少しの酒と肴を摂り、本を読んで眠る。
休みの日には畑を耕し、雨を見上げ風に吹かれ陽射しに目を細める。
浮きも沈みも無くて良い。
いつまでも、こんな日々が続けばと願う。

鬼灯に白い花が咲く。

 


 

06/5/28 (日)  秋桜、朝顔

   

早朝、開けたままの窓から流れ込む雨降りの気配で目が覚める。
雲は薄く、明るい朝だ。
優しく降る銀色の雨。
青時雨だ。

10時、雨が止む。
犬を放し、僕は庭仕事。
ポットに蒔いた秋桜と朝顔の植え付けだ。
良く育ち、根の張りも良い70鉢ほどの苗。
秋桜は薄紅と白、朝顔は全て僕の好きなブルーの花をつけるものだ。
直播してある向日葵も順調に大きくなっている。

夏にこれらの花は欠かせない。
早起きしなければ見られない朝顔、風に揺れる秋桜、天に届けとばかりまっすぐに伸びる向日葵。
この多雨の季節だからこそ、ジリジリと照りつける太陽の下、冷たいビールと短パンのあの愛しい季節を思いながら、せっせとスコップを振るうのだ。

余った苗を道際へ置く。
ご自由にお持ち下さい、のメモと共に。
花に限らず、野菜の苗やカブトの幼虫までこうして置く事が有る。
いつかなど、見ず知らずのご老人にニガウリの苗を有難うと挨拶されたり。
人見知りゆえキチンとした返事も出来ないのだけれど、それはそれで嬉しかったりするものだ。

昼過ぎ、Mを迎えに行き、そのまま立川のビックカメラへ行く。
17年稼動したM宅の冷蔵庫がついに昇天したからだ。
チルド?光脱臭?LED照明野菜室?
冷蔵庫などとんと興味のない我々は、踊る宣伝文句に右往左往し、お店の人の良いカモとなる。
結局、この春に発売された機種に決め、配送手続きと使用中冷蔵庫の廃棄処分を依頼する。
冷蔵庫って捨てるのにも大金が掛かるんだなあ。
大きな買い物だったので、半分援助した。
どうせ、僕が行ったときに呑むビールを冷やすために容積の何割かは割かれるのだから。

遅い昼に立川中華街で陳健一の麻婆豆腐でも食べようかと思ったけれど、僕が休日の人出に酔ってしまい取り合えず立川を脱出する。
ふだん平日に行動する身には、日曜の混雑は堪えるものだ、
結局昼食はいつもの大勝軒となった。

夕飯の買い物をしたり、Mの息子の制服を取りに行ったりしているうちに日没。
日曜日などあっと言う間に過ぎ去ってしまう。

道路際のタチアオイの紫の花。
畑で揺れる麦の穂。
重く湿気を含んだ温かい風。
季節は春から初夏へと向かっている。




夕飯には鮪の赤身と若布の酢の物を食べた。
酒は静岡の臥龍梅。
門の外を見ると、並べておいた20鉢ほどの花の苗は全て無くなっている。
真夏の朝早く、僕の知らないどこかで真っ青な朝顔が花を咲かせるのだろう。

明日は雲が広がりそうだ。
西からゆっくりと梅雨がやってくる。
でも、それが過ぎ去れば僕の大好きな夏がやってくる。





 


 

06/5/27 (土)  二日酔い

雨。

酷い二日酔い。
昨日、ここ何年も無かったほどに嬉しい事があり店をハシゴした結果だ。
Mの腫瘍が良性と解ったんだ。
それを聞いた瞬間、体の緊張が一気に解けて、その場に崩れそうになった。
この2週間、寝ても醒めても考え続けてきた事から開放され、Mの手を強く握った。
普段感情をあまり出さない彼女も笑っていた。

   

夜、子供達には留守番を頼み、Mを連れて何軒もの店を飲み歩いた。
ずっと笑っていた。
こみあげる感情にまかせて、珍しくはしゃいだ。

深夜、Mをタクシーに乗せて1人になる。
霧のような雨。
地下へ続く階段を下りて、いつものBARへ入る。
他に客は無く、とても静かだ。

オールドグランダッドをロックで飲みながら考える。
この2週間の苦しみから解放された安堵。
そして、再認識した彼女の大切さ。
酔いのせいも有ったのだろうけれど、涙がとまらなくなって困った。
照明の暗い店で助かった。


