2006/42006年04月30日


 

06/4/30 (日)  兜

   

朝、目が覚めて恐る恐るベッドから出る。
二日酔いの可能性が高かったからだ。
しかし、寝る前に飲んだ大量の水が良かったのか、僕の肝臓が強靭なのか頭痛も吐き気も無し。
良かった。 こんなに良い天気の日曜日を無駄にせずに済んだ。

4月最後の日曜日。
黄花底紅の「兜」の花が咲く。


荒廃し、ただの物置となっている温室の整理をする。
以前のように水道や電気まではひかずとも、温室本来の役目を果たせるようにしたいんだ。
数年に渡って物置化されていたそこは、得体の知れないゴミで埋まっている。
それら全てを外へ出し、分別し、捨て方を調べ、温室内をキレイにする。

以前はスノコひきだった床はむき出しの地面とし、そこに堆肥の豊富な土を入れて深く耕す。
そこで野菜を作るんだ。
もちろん畑がメインとなる野菜作りだけれど、温室の地面を畑化しておけば育苗に便利だし、
長雨に弱いスイカなどは屋根の付いている温室内の方が良くできるだろう。

途中から帰国中の友人も合流し、昼過ぎには物置だった温室は復活した。
棚の部分にはサボテンを並べ、地面にはとりあえず2本のスイカと3本のフルーツトマトを植えた。
これでまた一段と野菜作りが楽しくなるな。

遅い昼食に「民芸」でざるうどん。
その後、園芸屋へ行き、また沢山の苗を買う。
あと2日でアメリカへ帰る彼も向こうで畑を作っており、日本でしか手に入らない京野菜の苗に涎を垂らしている。
植物の苗は持ち込めないから諦めるしかないよなあ。

夕方、いつもの地酒屋でアメリカで待つ彼の奥さんにと酒を数本買った。


運動もせず、飽食の日々。
でも、久しぶりに会った友人との呑みだったり、クラス会だったりと立派な事情があるのだから仕方がない。
それでも、数日間のそんな生活で体に毒が溜まっている気がする。
運動をしたい、汗をかきたいと思いつつ今夜も叶わず。
そして明日も飲み会だ。

夜、Mと電話で長話。
GWで部下の長期休暇のシワ寄せでMは暫く休み無し。
良い婦長だこと。

 

 

 

 


 

06/4/29 (土)  クラス会

   

朝6時に目が覚め、サッサと顔を洗いサッサと外へ出る。
今日も穏やかな日だ。

昨日買った夏野菜の苗を見る。
時間に追われて良く選ぶことなく買ってきた苗だけれど、どれも健康そうで一安心だ。
トマトを4種類、ナスを3種類、スイカ、キュウリ、ゴーヤなど、見ているだけで嬉しくなるような野菜の苗たち。
この連休中には畑へ下ろしてやろう。

増え続ける畑用品を収納するため、2万円也の木製物置キットを買ってきた。
今までの物置に入りきらなくなった道具や肥料などを綺麗に並べたいんだ。
電動工具を振り回して1時間半。
出来上がったそれは思ったよりも頑丈そうで良い感じ。
今度時間が有るときに、外側を緑色に塗ろうと思う。


夜、小学校のクラス会。
まったく、楽しすぎて何を書けばいいのか解らないや。
色々な所、分野で活躍している奴らが久しぶりに会い、酒を呑み、またそれぞれの場所へ帰っていった。
27年経っても皆少しも変わらないよ。
やはり子供の頃の友人は素晴らしい。
Mの子供達も頑張って一生の友人を作って欲しい。

日付が変わっても、皆で大騒ぎをしていた。

それにしても集まった半分以上が今だ独身ってどう言う事だ?
まあ、独身の方が出席しやすいんだろうけれど。


 


 

06/4/28 (金)  都心ドライブ

Mとドライブする。
いつもは混んでいる都心も、GWの影響か今日は車が少ない。
街路樹の欅が芽を吹き、柔らかな色を見せている。

目白通りから学習院で曲がって明治通り。
新宿のアジア的狂騒と、対照的な代々木公園のあたり。
迎賓館を横目に東宮御所をぐるっと回って青山から渋谷へ。

渋滞にはまらなければ快適なドライブコースで、改めて走ると都心には意外と緑が多いことに気付く。
穏やかな天気の日、窓を開けて走った。


   

昼に恵比寿のAFURIで塩ラーメン。
香りの良い透明な汁に細麺が泳ぐ。 炙ったチャーシューと卵の甘みが濃い半熟の味玉。
溜め息の出るような一杯。

昼過ぎ、渋谷の桜通りで映画を見た。
海外での評価は高く国内でも期待されていたが、どのような事情からか日本公開が無かった映画。
インターネットでの署名運動まで起こり、ようやく数館でのみ公開されたと言ういわく付きの映画だ。

映画の内容についてここでは書かないけれど、観終わった時、手を強く握り締めていて痛くなっている事に気付いた。
主人公に深く感情移入し、そして僕にしては珍しく少し泣いた。

ストーリー、民族的背景などは公式サイトに解りやすく書いてある。
これは、たった10年前に実際に起こった出来事なんだ。




夜は帰国中の友人と食事。
日本食ブームで、奴の住む国にも沢山の店が出来ているそうだけれど、とても美味しいとは言えない代物のようだ。
だから、キンキのいしり干し、生牡蠣や刺身、春野菜の天麩羅に切干大根、〆にお茶漬け。
生酒をやりながら食べるそんなものが、とても美味しかったようだ。
僕も、久しぶりに酔っぱらった。

明日は昼に畑作業。 夜は小学校の同窓会だ。





 

06/4/26 (水)  キヌサヤ

   