 

久しぶりにぐっすり眠って朝。
酷い頭痛だ。
ビール、日本酒、泡盛、ウイスキーとウオッカ。
よく覚えていないけれど、ソルティードッグが写真に写っているな。
とにかく呑みすぎた。

雨の良い香り。
会議資料を作るのみなので自宅でも出来たのだけれど、重い頭をうな垂れて出勤する。
それなのに仕事を進めるでもなく、窓の外の雨を見ながらボンヤリしている。
そして平凡な日々の大切さを味わっている。
本当に良かった。






 

06/5/24 (水)  夕立

朝から夕立ちが予報されている。。
昼、26度まで上がった気温が、ますますその期待を大きくさせる。

そして15時。
真っ黒な雲。  ときおりの突風。
やがてバラバラと大粒の雨が落ちてくる。

職場の窓越しに見ていた僕は、辛抱できずに外へ出る。
陽に照らされ熱くなったアスファルトが濡れる、独特の匂い。
この匂いは、なにか懐かしい子供の頃の記憶と結びついている。
それが何かは思い出せないけれど。

いつまで見ていても飽きない雷雨。
ワイパーを最速にしても視界を得られない車が路肩に止まっている。
そのハザードが、川になった路面に反射する。

まったく、素晴らしい夕立だ。


   

 

一時止んだ雨は、ジムで走る頃にまたやってきた。

大粒の雨が叩きつける路面。 
恐ろしいほどの稲光。
天井まで張られたガラスのこちら側は空調の利いた安全な空間。
ガラスの向こうは春の嵐だ。
その嵐を見ながら1時間走った。

帰宅後、ぬかみそからカブとミョウガを掘り出す。
今夜の肴はこれと焼き海苔。
今から眠るまでの短い時間、これと上等な純米酒でゆったりと過ごすんだ。
それは一日のうちで最も甘美な時間だ。



 

 

 


 

06/5/22 (月)  深夜に

   

雲の多い日。
湿気を含んだ風が吹く。

池の脇に去年植えた「破れ傘」の芽が出る。
おはよう。 
ずいぶん寝坊をするから、枯れてしまったかと思っていたよ。


 

適当なところで仕事を切り上げ、自転車で帰宅。
二箇所借りているうち近い方の畑へ行く。
まだ薄暮が残る畑でボンヤリと、ジャガイモの薄紫の花を見ていた。

すると、幼馴染のTが来た。
前の道を車で通ったら、僕の姿が見えたらしい。
立ち話をしていると、今度は隣のスペースを借りているYが来た。
彼も小学校からの知り合いだ。

1人でいるのが好きなくせに、暗くなりかけた畑で何となく満たされない気持ちでいたんだ。
しばらく話してバイバイ。
少し気持ちが明るくなった。

夜、毎晩掛かってくるMからの電話の後、本を読みながらウイスキーを飲む。
丸くなって眠っている愛犬のイビキが聞こえる。
僕もそろそろ眠ろうかと言う時間、またMから着信する。
今から行くから起きて待っていてと。

40分後、いつものヴィッツに乗ってきた彼女は、父親の実家から届いたというイチゴを沢山持ってきてくれた。
暖かい夜で気持ちが良いから、すこし散歩をしようか。
窓を開けた車でゆっくり流す。
雲が厚く掛かり、星は見えない。

駅からかなり離れた場所に、ポツリと白い提灯が灯っている。
ああ、あれは前から気になっていたラーメン屋さんだよ、と僕が言う。
存在は知っていたけれど、夜間のみの営業で入った事は無かったんだよ。
入ってみようよ、とMが言う。
深夜のラーメンなんて久しぶりだし。

和風の豚骨でくどくない。
硬茹での細いストレート麺の上にチャーシュー、キクラゲと海苔。
それほど空腹でもなく、その上トンコツ苦手の僕でも全て食べる事が出来る。
同じく完食のMと、なんとなく笑い会う。
こんな深夜にラーメンを食べるという、ちょっとした罪悪感が楽しいんだ。

路地で集会を開く猫に話しかけたり、ふらふら歩く酔っ払いを観察したり。
ほんの1時間ほどのデートだったけれど、良い気分だ。

こんな小さな幸せでいいから、いつまでも続いて欲しい。




 