道路際のフェンスで作っているキヌサヤ。
昨夜の霧が水玉となって葉の上を転がり落ちる。

出勤前に少しだけ土いじりをするのは昔からの習慣だ。
そこに収穫できる作物が実っていれば尚更にその作業は楽しい。
そのために早起きする事は少しも苦ではない。



自転車で出勤。
東京の最高気温は17度。
春特有のボンヤリとした空。
何となく仕事をする気がせず、賞味期限切れの「あさげ」をすすりながら窓の外を眺める。

また得意の先送り作戦発動だ。
忙しさは数日先の自分にまかせて、今週は怠惰に過ごそう。
そんな不良職員ぶりを発揮し、夏野菜植え付けの計画を練りながら部屋に篭った。

昼にお金を下ろしに目の前のセブンイレブンへ行く。
給料振込み口座を二つに別け、その一つをコンビニ系銀行に代えてから随分と楽になった。
セブンイレブンはどこにでも有るし、朝7時から夜7時までは引き出し無料、105円を払う気が有るなら24時間利用できるんだ。
ついでに好物のざる蕎麦とおでんの大根を買い昼食とする。

夕方早い時間からジム。
ここ数日運動をサボり、飽食した報いを自分に与える。
ヘトヘトになって汗まみれになり、それでも体をいじめ続けて3時間ほどを過ごした。

夜、食べる物が無く、庭からキヌサヤを摘んできて茹でる。
それを肴に酒を飲んでいるとMが自家製のフキの葉の佃煮を持ってきてくれた。
有難い。僕はフキが大好きなんだ。
でも、葉の部分は初めて食べたな。  
フキの葉は、いつも捨てていたのを後悔するほどに美味かった。

こんな時間に往復20キロ走ってもらって悪いね、とMに言う。
Mは僕の体を見て、もうこれ以上痩せないようにと言った。

夜は眠くなるまで「剣客商売」を読んだ。
この物語の時代に生まれるのも良かったかもしれない。

 

 




 

06/4/24 (月)  温室の中で

陽射しが暑いほどの天気。
昨夜の小雨に濡れた土が春の匂いを漂わせる日、帰国中の友達とサボテンを見に行った。

小学校の高学年の頃、僕らはサボテン集めに心底魅せられていた。
それも園芸屋で売っている土産用の花サボテン等ではなく、希少な価値の有るモノばかりを集めていた。
普段は厳しかったけれど、趣味に掛かるお金だけは出してくれた両親は、僕の新しい趣味を笑って許してくれた。

僕が好きだったのは、たとえばこれ。  岩のようなロゼオカクタス。
メキシコ原産。 根が弱く成長遅く栽培が難しい奴だ。

   


親にねだって作ってもらった温室には60鉢近いサボテンが並び、恍惚としていたものだ。
台風による温室の被害と、野菜作りや星を見る事に興味が移り下火になるまでの数年間、まさにサボテンに取り付かれていたんだ。

当時、まだ日本のサボテン界は栽培技術も今に比べて低く、また専門店もそれほど多くは無かった。
だから、珍しいサボテンは南米からの輸入球が多く、それをマニアの間で譲り合うという事が多かった。
そんなサボテン界のドンと言われる人が逗子に居て、生意気だった小学生の僕らは遊びに行ってはジュースをご馳走になり
覚えたての難しい学名なんかを口にしていたんだ。

今日、27年(!)ぶりに尋ねたのは、その頃何度か行った事のある専門店。
小学生の僕らを温かく迎えてくれた経営者ご夫婦は亡くなっていて、息子さんがあとを継いでいた。
ビルが立ち並び、すっかり変わった周辺。 
あの頃木造だった広大な温室は、なんとマンションの屋上に建て替えられている。

ここに来たらどんなに懐かしいだろう。
そう思いながら来た僕らは、あまりにも変わってしまった外観に違和感を覚えながら温室へ入った。

   

温室に一歩入った瞬間、懐かしい匂いを嗅ぐ。
サボテンの培養土が温室の高温多湿下で出す独特の匂いだ。
久しぶりに嗅ぐその匂いの中、棚に並ぶ宝石のようなサボテンを見て行くうちに、唐突にある言葉が頭に浮かぶ。
アストロフィツム・アステリアス。  
写真のサボテンの名前だ。  王冠のように見える事から日本名を「兜」と言う。

そして次々に名前が出てくる。
オプンチア、ロフォフォラ、エキノケレウス、ギムノカリキウム、マミラリア。
小学生の頃、苦労しながら呪文のように暗記したサボテンの名前たちだ。
20数年前、途中でこの趣味を投げ出した罪悪感から敢えて避け、思い出す事の無かった名前たち。
それが頭に溢れてくる。

遥か海馬の底に沈んだ記憶は、失われる事無く思い出される時を待っていたんだろうか。
温室の匂い、そして懐かしい王冠の形のサボテンを見て一気に噴出してきたんだろうか。
嬉しくて、ちょっと泣きそうになった。

気に入りの1鉢を買い、帰宅。
奴も堪らず2鉢を買い、僕に預けてアメリカへ帰ると言う。
枯らさないように手入れをしなければ。
以前ほど本格的でなくて良い。  コイツを育てる環境を整備してみようかと思う。




夜、テレビで山手線停止のニュースを見る。
線路のトラブルで5時間以上立ち往生したという。

見ていてドッと冷や汗が出る。
すこしずつ電車に慣れようと、あの山手線に今日乗ろうとしていたんだ。
車で行ってよかった。
あの中に閉じ込められていたら、僕は正気を保てなかっただろう。
やはり電車には乗れない。
怖くて暫く汗がひかなかった。

それでも、昼間の楽しい出来事が気持ちを癒す。
今日の記憶も脳の奥にひっそり仕舞われ、何かのきっかけに浮かんでくるのだろうか。
そうだと嬉しい。


明日は大気が不安定。
もしかしたら素晴らしい雷が期待できるかもしれない。






 

06/4/23 (日)

   

穏やかで気分のいい日。
僕の畑に薄紫のソラマメの花が咲く。

アメリカから一時帰国している親友とずっと一緒に居る。
そして彼の帰国をキッカケに集まった昔の友達達とずっと一緒に居る。

長く会っていなかった友達も、遠く離れて暮らす友達も、みんなしっかりと生きていた。
自分の環境の中で、色々な波を乗り越えながらしっかりと生きていた。
そんな当然の事を再確認し嬉しくなる。
そうだ、勝ち負けじゃなくてしっかり生きるって事が大切なんだ。

明日も奴と出かける予定。

 

 

 


 

06/4/22 (土)  もりそばのこと


   


暖かい朝。
水仙が柔らかい香りを放つ。

車で出勤。
行楽地へと伸びる高速道路は早くも渋滞15キロなどと言っている。
気持ちのいい天気で、こんな日にドライブできたら最高だろうな。
でも、渋滞はゴメンだな。
その点、長い連休を取ることは難しいけれど、平日に休める今の勤務は気に入っている。



昼前、予約がキャンセルになりポカンと1時間ほど時間が空く。
木曜日にフヌケ化したシワ寄せで、今月中にしておきたい仕事が溜まり走り回っていたところでの1時間。
腹もへったし、ちょっと職場を抜け出して息抜きに行こうか。
そうとなれば行き先は大勝軒しかない。

「もりそば」を食べた。
寒い季節は温かい中華蕎麦が美味しいけれど、これからの季節は断然ともりそばが美味い。
もりそばと言っても日本蕎麦じゃなくて、世間で言うつけ麺って言うやつ。
中華麺をつけ汁に付けて食べるアレだ。
つけ麺は冷たい麺を熱い汁につけて食べるため、口に入るときには生ヌルくなってしまう。
それを嫌う人も居るけれど、その生ヌルさが僕にあっているようで好んで食べている。

東池袋系大勝軒は東京周辺には沢山の系列店があるけれど、特徴的なのはその麺だと思う。
多加水で太いストレート麺はモッチリとした食感で食べ飽きがしない。
これを食べると麺欲とでも言うべき欲求が満たされるんだ。
この麺あってこそのつけ麺で、他店で食べる細く弱い麺で作ったつけ麺は僕の好みじゃない。

店に入ると、向かいの席では若いオニーちゃんがシナチクを肴にビールを飲んでいる。
冷たい水滴が付いたそのビールグラスを見ていたらもう、飲みたくって飲みたくってほっぺたの内側がキュンと痛くなる。
昼間のラーメン屋でビール。
通人の間では蕎麦屋で日本酒が流行っているらしいが、俗人の僕には前者の方が魅力的だ。
呑みたいな。
いやいや、仕事中だから。  当然の理性を必死に働かせ、自分のもりそばを待つ。


やがて来たもりそばをツルツルツルと一気呵成に平らげて、セルフのスープを取りに行く。
もりそばの汁はラーメンより数段濃く、そのまま飲み干す事は難しい。
この店ではスープがポットに入っておいてあり、つけ汁をそれで自由に割って飲む事が出来るんだ。
スープで割った汁にちょっと一味を利かせて飲み干すと美味いんだな。
時間が気になり、席を立ったときもまだ向かいの席では2本目のビールを飲んでいるところだった。

久しぶりの大勝軒。
その満足の代償に、職場へ戻って聞いたのは館内放送で繰り返し呼ばれる僕の名前だ。
サボっている間に随分と探されていたようだ。


午後みっちりと働き、暗くなる頃職場を出た。
今夜もジム。
土曜の夜は混んでいるのだけれど、iPodを首からさげて自分の世界に没頭する。
3時間居たけれど、誰とも一言も話さなかった。
それが許されるのがジムの魅力だ。

帰宅後、ホタルイカで日本酒を飲んだ。

明日は雨。
何時頃から降り出すのかな。
朝から降るだろうか。
休みの日の朝、眠りから醒めると雨垂れの音が聞こえる。
これは最高の目覚めだ。
だからいつも予報を気にし、降りそうな時は窓を開けて眠る。
今夜はどうしよか。 雨はどこまで来ているんだろう?

 

 


 

06/4/20 (木) EARLY TIMES

   

昨夜、久しぶりの友人宅で笑った余韻をまだ消したくなくて、帰宅後バーボンを呑む。
子供時代の友人と飲むのが余程に嬉しかったのだ。
ラジオの気象通報をつけ、子供時代の事を思い出しながら1人呑むウイスキーが事の外美味かった。

EARLY TIMES。
こればかり呑んでいた頃があった。
生でこれをあおり、毎晩のように泥酔していた頃があった。
酒の嗜好も呑み方も変わった今でも、こればかり呑んでいたあの頃の事を思い出すと鼻の奥がツンと痛くなる。
僕は僕なりに歳相応の経験をし、辛い思いもしてきたんだなと改めて思う。

今はもう、かつてのように酔って眠るための道具ではなく、ゆっくり味わうために呑むウイスキー。
照明を落とした部屋でこの命の水を舐めていると、時間の流れの不思議さとそれに比べ日々の雑事の小ささを改めて思う。
EARLY TIMES(遠い昔)、良い名前の酒だ。



そんな訳で昨夜深酒したせいか、今日は朝からやる気無し。
出勤後、カフェインレスコーヒーと永谷園の「あさげ」の朝食をとり、それでもやる気が起きない。
頭がボケっとし、自分が使いものにならず、無気力にwebなど眺めていた。