06/5/21 (日)   野菜が上手く育たない

不安定な天気が続く。
昨日はバイクで出勤し仕事帰りにジムへ向かうも、すばらしい夕立にやっつけられて撃沈。
さすがにパンツまでぐっしょり濡れた状態でジムへ入る気力は無かった。
今日は夏日。
東京の最高気温は27度。  南からの強い風がふく。

朝起きて洗車。
その後、友人宅でPCの設置。
今までPCを使った事の無い知り合いがネットをはじめたい等と言うと、ちょっとだけ憂鬱になる。
当然のようにサポート係りをする事となるからだ。

インターネットとメールの設定、オフィスのインストール、ウイルス対策をする。
PCの電源の入れ方、切り方(!)を教えて帰る。
後は色々いじって慣れていって貰いたい。

その後、畑。
畑に立つといつも感じるワクワクした気持ちが今日は無い。
このところの多雨と日照不足で、全ての作物が被害を受けているからだ。
カブの実は割れ、トマトの何本かは根腐れをおこし、キュウリにはウドンコ病の兆候があり、ナスは徒長している。
畝間の水はけの悪い所にまいた枝豆の種は発芽しておらず、トウモロコシは全く成長していない。

野菜作りで怖いのは取り返しのつかないところだ。
今から全ての作物を植えつけ治す事など出来はしない。
出足で躓いた今年の夏野菜は、ここ数年でもっとも不作となりそうだ。


   


車に乗り込んできたMから、いつもと同じ匂い。
もう、それだけで安心する。
髪を切ったMは少し若く見えた。

偶然見つけたM宅近くの蕎麦屋がたいへん真っ当な蕎麦を出す事に感激する。
靴を脱いで上がる民家風の内装も、障子の向こうに見える小さな庭も、
そして何よりハタチ程と思える店の女の子の対応が気持ちいい。
香り高い蕎麦をたぐって、満足して店を出た。
種類は少ないけれど趣味のいい日本酒と、各種酒の肴も品書きに有ったので夜に飲みに来て見たい。

DoCoMoショップでバッテリーを貰うための手続きをする。
長く使ったMの携帯は、毎日の充電が必要なほどバッテリーが弱っているんだ。
2年以上同じ端末を使っていると、無料でバッテリーを貰える企画にありがたく乗る。
もし入院する事になったら、携帯の意味は今以上に重要になってくるから。

夕方、2人で空を見上げた。
飛行機雲だ。
上空の風も強いのだろう、それはすぐに形を変え消えていった。
日曜の暮れ時。
空の青が黒に変わるのを見届けて、それぞれの家へと帰った。


 

 


 

06/5/19  (金)  ジムの日

   


ああ、やはりスポーツジムは気持ちが良いな。
いろいろ有って気力なく、先週の土曜日以来のジム。
窓の外の大粒の雨を見ながらの2時間、汗を流し筋肉を痙攣させての2時間。
ハードに動いている間は何も考える余裕なく、ただ心臓の鼓動を感じるだけだ。

カラカラに渇いて帰宅。
この頃の気に入り、新潟の酒造所が作る濃厚なビールを流し込む。
こんな小さな幸せが有るから、日々を乗り切れるんだろ。
そう思うほどに美味い、冷えた黄金の液体。

このところの停滞した雲を、台風一号崩れの低気圧が巻き取ってくれるのを期待している。
長く伸びた前線の西の端にあるその低気圧は、不安定な気流の流れと大雨をもたらしている。
そして今夜から明日にかけて、関東を荒天に巻き込むだろう。
でも、雨の後には晴れが来る。
雨の後には晴れが来るんだ。
日曜に予報されている晴れ間を見れば、雨ばかりの毎日ではない事を信じることが出来るだろう。
きっと晴れの日がやってくると信じたい。

 


 

06/5/18 (木)

   


雨。

それにしても天気が悪い。
野菜を作るようになって、この時期にこれほど日照時間の少ない年は記憶にない。
先日植えたトマトもナスも、スイカやトウモロコシも元気が無い。
日照不足に加え雨ばかり降るのでヒョロっと徒長し間延びしてしまった。

週間予報では日曜日に晴れ間が予想されているけれど、来週はまたこんな天気が続きそう。
今年の夏野菜はきっと高騰するぞ。

昼にコンビニの冷たいうどんを食べて、今は14時半。
思いがけず暇な日で、ネットを徘徊したり新聞を読んだり。
今日は定時に職場を出て、地元の眼科を受診する予定。
先週土曜からジムへ行けてないのだけれど、眼科の混み具合では今日も無理そうだな。




 


 

06/5/17 (水)

曇り。
湿度が高い。
早朝、車でMを迎えに行く。
受診のためだ。

11日に受診した産婦人科は産科メインで婦人科の専門医がいない。
待合室は妊産婦で溢れ、卵巣腫瘍のMは場違いのようだ。
その地区随一の産婦人科と言う事もあって予約ははるか先まで埋まっており、レスポンスが悪い。
また、手術を視野に入れたとき、この病院では不安もある。
そんな訳で、ちょっとコネクションを使って国立の病院へ初診としてMを連れて行く。
ここは婦人科の腫瘍では有名な病院なんだ。

病院へ向かう時、ここ数日なかったほど気持ちが晴れていた。
月曜にMの勤務先で撮影したMRIの写真を、昨日専門医に読影してもらい、良性腫瘍だよ、と言われていたからだ。
良性でも手術は必要とはいえ、それもいい経験になるよ、なんて笑って話していた。

朝一番で受付をして呼ばれたのが13時。
Mを担当したのは婦人科腫瘍が専門の女医さんで、持参したMRIを見、さらにエコーを追加で検査した。
そして、良性とは言い切れない。
いくつかの検査を追加でし、もし悪性だったら即オペが必要だと言った。

さっきまで、どこにラーメンを食べに行こうかなんて話していた僕らは黙り込む。
昨日、良性だったよと言ったMの嬉しそうな顔。
安心して嬉しくなってしまった僕は、ダイエットのため2ヵ月間我慢していた好物のフライドチキンを買いに行き、ビールと共に腹一杯食べたんだ。
夜中にMに電話して、オマエが入院してる間に、俺のバカウマ料理で子供達を魅了してやる、なんて事も言った。
いったい、何をやっているんだ。
お祭り騒ぎをした自分をひどく恥じた。

次回の受診が約2週間後。
それまでまた、吐息ばかりの日々を送らなければならない。


   


夜、買い物の気力なく畑で抜いて来た小さな大根に、3年前に仕込んだ麦味噌をつけて食べる。
そして酒。

Mは今頃どうしているだろう。
こんな時には僕がMを支えなければ、と思うほどに情けなく落ち込んでしまい、かえってMに励まされる始末。
そんな彼女も、いま自宅で何を考えているんだろう。
エコーに写った握り拳ほども有る黒い腫瘍を思うと吐きそうになる。

僕は普段偉そうな事を言って威張っているけれど、こんな時になると、とたんに無力になるんだ。
彼女に与えられるばかりで、何も与える事が出来ない。
そんな自分に苛々する。
そして酒に逃げる僕は、本物の駄目人間だ。

日本の南に伸びた数千キロの前線の影響の雨。
普段は好きな、そんな雨の音さえも僕を不安にさせる。


 

 


 

06/5/15 (月)  晴れ

   

ここ数日、ひどい不眠に苦しんでいる。
眠れない。
眠ったとしても浅い眠りからすぐに覚め、熟睡感など全く無い。
ベッドの中で悶々とし、朝までの時間が永遠にも感じられる。

眠れない夜と言うものを、僕は昔から恐れていた。
まだ子供の頃から不眠の傾向があった僕は、夜の暗さをを恐れていた。
長い夜を越えて迎える、朝の嬉しさ。
そんな、知らなくても良いようなことを熟知した子供だった。
神経質な子供はやがて成長し、神経質な大人になった。

カーテンを引かずにおいた窓の外が明るくなってくる。
今朝は白ではなくオレンジの夜明けだった。
そうだ、一週間以上ぶりに東京に晴れ間がやってきたんだ。

職場へと歩きながら、歩道に影が出来るなんて久しぶりだな、と思う。
この頃はこの道を傘をさして歩いていたから。
荷物も持たず、両手をブラブラさせて歩いた。

公園のトチノキに白い花咲く。




仕事に飽いて早い時間に職場を出る。
まだ明るいうちに帰宅。
車に乗り換えて畑へ着いた時も薄暮が残っていた。

長雨の影響で気難し屋のトマトは何本かだめになってしまった。
トウモロコシもキュウリも元気が無い。
雨を吸いすぎたカブは裂果してしまった。
入梅までまだ間があるこの時期、いまの野菜苗たちは太陽のエネルギーを全身で吸収する時なんだ。
週間予報によればこの後も不順な天気が続く。
今年の夏野菜はスタートですでに躓いてしまった。