最低限必要な事だけをこなし、昼前後の素晴らしい雷雨を窓越しに眺め、緑のたぬきを喰らい、午後は資料整理で時間を潰す。
今月中にやらなければならない仕事は山積なのに、その殆ど全てを明日からの数日間に委ね18時には職場を出た。

それでもジムへ行く事は出来た。
約2時間。
走って、ストレッチして、腹筋と背筋をイジメ、また走る。
喉を渇かせて、ビールを求めて帰宅する頃には随分と元気になっていた。

今22時半。
これから眠るまでの数時間、本を読もう。
読みかけの本だけは不自由しない。
ラジオを小さくつけた部屋で、眠くなるまで本を読もう。







 


 

06/4/19 (水)  親友来る

   

暖かな日。
低い雲と南風。
東京に黄砂降る。

厳しい冬を耐えた巨峰の芽が膨らむ。
去年植えた時は1メートルほどだったのに、高さ2.5メートルの棚を覆うほどに成長した葡萄の木。
今年は実ってくれるだろうか。
膨らんだ芽に鼻を近づけると嬉しくなるような良い匂いがした。




昼間、Mと某所に篭る。
音も時間も無いカーテンをひいた部屋で、ビールを飲み、2人で溶けた。

昼寝から醒めて高層階の窓から遠くを見ると、都心の高層ビルがぼやけて見える。
遥か西、ゴビ砂漠から気流に乗ってやってきた黄砂だ。
太陽の光がフィルターをかけられた様に優しくなり、不思議な光景となっている。
まるで昔の映画を見ているような気分になり、しばらくボンヤリと見ていた。



夜、アメリカから帰国した親友の家へ酒を呑みに行く。
彼は留学後、現地で就職し結婚、家を買い生活をしている。
今回は妹の産んだ子供を見るため、2週間の帰国だ。

たぶん、僕の最も仲の良い友達。
僕の少年時代は彼と共に有ったと言っても良い。
開放的で誰ともすぐに打ち解け前向きでスポーツ万能な彼と、人見知りで体が弱く消極的で引き篭もりがちな僕。
正反対な性格なのに、小学校1年生で同じクラスになってから彼とは不思議とウマが合った。
そして僕らは親友になった。

僕の子供時代のアルバムは彼との写真で埋められている。
いつも一緒で同じ趣味に打ち込み何を話しても楽しく、そんな付き合いは大人になって別々の国に住んでいても続いた。

そして今夜、妹の子供を見るために集まった彼の4人の兄弟、そして僕で酒を呑んだ。
10数年ぶりで会う彼の兄弟だけれど、つい昨日話したかのように普通に会話できるのが嬉しい。
子供時代良く遊んだ仲間だ。 どんなに時間が流れても変わらないものもある。
楽しい時間。
どれだけ笑ったか解らない。

僕の輝かしく懐かしい少年時代。
大人になって、あれほど濃い人間関係は作れていない。
なにも解らない子供だったあの時に、どんな運の巡り合わせか一生付き合う親友を授かった。
その事の幸運を改めて思った。

奴と話すたびに元気になる。
その度に、まだまだ出来る事が有ると信じられる。
もし、僕も誰かにそんな影響を与える事が出来たらどんなに嬉しいだろう。
誰かを少しでも元気にすることが出来たら。




長く寒冷前線を引いた996hPaの低気圧が日本海を抜ける。
これは中国上空から寒気を巻き込んだ台風並の低気圧だ。
前線の下となる西日本では雷、雹、強風など大荒れになる予報。
それに伴い、東京も明日は雨。
ただし、低気圧へ流れ込む南風で暖かい雨になるだろう。

この時期の暖かい雨は畑の土を柔らかくし、作物を育てる。
きっと優しい雨になるだろう。




 

06/4/17 (月)  雑木林

   


明け方、何か長い夢を見ていた気がするけれど思い出せない。
カーテンを開けると素晴らしい天気。
いつもより早い時間に家を出て、すこし遠回りして自転車で出勤。

職場近くの雑木林ではクヌギが若葉を吹いている。
野良猫にエサをやるおばあさんと少し話しをし、林を散歩した。
風が薫ると言う季節には少し早いけれど、深呼吸するだけで体が快復していく気がする。
自分でも可笑しく思うほど気持ちがウキウキとする。
そんな楽しい気分は職場の建物へ入るまで続いた。

仕事は朝からトラブルばかり。
忙しくも、不毛な作業をしている思いが頭から離れない。
やる気の無い職場内の勉強会資料作り、他部署のミスのシワ寄せ後始末、ココで一番エライ人の部屋で不明な作業。
そんな時、いつも一緒に笑い飛ばしていた薬剤師さんが先週から産休に入ってしまった事による欲求不満もある。
なんだかショボンとした時間をおくる。

昼に仕出しのコロッケ弁当。
おやつの時、事務のOちゃんがカロリーゼロと言う(本当か?)ゼリーを1袋差し入れしてくれた。

仕事帰りジムへ行くも定休日。
今月から定休日が変わったのを忘れていたんだ。
今夜は少し走りたかったな。

スーパーでモルツ6缶と木綿豆腐、焼き海苔、ブロッコリー、瓶詰めの柚子こしょうとブルガリアヨーグルトを買って帰る。
帰宅後さくらの爪を切ろうと思ったが拒否されてしまった。

夜、久しぶりにバーボンを飲む。
学生時代、これを週に2瓶は飲んでいた時期があったな。
バーボン特有の香りと甘み。
これを飲むと無性に読みたくなるローレンス・ブロックの「800万の死にざま」を引っ張り出してきて遅くまで読む。
そして久しぶりに酔っ払った。








 

06/4/16 (日)

   