畑でMから着信。
MRIを無事に終えたとの事。
Mにとって初めてのMRIはそれほど困難ではなく、検査中に少し眠ったと。
数回の経験がある僕は、MRI検査中に眠れるズ太い人間が存在するなんて想像も出来ない。
今頃彼女は検査中だと思うだけで動悸がしていたのに、なんだか損した気分だ。
でも、無事に終わって良かったよ。

読影は明日。
そろそろTumor markerの結果も出ている頃だろう。




今夜はさすがに熟睡する必要がある。
もう体が悲鳴を上げそうだ。
酒に依存しようか。 薬にすがろうか。
ぐっすり眠って朝になったら少しは運気も上向きになるかもしれない。

天気はまた下り坂。
東京上空には寒気が流れ込み不安定となりそうだ。
沖縄地方は昨日入梅。
また前線が停滞する季節がやってきた。

   




06/5/13 (土)  Mを迎えに

また今朝も、霧のような雨。

気力なくズルをして車で出勤。
車通勤を止めてから職場に僕の駐車スペースは無く、コッソリと隅のほうに置かせてもらう。

いつもは忙しい土曜日なのに、どうしたことか今日はゆったり時間が流れる。
検査に来室した90歳の方の子供時代の話などを楽しく聞く。
奉公に出た先の農家で、大人にばれないように畑の桑の実をツマミ食いし、口が桑の実の紫に染まってバレてしまった話しなど
笑いながら話される姿を見ていたら、大好きだった祖母を思い出した。

昼に何となく車で外出、すこし散歩してから大勝軒。
すこし肌寒い今日、温かい中華蕎麦が美味かった。

仕事の帰りにはジム。
もう、僕には話しかけないという了解がイントラに広がったのか、放っておいてくれるのが有り難い。
iPodでストーンズを聞きながら走った。

 


   


夜、Mを迎えに行く。
職場の懇親会が都心のホテルで開かれていたんだ。

具合悪いのに、そんなの出なくても良いじゃないか。
そう思うけれど、口には出さず。

待ち合わせた店の二階席、環八に面したガラス張のカウンターに座る。
濡れた路面に反射するヘッドライトがキラキラ光る。
コーヒーを飲みながら外をボンヤリと見ていた。

しばらくして、歩道を歩いてくるMを見つける。
白い傘。 白い服。
ずいぶん伸びた髪が顔に陰影を作る。
なんだかその姿がひどく痩せて見えて、僕はまた不安になる。

少しだけドライブ。
この時間になると、環八も目白通りもスムースで気持ちが良い。
街灯が滲んだ頃に、すっと動く間欠ワイパー。
朝から続いた雨は、結局深夜まで止まなかった。


 


 

06/5/12 (金)

   


低い雲。  
湿度が高い。
もう随分と長く青い空を見ていない気がする。

仕事も上の空。
文献をあさり、Mの症状を調べまくる。
そして段々と憂鬱になる。
Mが元気でいてくれないと、僕は情けないほどにフヌケになってしまうんだ。

月曜にMRIの予定。
そして受診は水曜日。

 


 

06/5/11 (木)  海猿

朝、大きく揺れるカーテンの気配で目が覚める。
風が強いんだ。
去年の夏から出しっぱなしの南部鉄の風鈴が、軒下で激しく鳴っている。
6時。
もう、起きてしまおう。

たとえ真冬でも、少しだけ窓を開けて眠る癖がついている。
部屋の空気が淀むのが嫌なんだ。
雨の夜は殊更に窓を少し開けて眠ると良い。
雨垂れの音は、安定剤などよりよほどに精神の緊張をやわらげる。

早い時間にM宅。
少し上がりこんでHDDレコーダーのメンテナンス。
9時前に大泉へ向かい、映画「海猿」を見る。
良い映画だった。
これは、映画館の大画面で見なければダメだ。
1800円が安く思えた。

   

12時ちょうど、映画で泣いて目の腫れたMと練馬の○麺堂。
ここは今、僕が一番入れ込んでいるラーメン屋で、僕の借りている畑から近い事もあり頻回に通っている。
研究熱心なご夫婦のお店で、通常メニューとは別に季節限定のメニューがあるんだ。
鮭を使った塩味の冬メニューなど忘れられないほどに美味かった。
今日食べたのは、「春雷」と名付けられた春限定のラーメン。
ダシにマグロを使ったスープは旨みが濃厚で、レンゲを持つ手を離す事が出来ない。
上を飾るのは炭火で炙られた香ばしいチャーシュー、カブ、アスパラ。
上等な日本料理を食べているような一杯。