今日も風が強い。
不安定な天気。  大粒の雨と日差しが交互に降り注ぐ。

所要にて都心をウロウロする。
日曜日の首都高。
日頃運転し慣れない車が流れを乱し、思うように走れない。

新宿、池袋、芝。
どこも人人人。  人混みが大嫌いな僕は用を済ますとそそくさと車へ戻り深呼吸をする。
都会が好きで、ネオンの下を飲み歩いていた時期も有ったけれど、もはや今の僕には何の魅力も無い場所。
最低限の用事を済ませたら一目散に飛んで帰るだけだ。

夕方、高井戸で高速を降りて自宅へと向かう。
道路際の桜は散って、うす緑の小さな葉を広げている。
桜の前線はどこまで行ったのだろう。
あいつの住む場所はもう咲いたろうか。

 



 

06/4/15 (土)

風の強い日。
久しぶりの土曜休み。

早朝の時間を畑で過ごした。
雲は多いがその合間からもれる陽射しに、発芽したての水菜の葉が光る。
向こうの畑で収穫残しの白菜が黄色い花を咲かせる。  草木灰を作るための焚き火の煙が低く流れる。
長閑な時間。

昼前にMのマンション。
上の2人の子は部活。 下の子はボンヤリとテレビを見ていた。
PCとHDDレコーダーのメンテ、デジカメ写真の印刷の仕方を教え、子供とプロレス技をかけ合い、洗濯するMを眺める。
昼に3人でサイゼリアへ行き食事。
その後買い物をして別れた。


   

整備士の知り合いと言うのは有り難いもので、某工場の設備を使わせてもらう。
そのためにMと早くに別れ、午後ここへ飛んできたんだ。
日頃、安い工具と車載ジャッキで車をいじっている身には、二柱リフトとスナップオンの工具を使えるなんて夢のようだ。
工場のトラックを借り、入手していた大きなパーツを運び込み素晴らしい環境での車いじり。
機械好きな僕にとっては涎が出そうなお楽しみの時間だ。

2時間後、オイルまみれになって作業が終わってもまだ帰りたくない。
隣のリフトに乗っているのは初代のRX-7、向こうで整備されているのはシトロエンのBX、僕が昔乗っていたのと同型のムスタングもとまっている。
整備士の知り合いと、そんな車達を見ながら暫く雑談をする。
僕は今の仕事についていなかったら、こんな仕事を選んだかもしれない。

夜はまたジムへ行った。
土曜の夜は混むなあ。  
マシンルームもプールもウエイトフロアもスタジオも、一週間で体に溜まった毒素を搾り出すかのように沢山の人達が汗を流している。
そんな様子を見て一瞬気後れしたけれど、はじめてしまえば後は自分の世界。
iPodのヘッドホンを付けたらあとはひたすら走るだけだ。
くたくたに疲れて、ヒリヒリするほどに喉が乾いて、そこで一気に飲む冷たいビールを思いながら走るだけ。



 


06/4/13 (木)  人間ドック

暖かな朝。
沈丁花も菜の花も終わった庭に藤の芽が伸びる。
マスクをしなくても過ごせるようになったこの時期、もう暖房無しでも起きられるようになった。

朝7時に車で家を出、人間ドックを受けに行く。
Mとは現地の駅前で待ち合わせだ。
五日市街道を西へ。  病院は米軍横田基地の近くだ。

作られたばかりの巨大な病院はまだ全館開院しておらず、病棟などは気のせいかペンキの匂いが残っている気すらする。
綺麗な施設、最新の機器、働く人の白衣すら折り目正しく清潔だ。
検査衣に着替えてあとはマナイタの鯉になれば良いのだけれど、物珍しくてついキョロキョロとしてしまう。

周囲で働く人達は殆どが僕と同業者だ。
それなのに、まるで自分とは違う職種のようにすら見える。
今の小さな職場になれてしまい、すっかり自分のやり方で仕事を進める事に慣れてしまった僕は、大きな集団の中で
システム化され、自分の専門分野を深く極めているココの人達に羨望にも似た複雑な感情を覚える。
反面、小さな職場で広く何でもこなす今の環境は自分に向いているとも思う。
適材適所と言う事か。

それにしても、何を聞いても的確な答えが帰ってくるココの人達は本物のプロだ。
僕もそう有るために一生懸命勉強しなくてはと思う。

Mもこの初めての体験をとても楽しんだようだ。
待ち時間の合間に見た色々な物をメモしたりしている。
彼女の職場でも人間ドックを始めるとかで、これは良い勉強になったのではないのか。
2人ともドックを受けに来たというより、見学に来た気分で半日を過ごした。




   



帰り道、立川でラーメン。
何を食べる?と聞くとMは大抵ラーメンという。
ラーメン好きな僕は大歓迎だ。
塩ラーメンとつけ麺を頼んで、半分ずつ食べる。

細麺で頼んだ塩ラーメンも太麺のつけ麺もしみじみ美味い。
先日、石神井公園で食べたラーメンもそうだけれど、麺が美味しくて食べているうちに嬉しくなってきてしまう。
酢の利いたつけ麺の汁も美味しかったな。
スープ割りしてもらって最後まで飲み干してしまった。


夜はDVDで映画を見ながら酒を飲んだ。
肴はホヤの酢の物。
独特の匂いを嫌う人も多いホヤだけれど、僕は大好きなんだ。
これから初夏にかけて、ますます味が乗って美味しくなるな。

週末は曇りがちな天気。
気温もあまり上がらないという。
畑の作物のために、少し晴れ間が欲しいな。
芽を出したばかりの大根も、きっと太陽を恋しがっているだろう。


 

06/4/11 (火)  雨降り

発達した低気圧と前線の影響で西日本は荒れている。
朝、出勤前のテレビでそんなニュースを見る。
大粒の雨と風。
行った事の無い遠い土地からの、そんな中継がたまらなく好きだ。