13時過ぎ、総合病院の婦人科を受診するMに付き添う。
先日、2人で受けた人間ドックで要再検となったMの精査が目的だ。
毎回の事だけれど、患者の立場で行く病院という場所の居心地の悪さ。
長い待ち時間の間に気持ちが萎縮し、弱気になる。
胃が痛い。

信じ難いほどの待ち時間ののち、診察室から出てきたMの表情は冴えない。
内診とエコーの結果、さらに精査を薦められる。
卵巣が正常の数倍に大きくなっているんだ。
Tumor markerのための採血。
造影MRIはMの勤務先ですることになった。

それらの結果を持って1週間後の再受診。
この1週間をMは、そして僕はどう過ごせば良いだろう。
お遊び半分で受けた人間ドックの結果がこんな事になるなんて。
もしも、もしも。
そんな考えが頭を離れない。
これから暫く、寝ても醒めてもそればかり考え続けるだろう。

夜、薄雲の向こうに月齢14のおぼろ月。
iTunesで、USA for AfricaのWe Are the Worldを見つけ、落とす。
PCのスピーカから聞こえる懐かしい歌。 
20年前、僕が吉祥寺でフリーターのような生活をしていた頃にMTVで繰り返しかかっていた曲だ。
あの時のマイケルジャクソンの、スプリングスティーンの、スティービーワンダーのかっこ良さは忘れない。
何度この曲を聞いたろう。

あの頃が懐かしい。  
実力も無いくせに、でも何故か明るい将来を信じられたあの頃。
そして、実力の無いのは相変わらずだけれど、明るい未来を考えられなくなっている今の自分。
神様、どうかMをお守りください。







06/5/10 (水)  なんだかとっても眠いんだ

もう疲れたよ、パトラッシュ・・

連休明けの3日間、朝は1時間半ほど早く出勤し、昼も殆ど食べずに働く。
なんでこんなに忙しいのかな?
ヒヤリハットは日常。
この忙しさの中で大きなミスが無いのは、ただ運がいいだけだ。
その運も、いつまで続くのか解らない。
こんな事で自分の運を使い果たしたくは無い。


   

この3日間、東京は毎日が霧のような雨。
しっとり濡れた土の匂い。

先日蒔いた朝顔、秋桜、向日葵が発芽する。
今年は合わせて60鉢ほど。
朝顔は僕の好きな青い花ばかりだ。

この夏はこれで家の周りを飾ろう。
朝顔と秋桜、そして向日葵。
子供の頃の夏を思い出させる懐かしい花たち。

今夜もまた、部屋の灯りを消して窓を開けている。
少し雨が強くなってきたかな。
Mはもう眠ったろうか。
読みかけの文庫を持ってベッドへ行こう。
大きなグラスに大量のウイスキーサワーを作って、それをなめながら眠るまで本の世界に没頭するんだ。

明日は休み。
朝からアチコチ動く予定。

 

 


 

06/5/7 (日)  空豆

少し開けた窓からの、濃厚な雨の匂いで目が覚める。
低い雲。
終日の小糠雨。

久しぶりにゆったりとした気分でPCのメンテナンス。
AntiVirusを走らせたり、デフラグをかけたり、Backupを取ったり。
512MBしか積んでいないRAMを倍に増やしたいと価格Comを眺めたり。

昼前、池に亀を見る。
去年から池で飼っていた亀は、晩秋から冬眠に入ったようで姿を見せて居なかった。
この時期になってもまだ姿を見せないので、てっきり冬眠に失敗して死んでしまったかと思っていたのだけれど、
何事も無かったかのように泳いでいる。
いったい、どこで冬眠していたんだろう。
おかえり。  また会えて嬉しい。

その後、車で散歩。
柔らかい雨で、たまにワイパーを動かしながらゆっくり走ると気持ちがいい。
立川のビックカメラでiPod nanoを買う。  これは春から定時性高校へ行っている姪っ子へのプレゼント。
文教堂で文庫を二冊(剣客商売、マットスカダーシリーズ最新刊)、
小金井の四馬路で味噌ラーメンを喰らい、jomoでハイオクを60リットル給油(リッター145円)。

ガソリン、高くなったな。  
リッター5キロしか走らない車に乗っている場合じゃないんじゃないのか。

   

ソラマメは空豆と書き、鞘が空を向いているからそう呼ばれる。
小雨の中、空を向いた豆を見たくなって畑へ行く。
僕はこの空豆と言う物が大好物で、いつか自分で作ってみたいと思っていたんだ。

11月末に種をまいて、それが発芽したのが12月8日。
本葉5枚ほどの状態で冬を越し、花が咲きだしたのが4月の上旬。
そして今、ようやく小さな鞘が膨らみ始めた。
種をまいてから収穫まで半年以上も面倒を見なくてはいけないのだから、随分な駄々っ子だ。
それだけに愛着もヒトシオで、この豆を食べるときには最高の酒を準備しなくてはと思っている。
まだ硬い鞘にそっと触れてきた。

今、作っている物。
トマト(フルーツトマト、桃太郎など)、ナス(焼きナス用の長いやつ)、アスパラガス(今年は収穫無理か?)、のらぼう、大根(大量)、
カブ(通年作り続ける)、長芋(2年目)、ジャガイモ(大量)、島ラッキョウ、玉ねぎ(霜害で出来悪し)、モロヘイヤ、
万願寺唐辛子(天麩羅で最高)、ゴーヤ(生でも食べる)、キヌサヤ、ミョウガ、そしてスイカを2本。
暑くなる前に、ゴボウと落花生の種もまきたいし、冬瓜やネギも作りたい。

もっと畑が欲しい。  
野菜だけでも自給自足したいんだ。


夕方はいつもの酒屋さんで試飲をしながら長話。
6月にある試飲会の話しや二日酔い自慢など。
夕飯には鰯を焼き、水菜のおひたしを作った。

そしてゴールデンウイークが終わる。

 

 


 

06/5/6 (土)

   

立夏。
東京の最高気温23度。
風薫る日、バイクで出勤。

カレンダー通りに休んだ今年のGW。
天候に恵まれ、前半は友人と遊び後半は畑三昧で充実した毎日だった。
しかし、充分遊んだのだからまた仕事も頑張れるかと言うとそうでもなく、やる気の出ない怠惰な土曜日。
昼、久しぶりに緑のたぬきを食べたら、やっと職場に居る実感が沸いてきた。

仕事帰り、ジムで走る。
久しぶりに滝の汗をかいた。

暦の上では、今日から夏。
職場の中庭を歩けば、確かに陽射しも少しずつ強くなってきているのがわかる。
燃える様なツツジの花も身頃を過ぎた。
あいつの住む街でも気温20度を超え、そろそろ桜も咲くという。

連休中の好天をもたらせた高気圧が去り、西からまた天気が変わる。
自宅PCのデスクトップは衛星、レーダー、アメダスに天気図を表示するようにしてある。
PCを起動するたび、西から変わりゆく天気を知る事が出来て、しばらくウットリと眺めている事もある。
知り合いの住む街の天気に想像をめぐらせるのは楽しい時間だ。

今、午前4時過ぎ。
強い雨雲がそこまでやって来ている。


Mと電話で喧嘩をした。
先日、一緒に受けた人間ドックの結果、要精密検査・要再検があったにも関わらず受診しようとしないからだ。
彼女は自分の体に全く頓着しない。
病気恐怖症の僕から見ると、それが歯痒いんだ。
だからつい僕も強く言い、Mも意地になる。
でも、忙しいを理由に受診しないなんて。
感覚の違いとしか言いようが無く、なんだかMとの間に温度差を感じた。

そういう僕も、軽度の眼圧上昇を指摘され、今度再検しなければならない。
検査をするたびに新たな病気が増えるようで、それもちょっとどうかと思うけれど。




少し開けた窓から温かな風が流れてくる。
外では小雨が降っているようだ。
遠くで新聞配達のバイクの音が聞こえる。

雲の層が濃淡を見せている。
段々と明るくなってきたんだ。
日曜の朝だ。

雨の日曜日も良い。
デジカメを持って、車で散歩に出かけよう。
雨の中を運転するのが好きなんだ。

 

 

 

 


 

06/5/4 (木) 間引き菜の浅漬け

   