やがて東京も荒れるだろう。
そんな天気は嫌いでは無いけれど、さすがに自転車では出勤できぬ。
覚悟をきめて大嫌いな電車で出勤。

仕事はまぁまぁ。
遅い昼に気分を変えて赤いきつね。
午後、東京は深い霧。
これから急速に崩れるだろう天気を思いワクワクとする。
窓を開けて深呼吸をすると、肺胞の奥までしっとりとした霧が優しく入ってくる。
湿気が気持ち良い。

すっかり暗くなって職場を出るときは雨。
アスファルトを打ち、跳ね返る雨が裾を濡らす。
それでも、暗い冬の雨と違い春は雨を楽しむことが出来る。
濡れる事もそれほど嫌ではない。

一旦帰宅後、車でジム。
自分で決めたプログラムを淡々とこなしてゆく。
雨の夜の空いたジムは居心地が良い。
大きなガラス越しに下界を見下ろしながら走った。

   

美味しそうな鴨が出ていたので、遅い夕飯に鴨葱焼きを作る。
酒は広島の純米生。
美味い酒と、濃厚な旨みの鴨。
雨垂れの音を聞きながらゆっくり呑む酒は、尚更に美味い。

予報によれば、東京は明日の朝にかけて1時間に60ミリの大雨。
低気圧が東に抜けるまで予断は出来ぬと言う。
あぁ、こんな事なら酒を呑まなければ良かった。
こんな雨の夜、好きなCDを聞きながら一人車を走らせるのが好きなんだ。



 


 

06/4/10 (月)

   

久しぶり、早く帰宅したのでさくらとシャワーを浴びる。
この子は、僕が今まで共に生活した犬族の中で唯一、風呂を嫌がらない。

温かいシャワーが気持ち良いのか、目を細めて動かない。
調子に乗って写真を撮っていたら、体をブルブルと揺すって盛大に湯をばら撒いてくれた。

いつも一緒に居てくれてありがとう。
君が居れば少しも寂しくないよ。

 


 

06/4/9 (日)  畑とラーメンと桜祭り

暖かい日曜日。
平日よりも早くに起き、しばらく犬と遊ぶ。
平和な朝。


   


10時、畑入りした僕を春大根の発芽が迎える。
収穫と並んで発芽は、最も嬉しい時の一つだ。

水菜、チンゲンサイ、アスパラ菜、カブは双葉~本葉の状態。
先日、霜害で被害を受けたジャガイモも新しい芽が出揃ってきている。
玉ねぎと島ラッキョウは順調に成長中。
長芋の芽ももうすぐ出てくるだろう。
これから畑では、長かった冬から開放された喜びが一気に吹き出るかのように植物達が成長をはじめる。
畑作業も忙しくなるけれど、そんな忙しさならいつでも来い、だ。


午後遅く、少しだけMと会う。
10日ぶりに仕事が休みだった彼女は、はっきり顔に出るほどに疲れている。
多忙と体調不良で辛い10日間だったのだろう。
そして今日も午前の数時間を職場で過ごし、午後になってもいつ連絡が来るか知れない携帯を持ち歩いている。
そんなの休日じゃない。

2時間ほどしか会えないので肩でも揉んでやろうかと思っていたけれど、何故かラーメンを食べに行く事になる。
まあ、ラーメンで疲れが回復するならそれで良いよ。
それなら開店したばかりで気になっていたお店に行ってみようか。
石神井公園駅南口に今年1月に出来た店だ。

   

初めて入る店だけれど、店内に入る前から好みのラーメンだという事が解る。
濃厚な魚系の素晴らしい匂いがしていたからだ。

豚骨と魚系を合わせた濃厚なスープ。 そこに泳ぐ平打ちの麺はツルツルと食感が良い。
上に載った魚粉をスープに溶かし込みながら食べ進むと、自分の好みにピッタリで段々と笑ってきてしまう。
途中でMの頼んだつけ麺と交換。
こちらも濃厚なつけ汁が素晴らしい。
麺はラーメンとは別で更に太くモチモチしている。
美味いねえ。
2人でドンブリを交換し合いながらニコニコしていた。
腹の減ったときに好きな人と食べる温かいラーメンは、僕にとって最高のご馳走だ。



夕方、幼馴染に呼び出されて小金井公園へ行く。
ソメイヨシノは殆ど散ってしまったけれど、昨日今日と桜祭りで屋台が出ているんだ。
陽が落ちた公園は、風が出てきた事もあり急速に寒くなってきている。
普段なら絶対に飲まないだろうワンカップ大関の燗が沁みるほどに美味い。
焼きイカ、たこ焼き、豚汁。
男2人がベンチに座り、園内を行く人を見ながら酒を飲む。

ほんの1時間半ほど。
その間に3人の同級生に会う。  さすが地元の公園だ。
その中の1人は中学2年の時に豊島園のプールでデートした事の有る女の子。
僕の頭の中では今でも同級生の女の子なのだけれど、なんと結婚して4人の子供がいると言う。
20数年の時間の流れを考えていたらクシャミが出た。

夜、平貝を肴に酒を飲む。
冬の間、寒さに弱い植物達を収容していた部屋は、それらを屋外へ出してなんだか殺風景になってしまった。
もうすこし明るい色のカーテンに替えようかな。
それともメダカの水槽でも置こうな。
M宅は今もにぎやかなんだろうな。

週間予報によると西から次々と低気圧がやってくる。
これから暫くは曇りや雨の日が続く。
まあ、それもまた良いだろう。

 

 


 

06/4/8 (土)   桜散る

   