夜、追記。

昼間の間引き菜は、昆布、鷹の爪と共に重石して浅漬けにした。
これがちょっと笑ってしまうほどに美味い。
一日中外に居て、日焼けし火照った体を冷たいビールで癒しながら齧る間引き菜の浅漬け。
なんだか幸せな気分だ。

夜は早くに寝、明日はまた早起きしよう。
コスモスと朝顔の種を蒔きたいんだ。

 


 

06/5/4 (木)  間引き菜

嗚呼、畑畑。
この時期の畑の気持ち良さといったら。
朝早くに畑へ行き、種を蒔く。
きっと今頃、行楽地では大渋滞大混雑だろう。
おお嫌だっ。
そういう遊びに興味の無い僕は、静かな畑に居るときが一番の幸せだ。





   

それにしても、一年前に買った車の選択を間違えたか。
いや、この車はとても良い車なのだけれど、今日もトランクには牛糞20キロと堆肥10キロ。
室内には支柱とジョウロとスコップと。
足に長靴を履き、頭にタオルを巻いた状態での畑通い。
ちょっと車が可愛そうな気もする。  なんか室内肥料臭いし・・
やっぱり、夏のボーナスで軽トラ買おうかしら。


   

ところで野菜作りでは沢山の「間引き菜」が出る。
種を蒔いてから収穫するまでの間に何度か混んでいる所を間引くのだけれど、野菜好きな僕にはこんなものもご馳走だったりする。
こんなに小さくても、しっかりカブや大根の味がするところなんて、もう可愛くて。
今日はこの間引き菜を大ザル一杯ほども取ってきたので、夕飯の時にでも食べようと思う。

さて、今13時。
もう一箇所の畑へ行って、夕方までボンヤリしてこよう。

 


 

06/5/3 (水)  畑日

   


1日中、畑作業。
トマト、キュウリ、ナス。
夏の野菜たちを植えつける。
ただ、それだけに熱中する。

夕方気付いてみると、今日は誰とも話していない。
誰とも話す必要の無かった一日。

今夜、Mは夜勤。
若い看護師たちに長い休みをとらせる為、子供達を留守番させての徹夜勤務だ。
あの、地獄のような病棟での一夜を思いつつ、僕は一人で酒を呑む。

そして色々な事を考えるのが面倒になってしまい、すこし酔った。

 


06/5/1 (月)  バイバイ

   

 

穏やかな4月が往って、5月。
真夏日となった今日、薄暮の時間になってもアスファルトが熱い。
西に低く月齢4の月。
ハタハタと舞うコウモリを見ながら、アメリカに帰る友人と最後の食事をするためにサンダル履きで歩く。

奴の好きな沖縄料理屋で飲んだ。
海ブドウ、青パパイヤとヘチマ炒め、ラフテー、グルクンのから揚げ、ゴーヤの酢の物。
酒はもちろんオリオンビールだ。

話しは尽きない。
6歳からの付き合いとは、つまり人生の殆どを共に歩んだという事だ。
そして改めて、体の弱かった僕が友人達に助けられ成長して来たのだという事を思い出す。

大人になってから1人でいる事が好きな傾向に拍車が掛かり、1人静かに過ごす環境を作ってきた。
元々が内向な僕は、誰かと付き合う事にそれほど楽しみを見出さなくなった。
そんな僕が、外向な幼馴染の一時帰国をきっかけに沢山の旧友と話し、呑み、騒いだ。
それは、忘れかけていた楽しい時間だった。
この2週間、まるで小学生のあの頃のように遊んだ。

そして祭りが終わる。
幼馴染は明日早くの飛行機でアメリカへ帰り、連休を利用し地元へ来ていた旧友達もそれぞれの場所へと戻る。
連休の後半は畑で過ごそう。
トマトもナスも植え付けを待っている。
祭りの余韻を感じながら畑を耕すんだ。

連休が明けたら、また仕事の帰りにジムへ寄り黙々と走ろう。
1人で酒を呑み、さくらと遊び、本を読んでから眠ろう。
そんないつもの生活へと戻るんだ。
それもまた良しだ。
静かな日々が帰ってくる。

深夜、沖縄料理屋からの帰り道。
ガスの掛かった空にさそり座のアンタレス。
どこからか、アカシアの花の甘い香りが漂う。
握手をしてバイバイだ。  
また数年後に。




明日は88夜。
寒冷前線が通過し、西から雨だという。
気温も一気に下がり、もしかしたら雷が期待できるかもしれない。