風の強い土曜日。
久しぶりに車で出勤した。

いつもの坂道を下った所の桜並木。
染井吉野の雪が降る。

春の曇天。
窓を開けて走る。


なんだかんだと忙しい月初め。
会議、勉強会、レポート、また会議。
煮詰まって、職場中庭の雑木林で放心する事しばし。
ふと足元を見れば、長い冬を生き抜いたアリンコが巣の補修に忙しそうだ。
人間と違って彼らには時間に猶予が無い。
これからの数ヶ月で後世へと営みを繋げる事の重圧を感じているかのように、一時も休まずにせわしなく働いている。
いや、人間だって本当は同じなんだ。
数時間後の天命だってすら、誰にも解りはしない。


出勤直後の早い時間。 
この仕事特有の辛い立会いをする。
ある瞬間を挟んで、冷たくなる体と線香の匂い。

何度経験しても決して慣れる事のない時。
僕の時には誰かが傍らに居てくれるだろうか。
この頃、よくそんな事を思う。

遅い昼に職場を抜け出して大勝軒。
午後、微熱と頭痛ありボンヤリと過ごす。


まるで真夏を思わせるような大粒の通り雨。
アスファルトが雨に濡れる匂いを嗅ぎながらジムへと向かう。

昨日、アホのように頑張りすぎた報いの筋肉痛。
以前のように走れる体になりたいとの焦りが強い。
歳を重ねる事による衰えから、少しでも逃げたいという焦りだ。

だらしなくバタバタと走り汗をかきながら、ハーフマラソンレースを望外のタイムでゴールしたあの時の事を思う。
数年前だけれど、遥か昔の事のように思える。
ゴールしたときのあの爽快感。 あれをもう一度感じる事が出来るだろうか。


間も無く日付が変わる。
ネットで見る明日の天気予報は晴れ。
早起きして畑へ行こう。  
誰とも話す必要は無い。   
晴れた日曜日、ただ種を蒔き畑で草をむしる事が出来たらそれで良い。
そして、少しの酒と、愛犬のさくらが居ればもう充分だ。



 

 

 


 

06/4/6 (木)

   

昨日の昼は曇り、夕方から雨。
その雨も早い時間には上がり、夜半から綺麗な月が出る。
そして気持ち良く晴れた朝。

予報によると、今後一週間は晴れと雨が交互にやってくるようだ。
春はたけなわ。
良い香りの風に桜が舞い、菜の花が揺れる。



昨日、このページを壊してしまった。
何がいけなかったのか表示不能になってしまい冷や汗をかく。
夜間にftpが混んでいる事も有り、自宅で書いた文章を翌日昼休みに職場からupする事が多いのだけれど、
こうなってしまうとお手上げ。
帰宅後、backupしてあったファイルで上書きし、やっと表示可能になる。

しかし、どうも動作が鈍い。
表示に時間が掛かるのだ。
ファイル容量もやけに大きいし、overflowとかいうメッセージまで出るようになってしまった。
ソースを見ると、stylesheetやらjavaやら訳の分からないのが300行も入っている。
見に覚えのないHTMLに困惑し、片っ端から削除して見る。
僕は全くの素人、メモ帳でHTMLなんか書けないから作成ソフトを使っているのだけれど、
それが出鱈目なソースを吐くと言うのは聞いていた。
その肥大化した結果がコレだったのだろうか。

手動で削除した結果、ファイルサイズは半分。  表示も随分と速くなったようだ。
本当は一から勉強すればこんな事にはならないのだろうけれど、何となく面倒でズルズルと来て、これも作成ソフトで書いている。
メモ帳で綺麗なHTML書きが出来る人を尊敬する。

今度なにかトラブルがあったら、ブログに移行しようかな。
そうすればもっと更新する様になる気もする。



 


 

06/4/4 (火)  靖国


   

仕事を半休し、九段の靖国神社へ行く。
もちろん宗教や政治が目的では無い。
母の兄は硫黄島で戦死しており、遺族がたまに靖国神社参りをしているのだ。
リウマチで長く歩けない母に、たまには親孝行でもしようかと車で送って行ったのだ。

春特有の白い空。
東京は今年初めて20度を越えた日で、歩く人は皆上着を脱いでいる。
桜の名所である靖国は、平日だと言うのに花見の客が多い。
桜を見たり、敷地内を散歩したり、ビールやお酒で良い気分になっている人もいる。
何かと話題になる靖国神社だけれど、一般の人にはそれほど意味の有る場所では無いのかも知れない。
唯一つ、敷地内にある遊就館を除けば。

数年ぶりにここへ来た母が何を思ったのかは知らない。
でも、戦後60年を経て尚、戦地で逝った兄の事を思って泣くのだから、
肉親の戦死と言うのは僕などには想像も出来ない事なのだろう。
僕の叔父にあたる人が僅か17歳で戦死したなど、どう想像すればいいと言うのか。

僕にとっての靖国は、このすぐ裏の病院に通算8ヶ月ほど入院しており、ここから皇居は散歩のコース。
あの年もギプスで固めた腕を吊ってここを歩いたっけ。
あの時とここは少しも変わらないように見えるけれど、僕は20も歳をとった。






     

靖国では毎年桜の時期に「夜桜能」と言う催しをする。
都内最古と言われる敷地内の能楽堂で、かがり火に照らされた夜桜の下、能や狂言を見るのは風雅だろうな。
ちょうど今夜から3日間との事で、能楽堂の周囲では準備が進められている。
機会があったら是非見て見たいけれど、その前にキチンと能の勉強をしてからだな。


それにしても、この時期に都内を走ると桜の樹の多さに改めて気付かされる。
ついでだから、桜でも見ながら少し遠回りして帰ろう。
外堀から武道館、北の丸公園、千鳥ヶ淵。桜田門を曲がって国会議事堂脇を抜け迎賓館を横目に甲州街道へ。
どこも散り始めた桜の花びらが風に流されている。
特に千鳥ヶ淵は名所と言われるだけ有って、皇居のお堀に舞う桜の風が素晴らしかった。

たった半日。 距離にして往復40キロほどの行程だけれど、母は満足したようだ。
途中で買った桜餅を父への土産にするのだと言う。
仕事を半日休んだ甲斐は有ったようだ。



すっかり暗くなった頃、ジムで走る。
走って休んでまた走って。  
風呂で仕上げて帰るまで2時間半、だれとも話さず。

夜、エビスビールを飲む。
ジムでカラカラに乾いた体に冷えたビールを流し込むと、一瞬目の前が真っ白になる程に美味い。
この瞬間のために走るとは言わないけれど、マシンの上で苦しんでいるときに思うのは冷えたビールの事だ。
今夜も美味しいビールを飲む事が出来た。

明日は雨。
今日よりだいぶ気温は下がるとは言え、もう4月。
暖かい春の雨になるだろう。
そしてその雨が、まだ固い木の芽を開かせるのだ。

 

 


06/4/2 (日)  ホタテ稚貝を食べる

暖かい朝。
雨が予想されていたけれど、まだ降り始めてはいない。
それならと、畑へ急ぐ。
春大根の種を蒔きたいんだ。

元来人見知りが激しく、知らない人と打ち解けて話す事が出来ない。
でも畑で会う人だけは普通に話す事が出来るんだ。
先日の霜害の事、これから作る作物の事、堆肥の作り方や自分なりの土作りの事。

畑で会う人は穏やかだ。
土を耕すという行為が人を優しくさせるのではないか。
そんな人達と接しながら昼間の時間を過ごした。
雲が厚くなり、雨の匂いがする頃帰宅。

夕方、強い西風と大粒の雨。
バイクで散歩しようと企んでいたのだけれど、仕方なく車で出掛ける。
日曜日はどこへ行っても渋滞ばかりなので、車は出来るだけ出したくないのだけれど。

ブックオフ、ツタヤ、ガソリンスタンド、農協直営の植木屋さん。
その後いつもの地酒屋さん。  
ここに車で来るといつも後悔する。  新しく入った酒の試飲をさせてくれるからだ。
試飲と称して飲み会になる事もしばしばで、そんな場に居合わせた酒蔵の人達に聞く仕込みの
ウラ話しなどもまた面白い。
でも今日は車なので、試飲は無し。
無濾過の原酒を一本買って帰る。

   

魚屋さんで「ホタテの稚貝」と言うのを売っていた。
一山たったの200円。  これで食べきれない程にある。
手のひらに乗る可愛いサイズのホタテで、なぜこんな小さいうちから出荷されるのか解らないけれど買ってみた。

バター焼きが美味しいと言われたけれど、とりあえず三分の一ほどを酒蒸しにする。
柔らかく、そして甘みがある。
美味いなこれ。  店頭で初めて見たけれど、僕が知らないだけでいつも並んでいたのかな。
こんな良い酒の肴があったら、ついつい飲みすぎてしまうだろう。
残りで作った味噌汁も最高だった。
夜、ブックオフで買って来たマンガ「ラーメン発見伝」
深夜にようやく重い腰を上げ、職場の会議で使うレポートを作りはじめる。
4月から制度が変わる事も有り、しばらくは慌しい日が続くかもしれない。
といっても、休みはキチンと取るけれど。

 


 

06/4/1 (土)  花見

   

小金井公園へ、夜の桜を見に行く。

Mとその子供たちが車で迎えに来る。
途中コンビニで大量の食料とビールを買い、公園駐車場に車を停めた。
今夜はMの運転だから、遠慮なくビールを飲めるぞ。
美味しいビールのためにジムで70分走り、腹筋と背筋を各100回こなし、その後も水分を取っていないんだ。
座る場所も決まらないうちから水滴のビッシリついた冷たい缶ビールのことを思っていた。

融通の利かない行政の桜祭りは、桜の開花状況など関係なく来週に行われる事が決まっていて、
だから今夜はまだ照明も屋台も無い公園。
でも、まさに満開の桜の下、沢山の人たちがうごめいているのが遠くからでも解る。
風の無い夜。
かすかに香るのは花の匂いではなく酔客たちの放つ酒の匂いだ。


それにしても皆、準備が良い。
カセットコンロは勿論、大きな鉄板、発電機、生ビールのサーバーを持ち込んでいる人も居る。
どの集団も楽しそうに酒を飲んでいる。
普段、こういう宴会の騒々しさが大嫌いな僕だけれど、年に一度こんな夜も良いかもしれない。

街灯と、花見客たちの持つ僅かな灯り。
それだけの灯りなのに、沢山の巨木に咲いた桜花がボンヤリと光る。
広大な敷地に広がる桜たちが互いに呼応するかのように、白く光る。
やはり桜は夜だ。
夜の桜にはなんとも言えない魅力がある。
それを見上げながらビールを飲むのはとても気持ちが良い。


   

Mの子供たちは、この場の雰囲気でハイになっている。
何がそんなに楽しいのか笑い出すと止まらず、僕のデジカメで写真を撮ったり、コンビニのおでんを食べながら大ハシャギしたり。
酔いの回ってきた僕も楽しいし、それらを見ているMも笑っている。
今夜、ここに来て良かったな。
また来年。  
今度は道具を持ち込みタコ焼きでも作ろうか。



帰宅。  酒を呑む。

読みかけの本が数冊。 
ちっとも眠くならず、いつまでも本を読みながら呑んでいた。
冷たい日本酒が染入るほどに美味い、静かな1人の夜。